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ホームエデュケーション

 学校お休み中のムスメちゃん,ただいまホームエデュケーション中。・・・といっても教科学習に関しては大したことしてないんだけど,英語の基礎は私が教えてアプリで練習。算数は受験レベルのテキストをしてみたいと言うので,あーだこーだ言いながら一緒に解いてみている。大人になって算数するのって楽しいなって,嬉々として解いている私の横でうんうん唸るムスメちゃん(時々ナミダ)。でも自分からやりたい!と言っただけあって,一日に数問しか解けなくても地道に取り組んでレベルアップしている。一方国語も読解ドリルをやりたいと言って買ったのだけど,こちらは手つかず。英語と算数でいっぱいいっぱいのようであります。がんばれー。

 まぁ教科学習に関しては日頃なかなか時間がなくて出来てなかったことを一緒にやっている程度なんだけれども,潤沢にある時間を使って今彼女に学んでもらっているのはどちらかというと「おうちのお仕事」。掃除・洗濯・炊事など,普段私がしている家事をムスメちゃんに売りに出しているのだ。もともとお手伝いはポイント制にしていて,例えばお料理を1分手伝ってくれたら1ポイントたまり,500ポイントたまったら500円の図書カードと交換できる仕組み。その制度をやや拡大,ポイントがもらえる仕事を増やし,これまで図書カードにしか交換できなかったポイントを(彼女の趣味である)手芸用品購入代にも交換できるようにした。そして今回の制度改正の肝は,ピンポイントで仕事をするだけじゃなくて,「洗濯フルコース」など一連の流れを責任持って遂行してもらう仕事を設定したこと。「洗濯ものたたみ」だけをしていると,たたむこと以外のことを気にかける必要がないが,全部の行程を経験したら,自分の干しかたひとつで乾いたり乾かなかったりして,その後の自分の作業に影響するなんてことも体験できる。もちろん最初から全部ひとりでやれというわけではなく,一緒に失敗まで含めてしながら,こうしたらいいいよね,ああしたらいいよねと工夫を考えたり伝えたりしながらやってもらっている。

 お手伝いに報酬を与えることの是非も議論になるとは思うのだが,私は親子のパワーバランスを鑑みれば,そこに「報酬」を介入させるほうがフラット(対等)な関係を維持できるような気がしている。「お手伝いして」という親のお願いは,もちろん子どもの側に断る自由があるのだけれども,断ったら「ぶつぶつ文句を言われたり」「不機嫌になられたり」下手したら「叱られたり」するかもしれないリスク付きのものである。選べるようでいて選べないんだから,見た目ソフトなガチ権力行使といって差支えない。(もちろん怒られたってへっちゃらな猛者もいるだろうけどね。)でも「大売出し~♡」って売りに出せば,買う・買わない,何を買うかも本人の自由。自分の時間をどのように使うか考え,「ポイントは欲しいけどその仕事今やりたくないな」「高級レジン液買いたいから,大変な風呂掃除フルコース頑張っちゃお!」というような内なる心の声を聞き,選択することになる。こちらとしても「お手伝いして欲しいのに,やってくれない。」と悶々とストレス溜め込んでいるより,「仕事とモチベーション」が過不足なく釣り合うくらいのポイント設定に頭を使っている方がよっぽども精神衛生上よかったりする。ポイントゲットが目当てであっても,「あれも,これも,やってみよう!!」と彼女自身がすすんで取り組める,その環境設定に心を砕いていたいと思っている。

 もちろん,彼女は子どもとて家族の構成員なのだから,「おうちのしごと」全てに報酬を与えるなんてことはしない。彼女自身の持てる力を使って自分自身のことは自分でする,のは当たり前なんだから,例えば食事の配膳・下膳なんていうのは(家族みんなのぶん)無報酬である。そのあたりどこに境界線をひくかは家庭の置かれている事情によって異なっていていいと私は思っていて,例えば今後私が夕方帰りの遅い仕事に就くなんてことになったら,彼女に「週に1日,汁飯香(しるめしこう/ご飯とおつけものとお味噌汁のみの食卓)作りを家族の公共のお仕事としてお父さんと交代で引き受けてくれないだろうか。」と打診するかもしれない。家族が健やかに生活していく上で必要なことの内,どんなふうに手分けしてやっていこうか,という話ができたらいいのだと思う。だから報酬付が当たり前になってしまうと,報酬なしでは動かなくなってしまうのではないか,なんて短絡しなくていいと思うがどうだろう。実際ムスメちゃんは私がダウンしたとき,率先して汁飯香を作ってくれたことがある。それは報酬を動機づけとしていたのではなく,共同生活者へのあたたかな配慮だったと私は思っているし,報酬とは別に「どんな関係性を日頃築いているか」が肝要なのではないだろうか。今後思春期の難しい時期に入って,つい親の私が強権的なやりかたで管理しようとすることが重なれば,途端に「報酬付でなければ動くもんか」になってしまうんじゃないかと思う。ブルブルブル。精いっぱい気をつけたい。(※1)

 それから少々説教くさいとは思ったが,私はこのポイント制度拡充の目的をムスメちゃんにはっきりと伝えている。「おうちのしごとができるようになる,っていうのは生きる力だとお母さんは思っています。勉強ができるのも大事だけど,おうちのおしごともそれと同じくらい大事です。あなたにはポイントをためながら,いろんなおうちのおしごとを学んでもらいたいと思ってます。」まぁもう,楽しいポイントゲットゲームに終始しなくてもいい年齢なので,こちらの教育的意図を明示したというわけである。しかしそれに対して彼女がまず言ったのは,

 「特に女の子はね。」

 ・・・もしもし~?
 ジェンダー教育に思いっきり失敗してません~?と内心セルフつっこみをしてから,ガックリ。

 「違うよ。女の子だけじゃなくて,男の子だって生活に必要なことができないとだめだし,男の子も女の子も関係ない。」

 そう,おうちのしごとを彼女に教えているのは,何もジェンダーロールを押しつけたくてしているんじゃない。ひとが生き,生活していく上で必ず必要なしごとをどのようにマネージしていくかっていうことを学ぶ機会。実のところ私自身がそうした機会を子どもの頃に与えてもらいたかった,という思いが強いのでムスメちゃんに託していたりする。勉強だけしていれば文句を言われなかったことをいいことに,私は生活マネジメント能力をアップさせることなく大人になって,いまだに苦労している面がある。だからそれをベーシックな力として実装して,職業生活や生活そのものを豊かにする工夫にリソースをさきたい,と切に思ったり,ムスメちゃんにはそのようであって欲しいなと願ってしまうのだ。家事(≒生活マネジメント)能力は「読み・書き・計算」に並ぶ基礎的な力であって,職業生活と対立するものなんかでは決してなく,それを土台から支えるものとして考えたいと思っている。

 そんなことを中心にしたホームエデュケーション生活。彼女はせっせとよく働き,ためたポイントで好きなファッション雑誌や漫画を買ったり,アクセサリー制作のための材料を買ってちまちまとモノづくりに励んでいる。そんな彼女にアクセサリーをオーダーして下さる方もあり,ものすっごく喜んで試行錯誤しながら取り組んでいる姿にはやはりぐっとくるものがある。「将来の夢」を問われて,直近のことでさえ見通しが立たないせいか顔が曇っていたのだけれども,今は朗らかに「私,ものを作って売る仕事がしたい!」。おう,頑張れ!色々と不安や心配がないといったら嘘にはなるが,今できることを,できるように,楽しんでやっていこうな。

※1
これを書いたあとのできごと。洗濯物を取り入れて二人でたたんでいた時に,ずーっと楽しそうにおしゃべりをしながら洗濯物で遊んだりしているので「あのさ,ムスメちゃんのこのお仕事は時間給じゃないから,なるべく早く効率的に仕事した方が得なんだよ。」とつい言ってしまった。すると彼女はぷーっとふくれて,「お金が欲しいからしてるんじゃないもん。これをするのが好きだからしてるんだもん。こうやってゆっくりやるのが私は好きなの!いけない?お金も欲しいけどさ。」と仰いましたです。そう,私との関係性云々より,彼女はそういう人なのだった。何でもやってみたいと思える,やっていることに何かしら楽しみを見つけられる,そしてその楽しみを満喫しながら朗らかでいられる,そんな素敵な人なのだ。合理化のオニみたいな自分を恥ずかしく思うよね・・・

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