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どうせなら飛ぶ。

こんにちは、こんばんは、ご機嫌よう、みさとです。

今回は、ブッククラブで読んだ、伊坂幸太郎の「残り全部バケーション」から、なんか妙に感じて好きだったところを抜粋して、思ったことを好き勝手書いている内容です。笑 4月に書きかけて下書きを放置していましたので、今回せっかくなんで、書き終えてシェアします。

私が参加しているブッククラブは、ニューヨークで日本語教室に通う仲間で作られたグループ。私は2月に初めて参加させて頂いてから、今は晴れて仲間として受け入れられているようです。 私以外みんなアメリカ人なんだけど、日本語教室で一番レベルが高いクラスにいるめちゃくちゃ優秀な人たちで、日本の本を日本語で読んで、日本語で話し合うという次元の違うレベルの高さ、そこになぜか参加する日本人の私。笑

今までのブッククラブの活動は以下。

2月は、朝井リョウの「正欲」
3月は、私は日本帰国中だったのでお休み。
4月は、伊坂幸太郎の「残り全部バケーション」
5月と6月は、辻村深月の「ハケンアニメ」(みんな忙しくて、本が結構長いので、二章ずつに分けてやることに。)
7月は、山崎ナオコーラの「昼田とハッコウ」の予定

朝井リョウの「正欲」については以前の投稿で、思ったことを書いています。

読書好きだけど、ここのところ全然していなった私は、おかげさまでまた本を読むようになりました。

伊坂幸太郎の本、人気もあるし面白いのも知っていたのに、なぜか私は読んだことがなかった。今回初めて読んで、めちゃ面白い、何で今まで読まなかったんだろう!なんて今更思った。笑
なんだか呑気で気が抜けていていい空気感、悪いと良いとの境界線を引かない、あとたまに凶悪なシーンがめちゃくちゃ凶悪だなぁっていうのが彼の文の私の感想。笑

「飛んでも八分、歩いて十分」

「残り全部バケーション」の中に出てくる文言。
私も文中の高田のように、はぁ?ナニソレ?となった。
「Never happen」から生まれた「とんでもハップン」という言葉。とんでもないみたいな意味らしい。そこからただの語呂合わせ的に進化した「飛んでも八分、歩いて十分」。本の中の造語じゃなくて、実際に存在した言葉。

聞いたこともなかった私。ちょうど日本帰国中だったので、そこにいた母に聞いたら、あーあったね、と言われて、へー本当に存在してた言葉なんだ、なんて思った。

これは溝口と高田の会話、「飛んで八分」のことを溝口が持ち出す。
二人ともいわゆるチンピラ。主人公の岡田という若い男と、その先輩溝口は、一緒に組んで当り屋をやっていたが、溝口が岡田に責任をなすりつけて、岡田は組織に追われ、姿を消す。その後溝口と組んだのが高田だ。

「とんでもない、とか謝る時に、『とんでも八分、歩いて十分』て言っただろ」
「言わないですよ」
「流行ったんだっての。印を踏んでるわけよ」

「残り全部バケーション」伊坂幸太郎

そこで高田が、八分も十分も二分しか違わないからあんまり変わらないと言い始め、そういうことじゃねぇんだよ、とめんどくさくなった溝口さん。

「あ、ただよ、お前だったら、飛ばねぇのか?(中略)俺なら飛ぶぜ。だっておまえ、飛びたいじゃねぇか」

「残り全部バケーション」伊坂幸太郎

そのあと、溝口さんはまた、とんでもハップンの話を蒸し返します。

エレベーターホールまでの道のりで、溝口さんは、「おまえさ、飛べても八分なら、歩いても変わらない、とか言ってただろ」と口元を歪め、俺を見た。
「まぁ、二分違いですからね。大差ない、ってことじゃないですか」
「この間も言ったけどな、そういう問題じゃねぇんだよ」
「どういうことですか」
「二分しか変わらないとか言ってもな、俺なら飛ぶぜ。飛べたらやっぱり、嬉しいだろうが」
「そういう話じゃないですよ」
「たとえば、ほら、最近の若い奴らはどうせ、女を口説く時もメールを使ったりするんじゃねぇのかよ。『好きだ!』とかよ、指で押して、はい送信、ってなもんだろ」
「そういう人もいるかもしれないですけど」
「それなら、歩いて家まで来た男が、『好きだ!』と直接言ってきたほうが、ぐっと来るだろうが」
「相手によりますよ。きっと」俺は答える。今の時代、男が突然、家まで来ることは、感動よりも恐怖だ。
「だけど、それよりも、だ」溝口さんは自分の演説に興奮しているのか、俺の合の手をほとんど聞き流している。「いいか、高田、歩いてくるんじゃなくて、男が飛んできたら、どうよ」
「どうよ、って」
「空飛んできて、『好きだ!』と言ってきたら、これはもう、付き合うしかねぇだろうが。俺ならすぐに裸になって、抱き付くぜ」
「空飛んできた男が、『好きだ!』と叫びながらやってくるなんて、想像を絶する恐怖体験ですよ。真の意味での、ピーターパンシンドロームってやつです」
「いいか、飛んでも八分、歩けば十分、メールは一瞬。だとしても、飛べるなら飛ぶべきだ。そんな経験、しなきゃ損だろうが」
「はぁ」
「八分も十分も大差ねぇ、なんて言ってるのはな、『どうせ人間は、死んじゃうんだから何したって関係ねぇよ』って言ってるのと同じだろ」
「同じじゃないですよ」
「どうせいつかは死ぬけどな、生き方は大事なんだよ」

「残り全部バケーション」伊坂幸太郎

溝口さんは、自分の裏切りのせいで岡田が消されたかもしれないことを悔やんでいる(自分がやったくせに)。
岡田はチンピラのくせに、自分の仕事は人を怖がらせるからいい気持ちがしないから辞めたいと言い始めたり、不思議な方法を使って結果的に人を助けるようなことをしたりする男だった。どうせなら人を怖がらせて生きていくより、喜ばれたいという岡田の儚い想いと生き様が溝口さんの中に深く残っている模様。それがこの溝口さんの発言につながっているんだろうなぁ。
ちなみに、こんな話を聞かされている高田は、散々悪いことしてきた溝口さんに「生き方は大事」なんて説かれたくない、とイライラ。笑

この広い世界の中で、人間なんて本当にちっぽけで、全力で生きようと、ただただ時間をたれ流そうと、笑顔で幸せに過ごそうと、誰かを憎んで生き続けようと、大差はないのかもしれない。どういう方法を取ろうと結果は一緒だったら、たった2分の違いはどうでもいいかもしれない。でもあえて自分は、自分の好きなように、楽しい方法でいくぜ!っていう。
そうだな、私も飛べるなら飛んでいきたいな、だってそっちの方が楽しそうだし、気分良さそう。
どう生きるかとかって色々あるけど、結局シンプルに自分が満足できるようにやりたいように楽しく生きればいいと思うんですよね。そんなに簡単じゃないとか、色々事情がとか、どこまでも言い訳して複雑にしようと思えばできると思います。でも本当に大事なことって実はシンプルだと思うのです。
飛んだところで世界の何が変わるわけでもないんですけど、自分が笑顔になる、それって大事。

楽しむことを忘れない

私、先月はほぼ仕事しかしてなかった。金欠から抜けるためにお金を稼がなくてはで、ちょうど新しいカフェで一人スタッフがバケーションに入っているところを別のスタッフが急に抜けたりとかで、結局週5とかで働いていて、プラスリモートの仕事もあるので、忙しくて余裕を失っていました。でもそういう時も絶対必要。おかげ様でお金を稼げたし、「やばい」金欠はひとまず抜け出せたかな。まだまだ余裕があるとは言えませんけどね。

今月は通常のスケジュールに戻り、カフェは週3日くらい。そのほかの時間は、リモートの仕事と、自分の制作の時間に当てられます。
近頃はアメリカはバケーションシーズン、友人たちもあちこちに行っています。バハマへクルーズ、ハワイ、ポルトガルへ旅立った子も。

いいなーーーー!

旅が大好きな私だけど、ニューヨークに来てから、これ自体が旅みたいなものだし(?)、全然旅行していないー!まぁコロナもあったし、最近日本行ったばかりですしね。笑
しかしバケーションって言っても、今シングルで一緒に行く相手もいないし、友達もみんなパートナーいてそれぞれでバケーションの予定があるし… ってぐじゃぐじゃ言ってたんですけど、今日ふと、いや、別に一人でいいじゃんって思いました。一人でも楽しめばいいじゃん、そんな一人だからってうじうじ言い訳しないで、一人でも楽しいことすればいいじゃんって。
昔は、ひとり旅たまにしてたんですよね。なんかすっかりその感覚忘れてました。一人でパリも行ったし、引っ越す前の下見旅行でニューヨークも来たし。

今度、一泊二日でワシントンDCでも行ってこようかなと思っているところです。そういうこと思いつくと途端にワクワクしてきた。
楽しむこと、少し忘れていました。言い訳せずに、楽しもうと思います。

ショートトリップについては、また実現したらnote にアップして行きますね。

次回のブッククラブは、来週の平日の夜に集まるんですが、今は辻村深月の「ハケンアニメ」を読んでいます。アニメ業界で頑張る人々の様子を描いているんですけど、めちゃくちゃ面白い。一生懸命いいものを作ることに情熱を燃やして全力で頑張る人たち、それぞれの思いや仕事の仕方でたまにぶつかったり、疲れてボロボロになったり…。チームで働くっていいなーって読んでいて、心の底から思います。まだ読み終わってないけど、続きが楽しみです。

ブッククラブの良い点は、自分だったら手に取らない本を、課題本として読むということ。例えば、タイトルとかテーマだけで見たら、きっと私はアニメ関連の本は選ばない。でも読んでみると、そこにめちゃくちゃ面白い人間ドラマがあり、思いがあり、本当に読む機会をくれてありがとう!って思います。

またブッククラブのことや、本の感想?(これは本の感想と言えるのか?笑)などアップして行きます!
それから、今更だけど、ニューヨークにいるくせにニューヨークのことあんまり書かないので(笑)そういうことも徐々にアップして行きたいと思っています。

それでは、今回はここら辺で。
ニューヨークから愛を込めて。

美里



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