見出し画像

僕の好きなアジア映画63: ソウルメイト/七月と安生

『ソウルメイト/七月と安生』
2016年/中国・香港/原題:七月与安生/110分
監督:デレク・ツァン(曾國祥)
出演:チョウ・ドンユイ(周冬雨)、マー・スーチュン(馬思純)、トビー・リー(李程彬)

『少年の君』に先立つデレク・ツァン監督の傑作。『少年の君』は青春映画でもあるが、中国社会の問題にも切り込んだ、瑞々しいけれど尖った映画でもあったのですが、この『ソウルメイト』はよりパーソナルでいて、しかし普遍的な物語を描いているように思います。

ドラマとしては幼馴染の二人の女性の友情と、それゆえの確執、思いのすれ違いを描いた作品。プロットとして新しいものではないって思って観ていましたが、ラストの展開には静かな感動を覚えます。そしてデレク・ツァン監督の瑞々しい演出と役者たちの優れた演技によって、実に生き生きとした切ない映画になったと思います。

自由奔放な安生(アンシェン)に『少年の君』にも出演していたチョウ・ドンユイ。中国では「国民の妹」と呼ばれ、アイドル的人気があるそうです。本作でも奔放なようでいて、家庭環境の問題から自身の居場所を求める安生を激しく、しかし繊細に演じています。

七月(チーユエ)にはマー・スーチュン。七月は落ち着いた、優等生的で堅実な女性。自由奔放な安生に、どこか劣等感に似た感情を持っています。複雑な感情をマー・スーチュンが好演しています。

対照的な二人はお互いに無いものを求め合うように美しい友情を育んでいました。が、その友情に歪みをもたらすきっかけやはり男性の存在。同じ男性を好きになってしまったことで二人の間に溝が生まれます。この後の展開はネタバレになってしまうのでストップ。

自身も俳優でもあるデレク・ツァン監督が、友情を育みそしてそれ故に葛藤しぶつかりあい、結局は距離を置くことになる二人の女性の移ろい行く心情を実に丹念に、繊細な演出で描いています。女性同士の友情や愛憎、僕のようなおっさんには知る由もない部分がとても劇的に、しかしリアルに表現されていました。『ソウルメイト』っていう邦題は、今回に限ってはまあ良い副題なのかもしれませんね。『七月と安生』だけではさすがになんのこっちゃでしょうから。

さてこの映画は、韓国でキム・ダミを主演としてリメイクされる(もうされた?)らしいけれど、この主役はチョウ・ドンユイの溌剌感がないと難しい気もしますが、どうでしょうね。

金馬奨主演女優賞、金馬奨最優秀監督賞、香港電影金像奨最優秀作品賞



この記事が参加している募集

#映画感想文

68,430件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?