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【妄想の種】不思議の入り口

仕事を終えて、同僚と歩きながら駅へ向かっていた。
今日はノー残業デー、18時になると社員もパートも皆一斉に仕事を終えて退社し、家路を急ぐ。

その日はどこか生暖かい風の吹く春の陽気で、そんな陽気に誘われたのか、普段は見ない虫たちも飛び交っていた。
目の前を飛ぶその虫たちを払いながら同僚と他愛ない世間話をし、駅へ向かう。

送迎なのか、駅前のロータリーには自家用車や社名ロゴの入った車が列を作り、駅から出てくる人を待っていたり、またはどこかの事務所か工場か、従業員を何人か乗せて来たりしているようだった。

その駅のロータリーをぐるりと半周して駅舎へ向かっていると、ふと駅前ロータリーに立つ時計が点滅していることに気付く。
同僚も「電気、切れかかっていますね」と時計を見上げて口にした。

見上げた時計はいつもの時間。電車が来るまで、あと7分だーー。


おはようございます! 水崎りんです。
以上、何かの導入文のようですが水崎の昨日の日記です。すみません。

最初に「あなたは同僚と駅へ向かっていた」と書くか、「私は同僚と駅へ向かっていた」と書くか悩んだのですが、あえて一人称を抜くことにしました。

これで「私」という一人称が書き手である水崎を示すのか、読者視点になるのか、境界が曖昧になりますしね。
普段の【妄想の種】が私、水崎の戯言からスタートすることが多いので、今回はあえてこのスタイルで。


さて、冒頭の日記ですが、仮に何かのお話の導入だと仮定した場合、あなたはどう感じたでしょうか?

「よくある日常の光景だな」
「不穏な空気だな、何か起きそうだな」
といったものの他、ただ読み進めただけだったり、もっと別の感想の方もいらっしゃるかもしれません。
どんな読み方でも、読んでいただけると嬉しいのですが……お話に少し、続きがあります。

そう、私(水崎)はこれらの情景を見ながら駅へやってきて、『これ、創作とかTRPGとかだとヤベェやつじゃん』って思っちゃったんです。


水崎「ねえねえ、お姉ちゃん(※同僚)! これが探索シーンだったら、あのチカチカしてる時計とか、調査対象だと思う?」
同僚「……時計が高すぎて調べられませんよ」
水崎「でも怪しいよね? 切れかけの時計」
同僚「そうですねー……。これでいつもいるはずの通行人とかいなくて、駅が無人だったら『あっこれなんかヤバいとこ来ちゃったな』とは思います」
水崎「む……なるほどぉ」


なるほどぉ。です。怪しい場所はたくさんあるけど、他にも人がいるから落ち着いて通常行動を行う。

まぁ、日常生活ですし普通に考えたらそりゃそうでしょうってことなんですが。
探索慣れしているお姉さんが一緒なので一般人な私は挙動不審になっちゃうけど、お姉さんの言うこと聞いてたら解決(脱出?)できそうな気がします。


ちなみに、『普段見ない虫』はビワコムシです。TRPGだと、「よく見る」とか、「知識系の技能で知る」とか、あるいは『地元民ならよく知ること』として、「アイデアなどで代用したい」とゲームキーパーと交渉してもいいかもしれません。

いずれにせよ、ビワコムシは、オオユスリカという1cmくらいの大きな蚊みたいな虫の俗称です。苦手な方は検索しないことをオススメしますが、滋賀県内、特に琵琶湖岸周辺でよく大量発生する気持ち悪い虫です。

この虫は、琵琶湖岸がメインで本来私の職場や自宅などの活動範囲地域には出てきません。稀に大量発生しますが、それでも10年に1回とか、もっと低い頻度。大量発生して気持ち悪い以外は害虫ではないのですが、やっぱり大量発生はね、嫌ですよね。

シナリオを作るつもりではないのでテキストには入れませんでしたが、伏線(?)がありまして、この虫、昼間にも一度換気しようとした窓に張り付いてて目撃していたのです。
珍しいなと思ったものの、大量発生と呼ぶほどは張り付いてなかったのでそっとしておいたのですが……まさか帰宅途中であんなに飛んでいるとは。

自宅近辺では飛んでいなかったのだけが救いですが、湖岸はすごいことになってるんじゃないかしら。


あれが『探索シーン』だったとき、私はどう行動すべきだったのでしょう。
虫について調べるべき? 虫を捕まえるべき? それとも虫を排除すべき?
電気の切れかけた時計を確認するには?
仮に無人駅だったとして、送迎の車が残されていたらボンネットに失礼して高さ稼ごうとした?

ないでしょうねえ……。


結局、そんな妄想をしながら駅に向かって、何事もなく電車に乗り、車内で別の同僚に「あっ、お疲れ様でーす」とにこにこ愛想の良い笑顔をもらい、電車を降りるときも「じゃっ! お先失礼します!」と挨拶され颯爽と去っていく背中を見送りました。

実に平和でした。


もしも、今ここで電車が事故を起こしたら?
もしも、交差点で車が突っ込んできたら?
もしも、本当に誰もいない無人駅で予定の時間に到着した電車が、普段は満員電車なのにその日だけ無人だったら……?

私ならどうするだろうなぁ、と満員電車で押し潰されながらぼんやり考えていた昨夜。

怪異に慣れてない一般人の反応、怪異に慣れすぎている探索者の反応、そういうこと考えながら「普通の街」歩くのも面白いなーと思った出来事でした。

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