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本物のメキシカンタコス作りへ道のり【前編】〜コーンフラワーとまな板で代用して作れるか〜

メキシカンタコスにはまっている。

メキシコ出身の方が教えてくれたとうもろこし粉で作るタコスが、ふわふわで香ばしくて、あまりにおいしかったからだ。小麦粉皮のアメリカンタコスもわるくないけれど、小麦粉でつくったものがおいしいのは既定路線だ。とうもろこしがこんなにおいしい生地になるなんて!と感動した。

しかし、実際自分で再現しようとすると、一筋縄ではいかなかった。そもそも海外のものを作ろうとすると、特殊な材料や道具を買わないといけないことが多い。どうにか家にあるものでできないものだろうか...
「日本で手軽においしいメキシカンタコスを作りたい!」と試行錯誤した道のりについて書きたいと思う。

なお、今回は中に包む具材については考えず、タコスの皮(=トルティーヤ)だけを対象とする。

◉メキシカントルティーヤの基本の作り方◉
1. トルティーヤ用のとうもろこし粉(マサ粉)に塩ひとつまみとぬるま湯を加え、ひとまとまりにする
2. トルティーヤプレスでつぶして平たくする
3. フライパンをしっかり熱し、片面40秒ずつ焼く

試作①:強引にコーンフラワーで作る

「マサ粉は、コーンフラワーとは全然別物。代用はできないよ」。

私にタコスを教えてくれたエリックは言う。しかし、マサ粉は南米食材店かネットなどでしか手に入らず、値段も高い。

できないと言われると、どれくらいできないものなのか、何が違うのか、試してみたくなるもの。だいたい本場の人は「これじゃないとできない!」と言いがちだ。代用を考える必要がないくらいその材料が当たり前に身近にあるものだし(とうもろこしは、マヤ文明・アステカ文明の時代からメキシコの重要な食料)、本物を味わってほしいと思うものだから。そこで、コーンフラワーでのトルティーヤ作りに挑んでみた。

富澤商店で買ったコーンフラワー100gに塩を加え、トルティーヤを作るのと同量のぬるま湯130mlを少しずつ加える。

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開始3秒で気付いた。これはまとまりそうにない。

粉がなかなか水を吸ってくれないのだ。少しずつ加えて、最終的に吸ってくれたのは75ml。マサ粉の場合の6割ほどしか吸水しなかった。それを丸めて潰して、ビニールから剥がしてフライパンで焼こうとしたら...

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ぱっくり、割れた。

とうもろこしは小麦粉に比べて吸水性が低くグルテンも生成しないので、水を加えてこねただけではまとまらないのだ...小麦粉ってすごいな。

無理矢理フライパンにのせて焼いたはいいものの、出来上がりはひび割れ、パサパサして粉っぽく、その上なぜだか苦味がある。大変おいしくない。

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試作②:小麦粉を混ぜて作業性を上げる

このままだとおいしくないし、それ以前に生地として扱いづらすぎる。小麦粉を混ぜたらまとまりがよくなりトルティーヤ生地(マサ)に近づくのではないだろうか。100%とうもろこしのコーントルティーヤを目指したのに結局小麦粉入れるのかと悔しい気持ちになりつつ、クックパッドでレシピを調べ、少しずつ薄力粉を加えた。最終的に入れたのは、コーンフラワー100gに対して小麦粉60g。

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割れなくなりました。

しかし小麦粉を入れたせいでもちもちしてしまい、とうもろこしの香りも今ひとつで、それなのにやはり苦味はほのかにあって、これだったら小麦粉100%のトルティーヤの方がいいじゃんという気持ちになりボツ。

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試作③:南米食材店でマサを買い、まな板プレスして焼く

ようやく南米食材店に行き、トルティーヤ用の粉を買ってきた。コーンフラワーと比べてみると、違いは一目瞭然。

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コーンフラワー(左)はクリーム色でさらさらしているのに対して、マサ粉(右)はくすんだ白でざらっとしてる。匂いを嗅いでみると、コーンフラワーは特にしないけれどマサ粉はほんのり甘い香りがする。
ちなみにお店には白・黄・青・ピンクの4色のマサ粉があり、ポピュラーなのは白と黄だとお店の人が教えてくれた。

この粉で、教わった通り生地を作り、まな板で挟んでつぶして焼いてみる。フライパンの上で生地が膨らもうとして持ち上がり、生地内部に空間ができたのが感じられる。これまでのはチヂミのようにぎっしりだったけれど、今回のはパンだ!

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はやる気持ちが抑えられず、皮だけで1枚パクリ。この味だ!
タコスっぽくしようと冷蔵庫を開け、煮浸しを挟んで(ミスマッチだった)もう1枚。

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ここで、納得いかないことが出てきた。焼き上がりが分厚くて、二つ折りにすると割れそうになる。それに、水分が飛んでしまっているのか、ふんわりよりもモソモソした食感で、理想のタコスではない。エリックはまな板でしっかり薄くつぶせていたように見えたけれど、私の力では足りないのか...
メキシコに住んでいるメキシコ人の方に相談したら、「まな板でつぶすのじゃ分厚くてダメ!絶対トルティーヤプレスを買わなきゃ!」と言う。しかしAmazonでもメルカリでも、一番安いもので3,000円ほどする。つぶすだけの道具にしては、なかなか高い。しかも毎日作るのでもないし...

試作④:トルティーヤプレス購入

とはいえ、買ってみないことには、買う必要があるかどうかは判断できない。勢いでAmazonをポチ。

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届いたトルティーヤプレスで生地を潰してみたら、、

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なんと簡単に美しく広がることか!

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まな板で押しつぶすのでもある程度は薄くなるが、均一な厚さでそれ以上つぶすのは至極難しいし私の力では厳しい。一方トルティーヤプレスは、軽く挟む動作だけでその2倍ほどの大きさにまで広がるのだ。
薄くなることの利点は多い。もそもそ感がなくなってふんわりし、さらに焼いている時の膨らみ方も先ほどよりよい。興奮して友達の家に持っていったら、小学生キッズたちも楽々きれいにつぶせて、しかもパタンパタンと楽しいのでまんまとハマってくれた。

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特定地域で高頻度に行われる調理のため特化し道具というのは、ものすごくよくできている(炊飯器、にんにく潰し、スパイスミル...)。

ちなみに、麺棒で延ばす案を採用しなかったのは、潰すと延ばすでは生地への圧力のかかり方が異なるから...というのと、麺棒で延ばすものは餃子にしてもチャパティにしても私の手にかかると何ひとつ正円にならず、「潰す」という方法が大いに気に入ったから。

トルティーヤプレスの導入により、これまで40gの生地でトルティーヤ1枚焼いていたものが、25gの生地で同じサイズが焼けるようになった。約3割も薄くなったということだ。

試作⑤:やっぱりIHではなくガスがほしい

しかし薄さ問題が解決しても、焼け加減にまだ問題がある。「表40秒、ひっくり返して裏40秒」と教わったのだが、うちの台所では到底40秒で焼けず、良さそうな頃合いまで焼いているとパサパサになってしまう。それにエリックが見せてくれたように、風船の如く生地が膨らむ様子も一切ない。

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これは原因が明らかで、教えてもらった時は「ガスx鉄フライパン」だったのに対し、うちでは「IHxテフロンフライパン」だからだ。IHは設置面しか熱くならないのでパサパサになりやすく、ガスの方が均一に温まる。また鉄のフライパンは熱容量が大きい(蓄熱性が高い)ので、中の水分が飛ぶ前に表面だけ素早く焼ける。ガスx鉄フライパンの方が、"勢いよく表面だけ焼ける"のだ。

とは言っても、家の設備は変えられない。そこで友人宅で台所を貸してもらってタコパをすることによりこの問題は解決した。持つべきものは、火を貸してくれる友。

これで、十分に薄くて香ばしくてやわらかいトルティーヤが作れるようになった!

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試作⑥:ポップコーン用のコーン粒から作る

しかし、一旦満足のいくトルティーヤが作れるようになると、新たな気になることが出てきた。

結局、一番大事な生地については人任せで、何も理解してない。

マサ粉はコーンフラワーと違うわけだけれど、一体何が違うのか、どうしたら作れるのか。調べてみると、粒の状態で水酸化カルシウム水溶液で煮る「ニシュタマリゼーション」という加工をしたのちに挽いていると言うことがわかった。

たったそれだけで生地がまとまるようになるのか?
なぜそんな手のかかる方法を行うのか?
その処理をすることでとうもろこしに何が起こるのか?

知りたくなって、今度は粒からトルティーヤを作ることに挑戦した。だいぶ長くなってしまったので、続きは後編で。

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◉前編のまとめ◉
- メキシカンタコスを作りたかったら、粉は絶対マサ粉を買いましょう。コーンフラワーで代用するくらいなら小麦粉のトルティーヤの方が断然いい。
- トルティーヤプレスは、なくても焼けるけれどあるとタコス作りがもっとらくに楽しくなる。


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