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僕の好きなアジア映画46: アメリカから来た少女

『アメリカンから来た少女(アメリカン・ガール)』
2021年/台湾/原題:美國女孩(英:American Girl)/101分
監督:ロアン・フォンイー
出演:カリーナ・ラム、カイザー・チュアン、ケイトリン・ファン


僕は職業柄、さまざまな年代や性別の人と接するのだが、その中で最も対応に困る場合が多いのがこの映画の主人公の世代の女の子だ。何を考えているのか、なぜ人の話に反応しないのか、なぜコミュニケーションが取れないのか、全く僕のような爺さんには理解ができない。もちろんそれぞれであり、皆ではないのだが、なんか別の星から来た生物のようで、圧倒的にこの世代の女子にはお手上げなのだ。まるでこちらを憎たらしい敵のように、加害者のように思っているとしか感じられないこともままある。そう言えばつい先日も15歳の女の子が練習のために人を刺した事件があったが、何を思っているのか極めて理解し難いのだ。もちろん大部分はこちらの思い込みであろうし、彼女たちとしては羞恥心や不安が強く、違う世代の違う性別の人間に対してコミュニケートする術をまだ知らないのであろう。そしてそのコミュニケートの稚拙さが、いわゆる反抗期にも繋がるのだ。

この映画の少女は、多くの不安や不満の中に置かれている。母の病気のため留学先のアメリカから帰国せざるを得なかったこと。そのために友達や愛馬とも別れざるを得なかったこと。新しい学校での生活への不安。台湾の学校では長い髪を髪を切らなければならないことへの不満。学校での疎外感や成績への不安。母の手術への心配。そしてSARSの流行による社会的不安や、台湾での生活への不安。まだ成熟の過程に達していない主人公は、果たしてこれらの問題にいかに葛藤し、いかに対峙するのか。

基本的に彼女は、自分が現在の状況とならざるを得ない原因である母への反抗という表現で、表面的な行動を整える。母を愛し、母の病状を心配しているが、表面的には母への愛情を素直に認める行動は選択しない。

この世代の女の子の率直になれない頑な心情を、繊細に描いたのは若き女性監督のロアン・フォンイー。なかなか男性には的確に描くことができ難いモチーフを、陰影のある美しい映像で描いている。映画の中の女の子は、最終的に母への愛情を率直に表現することができたのだが、それは彼女が曲折の果てに幼い心の置き場所をやっと見出したからであろう。だから短時間彼女たちとコミュニケートするだけの僕は、やは彼女たちに戸惑い感じ続けると思う(笑)。

本作は現在Netflixで配信中。Netflixでは『アメリカン・ガール』のタイトルだが、10月から『アメリカから来た少女』と改題して劇場公開される。


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