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東京土産

昔、イベントのお手伝いの仕事をしていた事があります。
全国各地に飛び回ってイベントの雑務をする仕事です。
しかしイベントは毎日あるわけではありません。
雑務なのでお給料も一日は単発バイトより少なく、交通費が出たのが幸いなくらいです。

そこで並行してコンビニでアルバイトをしていました。
普段は週3~4くらいで働いていたのですがイベントが入ると1週間ほどお休みをいただくこともありました。
職場に迷惑をかけるので毎回お土産を買ってきていました。
明太子せんべい(福岡)タコ焼きせんべい(大阪)牛タンせんべい(仙台)とやたらせんべいばかり買ってきていました。数が入って安かったからです。

それはさておきそのコンビニには高校生バイトのTくんという男の子がいました。
Tくんは「ありがとうございます!いつも貰ってばかりで悪いです!僕もそのうち買ってきますね!」と言ってくれました。

ある日、Tくんは「お土産どうぞ!」と言ってお土産をくれました。

「東京ばなな」でした。

ここは埼玉です。東京ばなな…電車で30分で買いに行けるお土産。
赤羽に売っていれば20分です。
Tくんはどこか誇らしげでした。どうだこれで俺も大人の仲間入りだ!という顔をしていました。

わたしは「あ…ありがとう」と困惑の表情で受け取りました。
埼玉県民で東京ばななを埼玉県民に配ったのはTくんが初めてではないでしょうか。

しばらくしてTくんは都内の企業に就職してバイトをやめていきました。
きっと彼は帰省の際にも東京ばななを買って来るのでしょう。
あんなに誇らしげだったんですもの。
エキナカで東京ばななを見るたびにTくんの事を思い出してしまいます。

ちなみにわたしはバナナが苦手なので持ち帰り家族にあげたのでした。

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