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裁判に学ぶ-会社における男女の格差

こんにちは。人事コンサルタントののあいたかです。
今回はAGC子会社で起こった訴訟を取り上げてみました。

記事では詳細が不明瞭ながら、男女雇用機会均等法に照らして間接差別があったとして企業側に378万円の支払い命令が下りました。
問題は一般職と総合職の住宅補助に最大24倍の格差があり、総合職は実質男性のみだったという点のようです。

間接差別とは?

「間接差別」とは、 ① 性別以外の事由を要件とする措置であって、 ②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、 ③合理的な理由がないときに講ずること をいいます。 厚生労働省令で定める3つの措置については、 合理的な理由がない場合間接差別として禁止されます

厚労省「男女雇用機会均等法のあらまし」より

男女雇用機会均等法では、性別で「総合職」と「一般職」に分けることを違法としています。合理的理由が認められない限り性別による処遇の差異は禁止です、ということですね。

判決では「事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められない」と指摘されています。

男女差別が認定された要点整理

ではなぜ間接差別があったとされたのか。5つの項目を検証したいと思います。

1.一般職と総合職の男女比率

一般職 5名 女性のみ
総合職 ??名 訴訟後に入社した女性1名を除いて、全員男性

うーん、たまたまかもしれませんが、内容としては男女差別があるといわれる余地はありますね。

2.転勤の実績

転勤の実績
原告が入社した2008年から2020年1月までの(おそらくのべ)34人中転勤した総合職は11名

この実績に関しては業務や会社方針などの都合もある為むずかしいですね。会社としては積極的に総合職全員を転勤させる、ということも無いでしょうし、その時々の事情もあることではないでしょうか。

3.「女性会議」

女性しかいない一般職の会議は「女性会議」「女性ミーティング」と呼称されていた

これは差別的なカルチャーがあると判断されても致し方ないと思います。

4.女性の総合職採用

原告の提訴から4か月後の2020年11月に女性の総合職が1名採用されたとのこと。ただし転勤なしという条件。またこの女性の総合職を採用する以前に、原告への総合職への転換の話は一切なかった。(転換制度そのものが無かった)

これが事実であれば、あわてて採用した感が否めないことと、転勤無しという条件から家賃補助の待遇差異に矛盾が生じてしまっています。

5.原告の業務

原告は総合職だった男性の管理室長が突然退職した後、後任着任までの4ヵ月この任務を代行していたこと、また着任後も、給与計算等の室長の業務を11年間行っていた

これは原告が総合職と同等の業務を実質行っていたエビデンスとなり得るかは詳細が不明なので疑問です。

378万円の是非

一般職と総合職の金額差異が最大24倍、一般職の手当が3,000円、原告が総合職の職務を一部代行していた期間が11年とすると、単純計算で1,000万円近い金額になりますが、裁判所の示した金額は約1/3でした。

記事の内容からの推測ですが、会社側に男女の処遇に関する差別的な扱いがあったとされても致し方ないと思います。男尊女卑の古い体質だったのか、そうではなくとも制度設計や運用がupdateされていなかったのだろうと考えられ、会社側にも非があったといわざるを得ません。このあたりは今後改善の余地がありそうです。

ただ、私は原告側にも問題はあったのだろうと思います。理由は3点①代行期間が4ヵ月だったことから総合職と同等の業務とは断言できない、②その後は前室長の「一部」業務を行っていたことからも総合職と同等の業務とは断言できない、③11年間もこの条件で勤務することを原告が受け入れていた。

同社が定義する総合職の職務内容に原告が行っていた業務が合致していたか否か判断ができませんが、11年間このような思いで仕事を続けることは辛かったのではないでしょうか。同社にキャリアコンサルタントやカウンセリングのサポートがあれば、ここまでの話にならずに済んだかもしれません。




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