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改めて、今。『アルスラーン戦記』を語る。その4〜アルスラーンとダリューンの「主従愛」はシリーズ完結でさらに感極まる!【前編】

2017年にアルスラーン戦記シリーズは「完結」しました。
最終巻は『天涯無限』。

https://amzn.asia/d/8OpKvDu

1部7巻
2部9巻・・・

え!?
2部の方が長いんですねーー。と今更感じてますが。

最終巻16巻もそうですが、最大の悲劇が訪れた15巻あたりからもう読者のネガティブな意見がどんどん溢れ出て、16巻は「フルボッコ」状態。
私も最終巻出たから読んでみようかと思いましたが、まあ、至る所で目にする「非難の嵐」。
こんなにまでののしるぅーーー!?と思えるほど。

いろんな非難の声は上がったし、
理不尽さであったり
期待を裏切られた感な意見もたくさん目にしました。

(それらになんだかがっかりして、、
7年もの間最終巻まで読む気がしなかった。
でも今ようやく向き合う気になれたのですけどね)

一つだけ看過し得ぬ声があって、、
それが

「アルスラーンは最後にダリューンの墓に入りたいだなんて、なんてわがままなんだ!16翼将と一緒じゃないと王者じゃないでしょ」

みたいな声。

これに対しては、悪いんですけど、、


「え。アルスラーンがダリューンと一緒の墓に入りたいって、ふつーじゃない?」

って秒でひらめきました(笑。

というわけで、とうとうと「アルスラーンとダリューンの感極まれり!な主従愛について」アウトプットしたいと思います。

>アルスラーンは天性の「愛され」リーダーキャラ

この画像、、ちょっとどこで拾ってきたのか忘れてしまい、大変申し訳ないがあえてアップさせていただく。

上記の画像は、荒川版アニメ『アルスラーン戦記』の第一期エンディングの一コマです。
私この映像みて、、

「あ。あのアルスラーンだ!わー、安心」

って思ったんですよね。

いやあ、可愛いです。アルスラーン殿下。
安心感半端ない。癒し・・というより「安心感」です。
愛らしさから溢れ出る、ホッとする感覚。

そう。
アルスラーン殿下は「とても愛らしい」人です。男性であっても「女性性」が高いタイプです。
なんと言っても「人たらし・動物たらし」です。

多くの人が結局アルスラーンの元にひざまづきますし、「彼のために俺が・私がしてあげなきゃ!」て思わせるだけの「ギバー精神も高い」です。
それは人のみならず「生き物」についてもそうで、鷹のアズライールなどは、アルスラーンしょっちゅうとまりにくるし、アルスラーン陣営を助けてさえしまう。

これはまだ初陣前のアルスラーンなので、おっとり感と可愛い感がましましの頃。
https://www.b-ch.com/titles/4531/001

アルスラーンは生きとし生けるもの全てを魅了してしまい、自然と「膝をつかせてしまう」・・・そんな奇跡な魂を持った王者です。

だからラクダがアルスラーンにフムフム近寄ってくるのは、当然のことで、それを斜め左手に、「殿下っ!!(危のうございますよっ&駱駝め殿下に対しなんて無礼なっ)」ってオドオドするダリューン、「まあまあ」と諭すナルサス、黙って見守るエラム、、という構図は、アルスラーンを取り巻くコミュニティとして常套の様子です。

元々原作でも、アルスラーンは「頼りない」「優しすぎ」です。だけどこの評価は1900年代ならではのそれです。
2000年代に入り、2024年の今。時代はどちらかといえば「男性性」よりも「女性性」優位の時代に入ってます。
だからアルスラーンのような男の子は多分かつてより多くなっているだろうし、男性の中でも女性性の高い人はかなり増えているはず。
となれば「頼りない」ってことはなくて、女性性優位な男性だからこそ「新たなリーダー」像のはしりとなっており、実際ビジネス書界隈では、

「優秀なリーダーは何もしない」

というコンテンツの本が発刊され、意外に売れていたりもするのです。

アルスラーンはその意味でとても「優秀」です。
彼は頼りないのかもしれないし、武はダリューンやギーヴ・ファランギースをはじめとした諸将に及ばない。知もナルサスには及びません。
でもたった一つだけとても優秀な才能を持ってます。
それがまさしく

・人に頼れる力

です。

これが次世代の「何もしないリーダー」です。
実際16翼将は、各がいろんな個性を持っており、いろんな「得意」を持っておりそれらを「束ねているだけ」で、アルスラーンは統治を進められるし戦争だってできちゃう。
アルスラーンは「おっとりとして、良い人格の、止まり木」という魅力をただ放つだけで、勝手に「仕事はアウトソーシング状態」になっているので(羨ましいのう!)、その意味でもアルスラーンの才能は令和の時代にめちゃくちゃ要りようなリーダー資質。

だからヒルメスやアンドラゴラスみたいに「自分が頑張る!!」「自分がカリスマ的になってないと!」みたいな必要性ってないんですよ。
その意味でも、ヒルメスやアンドラゴラスは王権争いから敗れてしまうのです。

”王”という生き方をしていくためには、一人で力はって頑張ってはダメなのです。
「皆の力を集めて生かす」能力・・・いや「このかたのために何かしたい!」と思わせてしまう「守ってあげたいを他者から引き出させる」スキルがないと「王」は本来務まらない。
その意味では、「本当の王者の資質」をアルスラーンは持っていたわけなのです。
そこが彼のすごい才能(ギフト)です。

だからあれだけ魅力的なキャラクターたちが、物語の中でも立ってくるわけなのですよね。
(・・てそんなキャラをサクッと作っちゃう田中先生はやっぱすごい)

アルスラーンは本当に清らかで愛らしい。そこがニューリーダー像として際立つ。
アルスラーンDVDのジャケットより


アルスラーンDVD完全収録版の荒川先生描き下ろしイラスト。アルスラーンの柔和な表情がとてもいい。そしてクセとアクの強い大人どもがwアルスラーンのマントの内にまもられているような。
この「安心感をもたらす才能」がアルスラーンにはあると思う。ナルサスがいうように「アルスラーンには”暗さ”がない」。


 

>「守りたい」男の性(さが)を私欲なく一心に引き受けるダリューン

「何もしないリーダー」アルスラーンは、王として「守って差し上げたい」を引き出す能力・あり方が何倍にも長けています。
その心情をくすぐりまくり、アルスラーンに完全に心持ってかれている人がいます。
それが「ダリューン」です。

彼はとても真面目な人間ですから、当初は「王家への忠誠」を真面目くさく持っていました。
信頼できる身内ヴァフリーズからは「アルスラーン個人への忠誠を誓ってほしい」とお願いされます。
その流れの中で、彼は”とりあえず”殿下を守る・・・動きをするんですが、カーラーンの裏切りなどを知って、より王家の生き残りになりうるアルスラーンに「同情」するようになったのでしょう。

自分の14歳の頃を比べてみても、重積を担っている少年を目の当たりにし、手を差し伸べてあげたいな・・と感じていたかもしれません。それこそ「弟」みたいな感覚で。

しかし、王都奪還への歩みをどんどん進めていく中で、アルスラーンの天涯孤独で重責が重なる運命を共有し、彼のそばで彼の一挙手一投足を眺めていくうちに、ダリューンは・・・


「俺自身が殿下個人に忠誠を尽くす!お守りする!」

 
という何が何でも感!あふれる強固な主従愛に変わっていきます。

原作でもその「愛」は随所に伝わってきますよね。
ザンデに対して突進し、ラジェンドラ王子に対して堂々と睨みをきかせたり、アルスラーンを悪くいう人間に対しては「怒り」が容赦なく現れます。

アルスラーン戦記7巻より。ダリューンはとにかくラジェンドラにはいつも怒りの睨みをきかせています。時々愛馬・黒影号さえもダリューンと一緒に睨んでます(笑。


アルスラーン戦記19巻より。ジムサがちょっと拙いパルス語で表現する羽目になっただけだけど、もう剣に手をかけているダリューン(笑。

 
そして荒川版コミックやアニメで、その心情や感情は否応なく発散されています。

自身の性格も相まってかダリューンはとにかく「私欲なく」アルスラーンを「守りたい」という一心にかられています。
忠誠心以上に「お守りするんだ!」という心情はどんどん溢れ出てくる感覚・・伝わってきますよね。

ナルサスが「殿下がヒルメスに王位を譲りたいと言ったら、お前はアルスラーンを見捨てヒルメスにつくか?」てなこと聞けば、

「ありえない」

とバッサリ切り返しますよね。それを聞いてナルサスはすごくホッとしている。ダリューンだけは本当に素直な心で「アルスラーンのそばにいたい。支えたい。守りたい」という愛で満たされているわけなので、まさに「アルスラーンにとっても絶対的な精神的支柱」を担っている役回りでもあるわけです。

男性はその生き物としての遺伝子レベルからなのか「お守りしたい」という気持ちが強いんだそうです。
だから「守るものがあると強くなれる」みたいな状態になりやすいんだそうで・・・。
その意味でも家庭を持つことがよしとされている・・・みたいなのですが、男性陣いかがでしょう(^^?

ダリューンの場合は標的は完全に「アルスラーン」です。
何があってもお守りするんだ!どんなことでもアルスラーンの味方!という素直な主従愛が巻を追うごとに溢れていきます。

 
>アニメ版ではダリューンが殿下に「堕ちる」シーンが露骨に描かれるw


ちょっと横道それますが、、
私はこの心情が決定的になった瞬間の演出で、荒川版アニメの「12話〜騎士の忠義」が白眉だな!と思いました。

原作ともコミックとも違う演出になっているのですが・・・。。

ペシャワール城塞に向かうにあたって散り散りになったアルスラーン一行。ペシャワールを目の前にして、ダリューンとファランギースにザンデが2度目の襲撃をしてきます。
魔道者の横槍で、ダリューンがザンデとの戦いで不利になった時、アルスラーンがダリューンを助けにきます。
結果、アルスラーン・エラム・ギーヴとダリューン・ファランギースは合流する形になるのですが、助けてもらった礼を述べるダリューンにアルスラーンは・・

「私はいつもダリューンに助けてもらってるし守ってもらってるから、私がおまえを助けてもいいじゃないか」

みたいなセリフを言うんですよね。

そのセリフを聞いたダリューンの表情が、もうなんとも言えぬ感じで・・

いや、、、、完全に「ハート撃ち抜かれた!」って印象を、見るものに持たせる作画だったんです。

そして「正統だとか血統だとかそんなんじゃなくて、俺はこの方のために剣をふるう!」とめちゃくちゃ決意してその回が終わるのです。

あの演出はいいなーって思いました。

もうほんとうに・・

「殿下がダリューンの忠誠愛トリガー引いた!」
「あ。。。完全に殿下に堕ちた」

って感したのですよね(笑。
原作を読んでなくても、いかにダリューンとアルスラーンの関係性が強固なのかがわかる見せ方になってます。

そんな演出をアニメスタッフにさせてしまうほど、ダリューンというキャラクターは「男の”守りたい”欲を惜しげもなく引き受けるキャラ」としてアルスラーンの並いる登場人物の中で、かなり際立っているとも言えましょう。


・・・ちょっと長くなったので、後半に続きます。
 


 



 

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