ぬるっと入国、そして観劇(2日目)
エミレーツ航空、22:30成田発の飛行機、満席ではないか?
隣は空席で、横になれるかも〜なんて、甘く見ていた。
出国手続きのときも思ったけれど、こんなに、ポーン、と海外に行けるのに、コロナで「行っちゃダメ!」という強迫観念のようなものを2年かけてじわーっと育ててしまったのか、この気軽さをすっかり忘れていた。
ましてや、日本のパスポートは幸い、まだ、かろうじて、どうにか、効力が強い。
多くの国でビザなしで入国できるのだから。
それなのに、得体の知れない(知れなかった、と言うべきか)ウイルスのせいで、いつ行き来ができるとも分からないまま、なんとなくぼんやり「今いけるかな」と思ったけれど、本当は、いつでも行けたのだ。と思った。
なんというか、語弊があるかも知れないけれど、ウイルスの感染を助長してはならないが、コロナ禍の世界と、コロナ禍ではない世界とのパラレルワールドが、やっと交わり、その重なりの中心に、立っているような感覚があった。
浮かれぽんちのまま飛行機に乗ったが、その浮かれもなかなか抜けない。飛行機の揺れで吐いた一人旅のスタートを思い出しながら、人生は伏線回収だと言っていた知人の言葉を反芻し、酔わないように寝まくる機内。食欲より圧倒的に睡眠欲が勝つのは、どこだろうと変わらない。
最終目的地のロンドン、ヒースロー空港に到着。
途中、ヒースロー空港から宿泊先の宿までのアクセスをまったく考えていなかったことに気づく。
ロンドンに着いたら泣いちゃうかも、とか思っていたけど、感極まっている暇はなかった。
案の定、ヒースロー空港内で迷子になり、Uberでマッチしたドライバーさんと落ちあえず、ちょっと割高のヒースローエクスプレスを使うことに。
空港内で、20キロ近いキャリーケースを転がして汗だくになる。マイナス1000点。
結果、パディントン駅まで出て、そこで初めて使うライドシェアアプリでドライバーさんを呼ぶ。やっと落ち着いて座れたときの安堵感たるや。
車窓を見ながら、都会だなーと何のひねりもない感想をいだく。SIMカードがあるからライドシェアアプリを使えるけれど(アプリ使用時には現地の電話番号が必要)SIMがあるといよいよ日本と変わらない。
言語の違いはあるけれど、なんていうか、冒険をしに異国へ飛び出す!という威勢より、乗り継ぎ乗り継ぎでぬるーっと、日本の延長線上に来たような感覚。
いいのか悪いのか。
今回は冒険より、「再会と癒し」がテーマなので(今決めた)いかにストレス無く過ごすかを大事にしたいのだけれど、とはいえやっぱり異国のハラハラドキドキ感も欲しい、などと無い物ねだり。
ロンドンは曇りが多い印象だけれど、今日は天気がいい。夜は念願の「Arcola Theater」で観劇。
16:00ごろ宿につき、速攻シャワーを浴びて街中へ。
歩きながら、気づく。一人旅の自分ルール。
女ひとりの旅は、危険がいっぱい。
と、思っておいて損はない。
だから、異国に行くとだいたい大股で、早歩きになる。
そして気付いたら不貞腐れたような顔をしていることが多い。
スマホをいじりながら立ち止まったり、カメラを構えてあれこれ画角を調整したり……は、しない。
これらは「わたしは旅行客です!」と宣言しているような気がして、よく分からない声とかかけられるのが面倒で、回避したいゆえの振る舞い。
まあ、東京とか道がよく分からないところでは、観光客で無くてもスマホを見ながら立ち止まりまくるのだけれど。
とはいえ、ここは日本じゃない。
だから一層「このへんは庭ですけど何か?」みたいな気持ちで歩くと、余計な絡みを知らず知らず遠ざけられているような気がする。
そのため写真が少なくなっちゃうのが、たまにきずなのだけれど。
夜。
ずっと行ってみたかった「Arcola Theater」へ。
たしかにちょっと下町っぽいエリアの、裏側にひっそり立っている。
カフェには観劇する人、カフェのスタッフに会いに来たような人、劇場関係者、おそらく役者など創作している人たちなどが集まってくる。
たまたまわたしが訪れた日は「Apologize」という作品を上演していた。
なんと、慰安婦問題が題材の作品だった。
作品というより劇場そのものを観に行ったから、あまり期待せずチケットを取ったけれど、内容がヨーロッパ諸国の歴史的なテーマよりはずっと身近だったのもあって、想定以上に観入った。
ステージはコの字型のスタジオのような場所で、お客さん同士も知り合いが多そうだった。
劇場はというと、煉瓦造りであちこちに手作り感のある、いい意味での垢抜けなさが残っていた。エネルギーの話をあまり十分に聞けなかったから(スタッフが切れ目なくお客さん対応していた)明日もう一回足を運んでみようかなと、思っている。
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