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仕事を辞めた

8年余り勤めたパート先を退職した。
新聞の折込みチラシで見つけたかかりつけのクリニックの求人に応募することを決めたのは、とにかく先生とスタッフの方みんなが穏やかで優しかったから。どうしてもそこで職を得たいと思った私はこれまでにない熱心さで履歴書を書いた。5枚はあったはずのストックで足りず、買いに走ったのを覚えている。

最後の日、大好きな先生と腕を組んで写真を撮った。
私は先生が機嫌が悪かったり、わがままな患者さんに声を荒らげたり、嫌味のひとつでも言ったのを見たことがない。金銭的な負担も出来る限りないように配慮されている。予防接種なんてほぼ原価だ。笑
「これまでもこれからも、こんなに尊敬出来る方の下で働くことはもう二度とないと思います。」私が言うと、恥ずかしいからやめて!と先生は顔をくしゃくしゃにして照れて逃げてしまわれた。
先生の奥さんは、面接した日のことをとても覚えているわ。あなたが着てた服も覚えてるのよ。と。笑
60歳を超えてもn100を素敵に着こなされる奥さんとは好きなものがよく似ていてたくさん話をした。偶然のお揃いもたくさんある。
ドラマの話、タルトタタン、原田マハ、京都のお寺、インド映画、神戸のロシア料理屋さん…。
立場上スタッフから煙たがられることも多かった奥さんに口答えしていたのは私だけだった。笑 でもとても可愛がって頂いたとも思っている。
先輩スタッフの方々も大好きだった。とにかく尊敬できる方ばかりだった。わがままな患者さんの話をニコニコして聞いている。私のミスをいつも庇ってくれた。たくさんのことを学んだけれど、私は彼女たちのようには最後までなれなかった。
仕事は楽ではなかったが、大好きな人たちに囲まれた居心地の良い職場はぬるま湯のようだ。
出てみようと思った。
何かに挑戦するには最後のチャンス、いやもう手遅れかもしれないけれど、先生から、あなたならどこへ行っても大丈夫。喜んで迎えてもらえる。先生は最後まで優しくて両手で顔を覆って声を上げて泣いてしまった。

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