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僕の好きなアジア映画24:お嬢さん

『お嬢さん』
2016年/韓国/原題:아가씨/145分
監督:パク・チャヌク(박찬욱)
出演:キム・ミニ(김민희)、キム・テリ(김태리)、ハ・ジョンウ(하정우)、チョ・ジヌン(조진웅)、キム・ヘスク(김해숙)、ムン・ソリ(문소리)、イ・ドンフィ(이동휘)

「僕の好きなアジア映画」で感想を書いているのは、ほとんどがいわゆる「巨匠」と言われる監督以外の作品です。それは巨匠たちの作品はその道のプロの方がすでにたくさんの立派なレビューを書かれていて僕なんかの出る幕はないからなのです。が、たまにはこれは書きたいなという作品もあります。今回はその中の一つ、パク・チャヌクの『お嬢さん』。

パク・チャヌク監督

パク・チャヌクといえば『JSA』、復讐三部作(『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』、『親切なクジャさん』)、『渇き」など、血なまぐさいヴァイオレンスを奇想天外なドラマとして描く、韓国屈指の名監督。『イノセント・ガーデン』でハリウッド進出も果たしていますが、韓国映画のヴァイオレントなイメージの一翼を担ってきた大監督です。

本作の舞台は1930年代、日本統治下の朝鮮。莫大な財産をもつ旦那様、エロ文学を収集し、エロ朗読会主催する、全くしょうがない変態であります。伯爵を語る詐欺師の男とそのグループの貧しい少女がこの屋敷に入り込み、財閥令嬢の美しい日本人の「お嬢さん」を騙し財産を奪おうとします。しかしそこには騙し騙されのスリリングな展開が。お嬢さん役はホン・サンス監督の愛人キム・ミニ。パク・チャヌクは彼女を吊るす、脱がせる、卑猥な言葉を日本語で言わせる、などなどやりたい放題(笑)。

吊るされる?キム・ミニ

さぞかしホン・サンスは怒ったに違いないのですが、隠花植物のようなキム・ミニがなんとも艶かしい魅力を放っています。本作はまた下女役のキム・テリの長編映画デビュー作でもあります。

キム・ミニとキム・テリ

出演者の日本語が下手で聞き取れない、とのご指摘もありますが、いやいや、あれでいいんじゃないですか。あのたどたどしさが過度の生々しさを和らげているのです。あんな(卑猥な)言葉を明瞭に、明確に言わせる必要性などありません。

韓国の誇る巨匠が、エロティックで、グロテスクで、かつサスペンスフルなプロットを、華麗でシャープな映像美と動きのあるカメラワーク、細部まで豊かな美術、そしてダイナミックな脚本で観せた圧倒的な傑作です(少なくとも個人的にはそう思っています)。その上さらにクィア映画でもあり、女性が主役の映画でもあり、「成人指定」ながら超絶に面白いエンターテイメントでもあるという、もう本当にやばい映画です。

英国アカデミー賞外国語映画賞、百想芸術大賞映画部門大賞、カンヌ国際映画祭 バルカン賞など。


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