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僕の好きなアジア映画48: 8番目の男

『8番目の男』
2018年/韓国/原題:배심원들/114分
監督:ホン・スンワン(홍승완)
出演:パク・ヒョンシク(박형식、ムン・ソリ(문소리)、ペク・スジャン(백수장)、キム・ミギョン(김미경)、ソ・ジョンヨン(서정연)、イ・ヨンジン(이영진)、チョ・ハンチョル(조한철)など


日本でも行われている裁判員裁判ですが、2008年に韓国でも「国民参与裁判」として開始され、国民が陪審員として裁判に参加することになりました。本作はその歴史的な裁判が初めて行われた時に、陪審員になった8名の市井の人々の、事実に基づくドラマです。通常僕はアートハウス系の映画が好みなので、この手のエンタメ系法廷劇を観ることはまずない。しかしウチの家内がパク・ヒョンシクのファンということもあり、試しに観てみたところこれがなかなか面白い。

彼らが裁くことになった事件は、罪状認否が明白な殺害事件のはずで、量刑を決めるのが彼らの役割でした。しかし被告人がこの場に置いて嫌疑を否認したために、陪審員たちは有罪/無罪の評決しなければならないことになります。裁判長は予定通りの方向で裁判を進めようとしますが、時間に遅れて到着した8番目の陪審員を中心に、彼らは徐々に真実をもう一度検証しようとする方向に動いていきます。

8番目の男、パク・ヒョンシ
裁判長に名優ムン・ソリ。何を演じても的確。

素人の集まりであるが故に陪審員達は、ひかれたレールの上で疑問を持たずに、その方向に進んでしまう可能性が高いと思われます。つまり自身の存在意義をしっかり意識しない限り、その場の「空気」を読んで流されてしまう可能性が高いでしょう。多分僕もその場にいたらその様に振る舞う可能性が高いと思います。しかし真実を追求しなければならないこの場面において重要なのは、8番目の陪審員の様な「空気の読めない人」なのです。陪審員なのに裁判に遅れてきてしまうタイプです。しかしそういう「空気の読めない人」であればこそ、周りからウザいと思われようが、そう言う目線を気にしない、あるいそれ以前に感じない、一種の「鈍さ」こそが事件の真相を明らかにすることに繋がります。

ついには現場検証までしちゃう。

パク・ヒョンシクだから、純粋な「8番目の男」でいけてるけど、実際にこういう場面になったら、こいつほんとにウザいやつだって思いそうな気がします(笑)。その他にも名優ムン・ソリをはじめ、韓国ドラマでもよく見かける一癖も二癖もある俳優陣が脇を固めて、見応えのある法廷劇に仕上がっています。空気の読めないことが時には貴重な存在になることがある、と言うことですね。

第39回韓国映画評論家協会賞新人男優賞。


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