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Allbirdsの経営政策から学ぶ、サステナブルファッションのこれから

わたしは、現在「インクルーシブファッション」の事業立ち上げをしようとしています。名前はSOLIT,Incです。

最近はと言うものの、プロトタイピングを何度も繰り返し、たくさんの方々に協力してもらいながら1歩ずつ前に進んでいるのですが、改めて、立ち上げ前だからこそ、入念に、その経営政策と経営の質をどうありたいのか改めて見つめ直したいと思っています。

3度目の起業であることもあって、これまでの2回ではできなかったことへのチャレンジと、今の私だからこそのその匂いを醸し出していけたら、と(笑


そこで今回は、ただファンのAllbirdsを事例にあげながら、自分自身の考えの整理と実践に向けたnoteをまとめてみたいと思います。

ちなみに、実を言うと、現在通っている大学院大学至善館での講義の一つ、「BUSINESS POLICY」の講義の中で、経営者の役割と企業の経営政策に関して分析しレポート化しなければならず、せっかくならまだ見ぬ自社に向けて考えよう!と思い立ち書いています。そしてこのnoteも、提出したレポートの一部を切り取って少し編集したものです。

※補足※
宿題提出の期限が迫る中、調べられる範囲での情報からまとめたものなので、抜け漏れや、思慮深さのたりない部分は多いですが、間違えていたり修正すべきところがあればいつでもご連絡ください!


ファッション業界の光と闇

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私たちの知るアパレル業界は、歴史的に見ても多くのイノベーションを生み出し、そして私たちに多くの興奮と幸福を与えてきた、と思う。

しかし、大量生産・大量消費の産業システムに拍車がかかったことで、まだ着ることができるものすら「大量廃棄」してしまうという環境・ごみ問題、さらにはバングラデシュで起きた「ラナ・プラザの悲劇」は、この既存の産業システムによって起きた事件ともいえ、倫理的・人権問題など複数の問題が折り重なり、忘れてはならない業界の闇とも言える。

そんな光と影を併せ持つこの業界で、新たなチャレンジをするということは、企業にとって大きな賭けともなり、そして誰かを幸せにし、誰かを不幸にさせるかもしれない。

アパレルの未来と、そんな未来における企業がどうあるべきか、そしてそれらを牽引するリーダーはどうあるべきなのだろうか、ともんもんとしている。

既に余っているのに、新しいものをつくる意味とはーー

それでも新たなものを立ち上げようとしている私は、大きな1歩を踏み出す前に、今一度自社の経営政策を考えたいとおもう。そして、考えるに至っては新たなアパレル業界のグローバルリーダーともなりはじめ、2020年1月に東京へ上陸し話題となったサステナブルシューズブランド「Allbirds」を題材としてみたいとおもう。自社のベンチマークとしているだけでなく、これからのアパレルの未来を切り開く参考になるきがして。

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巨大マルチ展開ブランドでもなく、シューズ特化、D2Cブランドとして産声をあげたAllbirdsの置かれている経営の状況を、経営者の視点に立ち分析し、さらにどのような打ち手が考えられるのか具体的に考えてみたい。

ちなみに以前、来日したそばからファンの私は原宿の店舗に出向き、勝手にマーケティングトレースをさせてもらった。その記事はこちら。


私が見る、Allbirdsの置かれている経営状況

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(Allbirds プレスリリースより画像引用)

「世界一の履き心地」と称され、シリコンバレーの著名人たちもこぞって愛好家となっている、本ブランド。ミニマルなデザインと、機能性、そしてサステナビリティのどれも手を抜くことのないAllbirdsに、私自身もヘビーユーザーとして恩恵を受けている。

(はい、もちろんウールの日常使い用と長距離用の2足をヘビロテしていますよ!もちろん!!!らぶ!)


その商品自体への注目度もさることながら、巨大アパレル業界の壁をすり抜けD2Cブランドとして、シューズをはじめとしてアパレルへの展開をおこなうことでさらなる展開を見せている。

(Allbirdsのみなさん、リリースおめでとうございます!ひゅーひゅー!)


ここまでのAllbirdsのOverviewをまとめるならこんな感じだろうか。

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 どこをとってもこのような華々しいスタートを切ったAllbirds。この現在の経営課題を改めて、確認できる資料のみからではあるけれど、我が身を経営者の立場に立たせ、分析するならば、大きく分けて以下3つであると捉えられる。


1. 中核であるサステナビリティ文脈が伝わりづらい欧米諸国外へのローカライズが未知数
2. 350名超えの中規模ブランドとしての成長の鈍化
3. シューズを超えた次なる深化・探索によるファン離れ

これら3つの経営課題をもとに、すこしずつ紐解いていきたいと思う。


ちょっと待ってよ、Allbirds!

実は最近、「ちょっと待ってよ、Allbirds!」と感じることがあった。

Allbirdsはそのサステナビリティに対する責任の明言や、そのスタンスが共感を呼びファンが増えている、と言っても過言ではない。そんな中、経営課題の1つ目に挙げたように、日本をはじめ中国などアジア展開など、中核を担っていた「サステナビリティ」に対する馴染みのまだ浅い国への展開は、今後プロダクトマーケットフィットしていくかは疑問が残り、未知数であるとおもう。

(サステナビリティやエコを売りにしているブランドはどれもこの課題を感じているだろう)

さらに、2つ目にあげたものとして、創業4年で350名を超える従業員数に対し、他社比較をした際に成長が大きくは見受けられない状況もある。

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大きくスタートダッシュを切ったものの、店舗を増やし、リテール人材を増やした店舗販売重視型の組織体は、現時点は大きな歪みは見受けられていないものの(歪まないでほしいという個人的な思いゆえに見えていないだけかもしれない)、ここから「Allbirdsらしさ」となる企業文化やコンテキストの浸透、そして前者であげたように顧客へもそのストーリーをいかにして伝えていくかは大きな課題となるだろう。これは3つ目の経営課題にも紐づく。

現在は「シューズブランド」として一定の知名度をあげたAllbirdsも、下着や衣服へも事業フィールドを広げ、これまで手を出さなかったAmazon出店をし始めている。*

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もちろんAllbirdsの独自のアセット・コアコンピタンスを活用した探索としては、良い決断であり、既存のファンたちにとってはビッグニュースとなった。シューズブランド立ち上げ当初から「あくまで靴は皮切りである」といった類の発信していることからも見ると、有言実行したとも言えるだろう..

でも、ちょっとまって...

見つけてしまったそばからつぶやかずにはいられなかった。そんなファンは多いと思う...(ちょっとまってよ、Allbirds!)

※2020.11.2 18:15追記
そしてこれは私の早とちりだったのだ。ごめんなさい。Amazon出店は正規品ではなく「並行輸入品」であり、Allbirds本体が出店しているわけではなかった。

よかった...(ファンの声)

というのも、AllbirdsはAmazonにコピー品を出品され、Allbirds創業者が「コピーするなら環境に配慮しているところまで真似してくれよな」という粋なアプローチをして話題となったという背景がある。

それにしても、本家がそう思っていても、並行輸入されてしまうとそうみえちゃうのもったいないよな...


しかし、これが経営課題の3つ目の主要なポイントとも言えると思う。なぜなら、その目指す世界が浸透する前にフィールドを広げてしまうことで、いわば「ついて来ることができない人を生む」とも言える。(今の、私のように...)

これまで顧客と真に向き合い、環境への配慮の徹底した姿勢に対して、果たしてこのタイミングや展開は適していたのだろうか。この点は、経営判断として正しかったかどうかは売り上げと成果が答えとなるだろうが、一ファンとしてもこの選択とスピードは焦っているようにも見受けられた。

そしてこれら3点ともに包括して言えることは、現在Allbirdsだけでなく多くのアパレル企業が「サステナビリティ」に対する責任とコミットメントを求められ、この潮流に合わせて数多くのブランドが立ち上がっている。どこを向いてもサステナビリティ・エコという言葉が掲げられ、大量生産大量消費モデルにより商社にデザインや生産を任せきったブランドがほぼ同じようなデザインになったように、「環境に配慮した商品である」というだけでは立ち行かなくなる未来はもうすぐそこにきていると言える。

「世界一の履き心地のシューズブランド」は「サステナブルアパレルブランド」へと現在範囲を広げ、抽象度を高め、そのスピードを加速してもなお、そのコンテクストは社内外に伝えられるだろうか。

そしてサステナビリティ戦国時代で生き残り、理想とする世界の実現ができるのだろうか。

具体的な打ち手を少し、考えてみた

ここまでにあげた経営状況と、それに対応する3つの経営課題に対し、具体的な打ち手を考えたいとおもう。(だってAllbirdsが好きだから...メンヘラ感でてきたw)

中核であるサステナビリティ文脈が伝わりづらい欧米諸国外へのローカライズ、中規模ブランドとしての成長の鈍化、そしてシューズを超えた次なる深化・探索によるファン離れ、さらに加速するサステナビリティ配慮系ブランドの乱立は「Allbirds」にとって泣き面に蜂とも言えるのではないだろうか。

しかし、私がこれらの経営課題に対して大きく提案したい具体的な打ち手は、「Allbirdsならではの、コンテクストを基盤としたソーシャルキャピタルの構築」である。あたりまえのことを言っているようで、あたりまえにできるところが少ないことなんじゃないか、とおもったりする。

どんなに今後あらゆる「サステナブルアパレルブランド」が立ち上がろうと、店舗展開し従業員数が増えたとしても、シューズに限らず多様なアイテム・販売手法に手を広げたとしても、その根幹を担う「Allbirdsならではのコンテクストを基盤としたソーシャルキャピタル」が構築されれば、既存の顧客は継続してフォローし、自ずと従業員、そして売上はついてくるだろう。

そしてこれを実現するために、企業プロセス論者的立場から言うならば、Allbirdsのブランドとしての今後を担う意思決定を行うマネジメント層や従業員がこの行動と決断ができるような組織体制・システムが必要であり、さらにそれらが継続的に実行されるよう、その場のコンテキスト(空気・匂いなど)をつくる経営者の存在と言動が重要であると考える。


共感の渦は、やがて炎上の渦へ

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また、上記打ち手を裏付ける、いわば失敗事例をここにまとめておきたい。失敗...とはいえ、ここから立て直すチャンスでもあるし、一概に失敗とは言いたくはないが、自戒を込めてかかせて欲しい。

近年、サステナビリティへのコミットメントを立てたブランドによるコンテキストマネジメントの失敗事例は後を絶たない。

Allbirdsと同様に注目を集めた「Everlane」はその姿勢やビジネスモデルへの顧客からの共感の渦の中にいたが、瞬く間に炎上の渦に落ちていった。それは、会社が表明している価値観と自分たちの扱われ方が合致していないということで、従業員から不満が頻出し、それが明るみに出たとき、消費者やメディアから一斉に非難を浴びることとなった。


さらに、国内でいえば、「アースミュージック&エコロジー」を展開するストライプインターナショナルの元代表取締役によるセクシュアル・ハラスメントも印象深いものとなった。自社ブランドを「エシカルファッション」とし、オーガニックコットンや廃棄物削減などのアクションを打ち出しており、サステナビリティや倫理に関する姿勢を見せていたのにもかかわらず、経営者自身の言動により大きく社内外からの批判を受けた

今や、アパレルブランド・企業は、経営者と従業員がいかにしてVISIONを掲げ描きたい未来を描き、顧客にフォローしてもらうのか、という時代からは大きく変わった。

「従業員と顧客」こそが、その企業・経営者の目指す未来と言動やその姿勢を見つめ、そこに大きく期待をしている。ゆえに、企業、そして経営者は「従業員と顧客」に対していかにしてそのコンテキストを浸透させ、それを基盤として関係構築をしていくのかが、今後重要になるだろう。


これからの経営者の役割とは

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組織経営において事業の持続可能性を捉えたときに、フロントラインのマネージャーは新たなビジネスや事業展開へと果敢にチャレンジし、ミドル・マネージャーはそれが実現できるように戦略をはじめ組織内調整をはじめとした実現に向けたサポートをする。そして、さらに経営者はマネージャーにできうる限り権限委譲し、自由を与え、向かうべき先への共通の価値観を構築し、文化として根付かせていくことが重要であると考える。

組織経営において、マネージャーの行動は大きく組織能力を加速・強化させる鍵となるため、経営者はいかにしてマネージャーの行動一つ一つを、制限をかけることなく「コンテキスト(場の匂い)」によって個人の行動を変化させるかが、ここにおいてポイントとなるだろう。

同じ人間であってもその「コンテキスト」によって誘発される行動は大きく異なることは、ここまでの事例から見ても、私たちは既に知っている。そして、それら誘発された意思決定と行動により、そのコンテキストは従業員のみならず、顧客へも浸透していくことも理解した。よって、これらを踏まえ、私の考える経営者の役割とは、「企業のコンテキストを形成し、文化として根付かせること」にあると考える。


改めて。私がこれから立ち上げる「インクルーシブファッション」の事業SOLIT,Inc.は、企業として、私自身経営者として、実現したい社会や未来をただ掲げるだけでなく、いかにして協力してくれている仲間たちやこれから顧客・参加者となる方々に向けて質実剛健であるか。そして掲げる価値観に対して言動が伴っているかを常に、真摯に確認・実行していきたいと思った。

また、従業員のみならず関わる全ての人たちの行動が、より真に私たちの実現したい社会にむけたものが誘発されるよう、経営者としてコンテキストを形成・構築していきたいと思う。


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