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【短編小説】除雪戦争


「「「だれが1番か勝負だ!!」」」
雪国で繰り広げられる、子供たちの戦い

周りの雪かきをしている大人たちは、子供3人を優しい目で見ていた。
「私、冬真だけには負けないからね!」
「おれだって、雪花にも白翔にも負けないからな!」
「そうだね。僕も負けてられないよ。」
小学3年生だろうか、3人の子供が何かを競っている。
「じゃあ、3人にはあの場所の雪かきをお願いするよ。くれぐれも、滑らないように気をつけてね。」
親と思われる男性に言われて、3人は子供用のスノーダンプを持って行った。
「今から一時間、おれたちは父ちゃんたちのために雪かきをします!だけどな、これはお前らとの勝負だ!絶対負けないからな!」
「のぞむところよ!」
「怪我はしたくないけど、その勝負受けて立つよ。」
冬真は名前に似合わず愚直で熱血系、力任せに雪かきを進めていく。
雪花(ゆきは)も名前に似合わず活発的だが、冬真と比べて乗せる雪を減らしている。
白翔(はくと)はというと、冷静に計算して乗せる雪の量を少なめにして回数を多めにしている。
「うおー!!まだまだやれる!おれはもっとたくさん乗せるぞ!」
「あんまり乗せると転ぶよ冬真。」
「大丈夫!おれバランス力だけはピカイチだから!」
「そういうことじゃないんだけどな…」
白翔はそう呟いて、止めてた雪かきを再開させた。
一方雪花はというと、黙々と雪かきをしていた。
『ここの雪は重いから気をつけてねって言われたな。だから少なめでやってるけど、冬真はなんであんなに乗せてるんだろう?危ないのになぁ…』
表面は活発的だが、心の内ではたくさん考えて行動している雪花

30分後

「ふー!ちょっと疲れた!」
「冬真、この間体力自慢してなかった?」
「この間はこの間!今日はいつもよりたくさん動いてるからしかたないんだよ!」
「休憩する?」
少し疲れて服をバサバサさせている冬真に、雪花と白翔は余裕そうに返事をしている。
「てか、なんで2人はそんなに余裕そうなんだよ!」
そう言われて返したのは「計算したから」だった。
「私、最初にここの雪は重いよって言われたから、少なめにして運んでたの。」
「僕もだね。でも、雪花よりは少なくして運ぶ回数を増やしてるよ。」
なんでそれだけで?と言いたそうな顔をしている冬真に、白翔はこう言った。
「重いと遅くなるし力も入れるけど、軽いと速くて力をそんなに入れなくても運べるからね。考えながら行動するのは大事だよ。」
そう言われて悔しかったのか、冬真はすぐに雪かきを再開した。
「休憩しない!!」と言いながら
雪花と白翔は、「冬真らしいね。」と言い合っていた。

少しすると、冬真が運び終えたスノーダンプを手放して、雪の上に寝転がってしまった。
「もーむり!つかれた!!」
「たしかに、私も疲れてきたかも。」
「もう少しで一時間だろうけど、僕も疲れてきたな…」
3人して疲れたと言い始めた。
「でも、負けたくないから時間まであきらめないよ!」
「僕も諦めない。冬真はどうする?」
少し笑いながら言われたのが嫌だったのか、ガバッと起きてスノーダンプを押し始めた。
「ふふ、素直だなぁ。」
3人はゆっくりにはなったが、雪かきをやっていく。

雪かきを始めて一時間後

『ピピピピ』とタイマーが鳴り、一時間経った合図をした。
「おわりー!!」
「疲れちゃった…」
「終わったし休もうよ」
「「さんせい!!」」
3人はスノーダンプを片付けて、バタバタと走って家に入って行った

「んじゃ!誰が1番か決めようぜ!」
と意気込む冬真
「もう疲れて動けないよー」
コタツに入って少しぐでる雪花
「2人が運んだ量見てなかった…」
まさかの発言をする白翔
三者三様とはこの事だが、白翔の言葉に2人は驚いた
「おれ、お前に任せてたのに…」
「私も」
「……え?」
と、3人が話していると大人たちも戻ってきた
「はー、疲れたなぁ」
「今日の雪はそこそこ重かったな」
雑談しながら戻ってきたところに、冬真は入り込んでいく
「なあ!おれらがどれくらい雪かきできたか見てた!?」
「えぇ?大丈夫かどうかは見てたけど、そこまではなぁ…」
そう返されて、冬真はガッカリしてしまった
「そっかぁ、どうしよう… 」
雪花と白翔はコタツの中でまったりしていて、話を聞いていなかったみたいだ
「なぁ、今日の競走だけどさ…」
少し悲しい気持ちで話しかけたが、2人の様子を見て羨ましくなったのか、冬真もコタツに潜り込んだ
「お前ら見てたらバカらしくなってきた」

疲れた3人はコタツに入って休んだ
結局、誰が1番かは誰にもわからなかった
ただ、手伝う気持ちと行動は、子供ながらに必要と思ったのかもしれない

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