Listening for Action vol.5: 悲しみは乗り越えるものではなく、共に歩むもの
蒸し蒸しとした京都の夏が始まった。
今日から鉾建てが始まる。浴衣を着てのそぞろ歩き、独特のお囃子の音、お気に入りの小道、伝統を感じる京都らしい町家を眺め、食べられないチマキ、突然の夕立に右往左往したこと・・・どれもが胸躍る思い出。
子どもの頃からの記憶が幾重にも重なる祇園祭が、クライマックスに向けてどんどん加速して動き出す。
7月いっぱいを通して楽しめるこのお祭りは、平安時代に流行った疫病退治がきっかけ始まり、異様な蒸し暑さを誇る夏の京都に多くの観光客を呼び込むイベントに発展していきました。
心弾む一方で、悲しい出来事がありました。
直接言葉を交わしたことはないけれど、お顔も名前も声も知っている方を失ってしまいました。
私でさえも悲しく、心寂しく思う出来事だったので、身近な方々にとっては想像できないほどの悲しみだと思います。
だけど、誰もに絶対に「死」はやってきます。
絶対・・と言えることが少ない世の中だけど、自分にもそして自分が大切に思う人にも100%必ずその日はやってくるのです。
仕事場ではたくさんの「死」を目にしてきました。
どんなに覚悟をしていても後悔のない死はない。見送る側にも見送られる側にとっても・・・。
このことも絶対と言えることかも・・・。
偶然にも今週の朝活では”死別の悲しみ”に関するTED Talkを聞きました。
もしかしたら大切な人を亡くした誰かに「そろそろ前に進もう!!」
そんなことを言ったかもしれない。
その一言は、大切な人を亡くした人にとっては一番聴きたくないセリフだった。そう言われれば、私だってそうだった。
大切な人を亡くした経験のある人にも、まだそんな経験をしたことのない人にも聞いてほしいお話をシェアします。
今日のTED Talk
簡単なあらすじ
作家でもありポッドキャスターでもあるノラ・マキナリーさんにとっての2014年は大きな節目になる年だった・・というお話から始まります。
たった2ヶ月ほどの間に、自身の流産、父親の死、そしてステージ4のガンで3年間の闘病生活を送られたご主人の死を経験されました。
そんなことを周囲に話すと、相手は決まって言葉を詰まらせて「私は想像できない・・・」と反応されるけれど、できるはずだしするべきだ・・・と。
この順序や速さではないにしても。
そして決まって人は、「悲しみを乗り越えて前に進め・・」とアドバイスをするけれど、そんなの余計なお世話でありがた迷惑なこと。
それは、あなたがその立場になれば分かること。
死や死別について語るのはちょっと扱いにくいことなので、ノラさんはHot Young Widows Clubを作り、似たような経験をした人を引き合わせ、周囲の人が聞く覚悟のできていない内容をお互いに語りあえる活動をされています。
死によって存在していた誰かの存在を消すことはできないと、語りにくいことも軽快なテンポで多くの笑いを引き出しながら語られます。
要点&感想
死別の悲しみは恋や出産やTVドラマの”THE FIRE"のようなもので実際に経験しないと理解できない。死別の悲しみは致命的ではないけれど、そう思えてしまうもの。
死別の悲しみは、悲しいと同時に幸せを感じたり、悔やんだり、誰かを愛することも出来る "multitasking emotion" である。
運がよければまた愛を見つけるかもしれない。でもそれは、悲しみを忘れて前に進んでいるのではない。
悲しみのどん底にいるときに、誰かに出会いまた恋に落ちることができるなんて、なんて素敵なことだろう。だからと言って、悲しい記憶が消えるわけでもなく、暫くはパラレルワールドのように2つの並行する筋書きが存在する。けれど、死別による悲しみと新しい出会いによる喜びは、相反する力ではないことに気付き、互いに絡み合っているものだとわかる時が来る。すべての経験が、すべての時間が私を作っている・・・それが実感できるんだろうな・・・。
何が起きるかなんてわからない。今は喪中だから・・・って自分を制限する必要はない。常に100%で生きていこう・・・ってことだろうな。
病院で働いていると時々、「骨にする時に知らせてください。この人を親(パートナー、血縁者、家族など)と思ってはいません」というセリフを耳にする。悲しいけれど、そういう関係は存在している。そういう関係に至ってしまった過程にもよるだろうけれど、どこかで変えることはできないものなんだろうか? 多分、すでに十分すぎるほどそれを試み、撃沈した末の関係なのかもしれない。死別によって、その苦しみを終わらせることができるのだろうか?
誰もが良好な関係の人に囲まれて、最後の時を迎えるわけではない。そういう関係の時はどうなんだろう? そもそも死別による悲しみは生じないのだろうか?
できる限りのことをその時は十分にしたつもりでも、後悔は出てくる。だから、できることはしてあげてほしい・・・と思う。それが「骨にする時は知らせてください」・・なのだろうか?
どんな事情があるにせよ、それでもきっと、何かわからないけど絶対に悲しみが後からゆっくりと押し寄せてくるのではないのだろうか?
死別の経験は嬉しい経験と同じくらい私たちに影響し、形作っている。そしてそれは同じくらい永遠に。多分、関わった人との関係はちょっとやそっとでは、いい意味でも悪い意味でも消えないのだろう。それなら、とことん付き合って、とことん向き合って、その思いでも経験も一緒に前に進めたらいいな・・・と思う。
あ〜楽しかった!!そう言って、自分の命を終えることができるのが誰もが理想だと思う。生まれる時も、最後の眠りにつく時も寂しいけれどひとり。持てるだけの素敵な思い出を持って旅立てたら、見送る人も慰められるのかもしれない。
私と向き合う、自分と向き合うことを考えたいときにおすすめのTED Talkも是非聞いてみてください。
最後になったけれど・・・
安倍元首相のご冥福をお祈りしています。
今日はこの辺で。
素敵な1日を!!
Have a nice day!!
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