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自分を愛する旅


ダークサイドに居るときは自らの光が道しるべになる。
タロットカードのハーミット(隠者)のように、揺らぐランプを片手に暗闇の中を歩いていく。


とにかくわたしは、幼い頃から自分の中にいる〝悪魔〟の囁きに悩まされてきた。

それはわたしを脅し、誘惑し、否定し、無能だと囁いた。ときに凶暴になり、嫉妬深く、飽きっぽく、自己中心的で、わがままで、手に負えなかった。

それはトールキンの指輪物語に出てくるゴラムのようだと思う。あの物語は現代に生まれた新しい神話だ。誰のなかにもゴラムはいて、それはいつのまにか頭の中に現れて囁く。それはコントロール不能で、その度にわたしは敏感に反応し、そんな思いが自分の中にあることを恥じ、自分を汚いと感じて責めた。

どうやったら清らかで美しい心になれるのだろう?というのが、わたしの人生の一大テーマだった。美しい心になれば、自分を好きになれると思っていたし、とにかく自分を嫌いと感じる痛みから解放されたかったのだ。

立派な歴史上の人物の人生を紐解いていくと、勇敢に生きること、人のために尽くすこと、何かを成し遂げること、それが人間としての理想であり、自分を好きでいられるための条件であるように思った。

わたしは素直な感情を徹底的に抑圧し、自分を心の汚い醜い存在だと思い込み、清らかで美しいものへの憧れと羨望を抱き、追い求めた。

でもどれだけ頑張っても相変わらずわたしの心の中には悪魔がいて、そんなことは到底できないように感じ、自分はなんてつまらないダメな人間なのだろうという劣等感が蓄積されていった。

そうしてわたしはいつまで経っても自分が分からず、人から見れば波瀾万丈の人生を送り、罪悪感をつのらせ、アップダウンの激しい日々に疲れ果てた。

長い間、幻想を追い求めて奔走した人生だったなぁと思う。
だからといって、歩んできた道のりを無駄だったとか、否定するものではない。
貴重な体験を数多くさせてもらい、よろこびも美しい感動もたくさんあり、人に恵まれ、数えきれない幸せなときを過ごしたから。


「自分を愛する」ということばを知ったのは、スピリチュアルな事柄に興味を持ち始めたころだったと思う。
しかし、漠然としていて、やり方が分からない。
そもそも〝愛〟の定義さえ曖昧なのだ。

わたしの探求は外の世界ではなく、心の内側へと向かっていった。
その探求のガイドとして選んだのは、タロットや占星学に代表される神秘学や、禅などの宗教哲学だった。その神秘的で気高く深遠な宇宙観にたちまち魅了された。
これらにはアートがあり、感情が豊かに満たされ、触れるたびに世界が輝きを増すからだ。

そうしてどんどん自己分析を進めていった。
するとどうやら、自分を愛せないのは、幼い頃に作った自己イメージ(思い込み)にとらわれていることが大きな原因であることがわかった。

歪んだ自己イメージの大部分は、幼少期の両親との関係性で形成される。
分析を進め、人生がそれとともに変化していく中で、自分の中にこんなにもトラウマや自己否定感情が潜んでいて、それが親との関係性によるものであることが本当に腑に落ちて理解できるまでは、とても時間がかかった。


わたしたちは蛇のように、脱皮を繰り返す。
そうやって、古い自己を脱ぎすて、新しい段階へと進むのだ。

その体験は人によって違う。
だから、自分の歩みを信頼することが大切だとわたしは思っている。
古い自己を脱ぎ捨てるとき、それは完全に一体化している状態だから、その一体感が強力であればあるほど剥がれるときには痛みを伴う。

その状態は一見、鬱のように見えたり、ひどい錯乱状態に見えたり、くだらない妄想へのとらわれのように見えたりする。
他者の視線や、人が去っていってしまう恐怖や、外の明るく楽しそうな宴や、暗い自分を責める気持ちに屈して、自分の素直な状態を無理に社会的な「正解」や「明るさ」に合わせようとすると、ますます苦しくなる。

エロスとプシュケの神話にもあるように、プシュケは苦難にぶち当たるとすぐに自殺したくなる衝動にかられる。神話は心の成長段階を表していて、女の未熟な心理なんてそんなものなのだ。

そして何より、女は深く潜って女神のパワーに触れる。海を隔てた遠い国々で、冥界下りの神話が共通しているのは面白い。
冥界下りは、神聖な道を歩むことを決意した魂の、目覚めのプロセスでもある。


わたしもまだ道半ばで、この先どんなことが待っているのか分からない。
でもきっと、自分を深く愛せる日がくると信じている。
本当はずっと愛しているし、そのことに気がつくだけでいいのだろうけど。


最後に、わたしの未熟な男性性と、抑圧された女性性をあたたかく見守り育んでくれるパートナーに心から感謝します。

彼の内なる男性性を形容するぴったりな表現が、「ヒロインの旅」という本の中にあるので引用します。
こういう男性性を内側に育んでいきたい。


彼は「やさしく、あたたかで、強い」。
恐れずに怒りを受け入れ、愛し、前向きに進む。「冷静で我慢強いが、前進する力もある。それは彼が流れに逆らわずに今を生きているからだ。仕事も遊びも楽しみ、どこにいても、心がどんな状態にあってもリラックスしている。直感的でセクシーな大地の男だ。高い精神性を持ち、創造力に富んでいる」。

ヒロインの旅/モーリーン・マードック



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