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気になって仕方がない言葉遣い

日々言葉は生まれ、古い言葉と置き換えられていく。それ自体に不満はないのだが、誰かが生み出した言葉に寄りかかりすぎて汎用されまくっているのを目にすると、またかと思うことが多くなった。

少し前「~させて頂く」という言い方が、日本語としておかしいというのがあった。二重敬語とか、尊敬語と謙譲語の混同とか、日本語そのものの間違いの指摘も多い。
「頭痛が痛い」とか「腹痛が痛い」も、言葉の間違いの代表格だが今ではギャグのように使用される。

わたしが数年前から思っているのは、前述した「~させて頂く」よりもう少し後に出てきたのではないかと思われるものだ。特に近年利用者の多いSNSや、ネットニュースなどでよく目にするようになったものだ。
もちろんこれもだいぶ前から頻出していることで、私の胸がネムネムしている間にだいぶ古くなったものもある。

いいとか悪いとかではない。
単にわたしが引っかかってしまうということなので「ああ、確かに」なんて思いながら読んでいただけると嬉しい。

思い出すままに一例をあげるとこんな感じだ。

「~する人続出」
世の中にはよくもこれだけリピート買いする人が続出したり、感動する人が続出したり、涙する人が続出するものだと感心する。
毎日、ものすごい数の人が何かしらの対象に向かい続出しているようです。


「号泣」
涙を浮かべたくらいで号泣したことになる芸能人、続出。
ちなみに「号泣」とは「大きな声で泣き叫ぶ」くらいの泣き方です。
久しぶりに友人と再会して号泣とかするのでしょうか。友人、引きませんかね。

声をあげてわんわん泣く感じですが、じっと耐えて涙をほろりとこぼすくらいのものでも号泣と書かれているネットニュースなどが多いので、勘違いする人も続出するのだろうなとは思います。


「~ですし、~ですし……(延々続く)」
聞き取りやすいように、一度文を切ったらいかがなものだろうと思ってしまいます。
並列しすぎでなにが一番言いたいのか分からない。全部大事? 自分の中には考えていることがこんなにあるんだぜ、もしくはやりきった自分を懸命にアピールするとこんな形になりますという自己顕示欲にさえ見えてくるのはわたしの偏見かもしれません。
わりとスポーツ選手のコメントによく見受けられます。


「~しかない」
使用例:尊敬しかない。感謝しかない。

たぶん、単純に相手のすごさを褒めたいという気持ちがあるのでしょう。
自分でもこんなことをしたいけれどとてもできません。やり切ったあなたはすごいです、と。
最大級の誉め言葉として使用するのでしょうが、それしかないのかい! と未使用者のわたしはそんな突っ込みを入れたくなってしまいます。


「~やろ。やん」
ネットのコメント欄でよく見かける言葉。
感想や意見を書き込む際、なぜか語尾が関西弁。


「素直に嬉しい」
コメントを求められて、自分でわざわざ素直と言わなくても誰もあなたが嘘をついているとは思っていません。
「とても嬉しい」などではダメなくらい、まっさらな心のまま、一点の曇りなく嬉しいのかもしれません。
類似例に「単純に嬉しい」「純粋に嬉しい」なども。

「~の気持ちでいっぱい」
使用例:感謝の気持ちでいっぱい。嬉しい気持ちでいっぱい。今は悔しい気持ちでいっぱい。

たくさんの想いで胸がはちきれそうですね。
今はたっぷりとその気持ちにひたりましょう。


「〜すると決めている」
胸に秘めた決意を高らかに口にしてしまいます。
自分の生き方の一宣言です。

これは誰が言い出したのでしょうね? 
「こうなったら、こうしようと思っていました」みたいなコメントはスポーツ選手の口からよく聞かれましたが、「~しようと決めていました」というセリフはいつから聞くようになったのでしょう。
昔むかしの日本人はこういういい方はしないような気がします。(気がするだけです)


さて、思いつくままにつらつらと書いてみました。
気づいたときにメモでもしておけばいいのでしょうが、うっかり忘れてしまうのは「私だけでしょうか?」(100%の肯定を意識した反語)

あと、言葉ではないがサイトの広告で「お願いします」「買ってください」と土下座して顔を伏せた写真や絵と共にこういった言葉を添えるやり方。
これもネット販売広告の流行なのでしょうかね。

わざとらしくて購入したりしませんが、言葉も広告などの表現方法も流行りすたりがあるんでしょうね。

「推し」とか「沼」とか、知ったころにはすでに古くなっています。
すっかりトレンドを気にしなくなった今日この頃ですが、毎日のように紋切り型の言葉や表現を見かけると、もうちょっと別の言い方を探そうという気にはならないのだろうかという思いにとらわれます。

特に言葉で表現をする職業の人は、自分が新しい言葉を生み出すんだという気概を持ってほしいなと思います。

なにか、とても年よりじみた締めになりました。


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