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【セミナーレポート】コミュニケーションから生まれる継続力―LTV向上に資するユーザー体験とは

10月8日、ミラティブは「ミラティブでのユーザー体験と施策事例 ~なぜミラティブを使うとLTVが上がるのか、N1のユーザー体験から理解する1時間~」を開催した。

ミラティブがゲーム運営会社に寄与することを象徴するデータがある。ミラティブのユーザーは、各ゲームタイトルにおけるARPU(Average Revenue Per User、1ユーザーあたりの平均的売上)や30dayRRが向上する傾向が高いのだ。

なぜミラティブを利用すると、プレイヤーの熱量が上がるのか?スマホゲーム運営に携わる方々は、こうしたKPI向上のデータを不思議に感じるかもしれない。そのヒントは、一人ひとりのユーザーがミラティブを通じて体験する感動と、ゲームをプレイする行為の交点にある。

本セミナーでは、410日間まいにち配信を続けたウェルプレイド株式会社・ディレクターのちゃんじろ氏を招き、株式会社ミラティブCCO小川まさみがリアルなユーザー体験を聞いた。ミラティブを活用することでLTVが上がる根拠を、一人のユーザー視点で紐解く。本稿ではその模様をレポートする。

■ゲーム配信を主軸とするコミュニケーション空間という独自のコンセプト

イベントは小川によるミラティブのサービス概要の説明から始まった。

ミラティブは「あつまる、つながる、一緒にあそぶ スマホゲームのおともに」というタグラインを掲げ、ゲームを主軸とするコミュニケーション空間を運営している。ユーザーの主な利用目的は、ゲームを配信しながら、それを視聴するユーザーとコミュニケーションを楽しむことだ。

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ミラティブが目指すコミュニケーション空間は、「友だちの家でゲームをやっている“あの”感覚」という言葉に集約されている。ユーザーが求めるのはコミュニケーションであり、スキルや配信者のカリスマ性は副次的なコンテンツだ。この点が、ゲームプレイを魅せる配信プラットフォームと異なる最大の特徴である。

小川は一つひとつの配信を「部屋のようなもの」と称し、配信を見に行くことはお互いの部屋を行き来することに近いと説明する。友だち同士のような気軽な関係性が、配信をきっかけに構築されていく。

配信ハードルの低さは、ミラティブユーザーの配信者率20%という驚異の数字にも結びついている。他プラットフォームに比べ、視聴だけでなく配信を楽しむユーザーが圧倒的に多い。また、ミラティブは今後さらに配信者数向上につながる施策を打ち出す予定だ。

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運営の特徴は、敷居を高く設定しないこと。ディレクションを含む番組企画も意図的に減らしている。誰もが楽しく配信できる雰囲気づくりを重要視した施策が中心だ。

このポイントは、他プラットフォームとの差別化にもつながっている。ゲームスキルを問わずコミュニケーションを楽しむプラットフォームを目指しつつ、ゲームを主軸に置くサービスであることが、ミラティブの独自性である。

■410日連続配信を支えた、視聴者とのコミュニケーションと関係性

こうしたミラティブの特性をユーザーとして体感し、410日間まいにち配信を続けたのが今回の登壇者、ウェルプレイド株式会社・ディレクターのちゃんじろ氏だ。

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配信を続けられた最大の理由はコミュニケーションの楽しさにあった、と振り返るちゃんじろ氏。配信を続けるうちに自分の配信を楽しみにしてくれる視聴者と関係性が芽生え、ゲームの情報交換を中心とした対話が増えたという。配信はいつしかコミュニケーションの手段となり、友だちと遊ぶために配信する感覚に変化していった。

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さらに、ミラティブのシステムもまいにち配信を楽しむ要因となった。ミラティブには、連続で配信し続ける配信者に「まいにち配信者」の称号を与えるシステムがあり、称号は配信日数に応じてランクアップする。

ちなみに、この「まいにち配信者」の称号は15分間以上の配信を7日続けることで得られるが、以降は「おやすみ権」という制度を利用することもできる。「おやすみ権」は、いわば会社の有給のようなものだ。配信を休む日にはこの「おやすみ権」を利用すれば、「まいにち配信者」の称号が消えることはない。

無理なく配信を継続できるシステムがあることで、モチベーションを維持しながらマイペースに配信することができる。このしくみが、多忙な社会人から学生まで多くの年齢層が配信を楽しみ続けられる要因になっているのだろう。

■ゲームを教え合うカルチャーがコアユーザーを育てる

ちゃんじろ氏はゲーム「どうぶつタワーバトル」をきっかけにミラティブを始めた。同ゲームの配信を視聴者として見ていたところ、その配信者がロジカルに攻略方法を伝える姿に衝撃を受けたという。

配信で知ったノウハウをもとにスキルが向上した成功体験を経て、ちゃんじろ氏は自らも「どうぶつタワーバトル」の配信を始めた。すると、トッププレイヤーがその配信に訪れ、直接アドバイスをくれたのだという。

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真剣にゲームに向き合うプレイヤーに対する、トッププレイヤーたちの純粋な親切心。その熱量を、ちゃんじろ氏は配信を通じて知った。ミラティブ上に生まれたコアなファン・コミュニティに巻き込まれていくことで、ゲームに対するモチベーションはより高まっていった、とちゃんじろ氏は振り返る。

特にミラティブのコミュニケーションの軸となるのが、ゲームの「教え合い」である。ちゃんじろ氏もまた、より経験のあるユーザーに攻略情報を質問することもあれば、逆に視聴者から質問を受けることもあるそうだ。

攻略の疑問点をミラティブで直接プレイヤーに質問して解決できることで、プレイに慣れるまでのゲーム離れを防ぐ効果もある。ライトユーザーがコアユーザーになっていく道筋を、ミラティブ内のプレイヤー同士のコミュニケーションが作っているということだ。

複数人で楽しむコンテンツがあるゲームは、より顕著にコミュニティの結束が強まり、コミュニケーションが活性化する。マルチプレイを楽しむ仲間をミラティブで見つけることで、一人でプレイするよりもより深くゲームを楽しむことができるのだ。

■スキルではなく人が主役の配信だからこそ、芽生える感情と感動

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加えて、ちゃんじろ氏は雑談を楽しむ場としてもミラティブを活用している。例えば最近観た映画の話題など、ゲームとは関係のないトピックについても配信で話すそうだ。あくまで配信を楽しむ動機はゲームだが、そこから関係性を深めるうちに、配信者と視聴者の間には人としての興味や信頼が増していく。

ミラティブをきっかけに知り合った者同士が、他SNSで継続的に親睦を深めるケースも多い。ミラティブ配信では声と映像を通じてリアルタイムのコミュニケーションを楽しめるため、ディレクションされたコンテンツや、タイムラグのあるSNSよりも深く相手を知ることができるのだろう。

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さらに配信は、ゲームに付随して起こるイベントを感動的に演出する側面も持ち合わせる。例えば、大会参加の様子を配信していることで、勝敗の感動を視聴者と分かち合えることがうれしさや喜びを倍増させた、とちゃんじろ氏は語る。

また、ゲーム内で何らかの目標を達成する過程を配信すると、視聴者がそれを応援してくれる。例えば「ランクがXXXに到達するまで配信します」といった企画配信は、視聴者と共に緊張感や努力を分かち合うことができるのだ。勝った瞬間やランクが上がったときは、視聴者の盛り上がりが伝わるのだという。

ゲームを楽しむ時間に視聴者という第三者がいることで、それは相手を意識した時間に変化する。ちゃんじろ氏は、「彼らにかっこいい姿を見せたい」という想いが芽生え、勝負やゲームそのものに対する姿勢も変わったと振り返る。

■飽きてしまっても人気がなくても、配信を待つ友だちがいるから遊び続けられる

ちゃんじろ氏は「どうぶつタワーバトル」だけでなく、配信ではさまざまなゲームタイトルに挑戦している。言い換えれば、これまで熱中してプレイしていたゲームを離れることもあるということだ。これはプレイヤーとして自然な感情の変化だろう。同じゲームをいつまでも楽しみ続けられるプレイヤーはそう多くない。

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しかし、例えばそういったタイミングに「もう〇〇の配信はしないの?」、「最近他のゲームに浮気してますね」などのコメントが視聴者から寄せられると、また元のゲームを配信するモチベーションが生まれるという。

飽きる感情はゲームから離れていくきっかけにつながるが、ミラティブには人とのつながりがある。ちゃんじろ氏は、「配信はゲームの楽しさを思い出させてくれる装置である」と語る。

ゲームは遊ぶことで楽しめるが、そのモチベーションを維持させるものはプレイヤー同士のコミュニケーションであったり、大会などのイベントであったりする。これは、ちゃんじろ氏が携わるウェルプレイドのesports関連事業においても感じるところだそうだ。

そうしたプレイヤーの心理を裏付けるように、ミラティブには近しい人との関係性をモチベーションとする配信者が多い印象がある、とちゃんじろ氏は続ける。視聴者数やフォロワー数を指標とする配信者が多いと、配信プラットフォーム上では人気ゲームタイトルの配信が増える傾向がある。一方で、ミラティブは友だちと遊べることを目的としている配信者が多いため、多様なゲームタイトルの配信が続きやすい。

■課金を促進する情報交換や偶然性に対するポジティブな感情

最後に、スマホゲームをいろどる楽しみの一つである「ガチャ」についてもちゃんじろ氏は触れた。配信で生まれたコミュニティでは、「仲間たちの持つキャラクターやスキンがうらやましい」という感情が芽生えやすいそうだ。

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先ほど挙げたモチベーションを維持させるゲームイベントの一つが、「ガチャ」をはじめとした、偶然性を伴うお楽しみコンテンツである。配信中は頻繁に盛り上がる話題の一つでもあり、視聴者とのコミュニケーションの中で「それ欲しい」という気持ちがわきあがる。

また、期待した結果が出なかった場合でも、配信を通じてガチャをさらに楽しめるようになったとちゃんじろ氏は語る。そのキャラクターを活かしてどう戦っていくか視聴者と相談し合うなど、前向きな受け止め方をするようになった。

こうしたあらゆる要因が、ゲームを楽しみ続ける継続力となる。さらに、遊ぶコンテンツが増えたり、課金を促進したりといったアクションにもつながっていく。ミラティブが生み出すLTV向上という結果は、ゲームを主軸としたコミュニケーション空間という独自のポジションを突き詰めたユーザー体験の蓄積なのである。

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セミナーではこのほか、質疑応答を通じてミラティブ独自のアバター「エモモ」によって生まれるコミュニケーションや、ギフトを贈り合うカルチャーについても話題が上がった。

長期にわたりミラティブ配信者としてゲーム配信を楽しんだ一人のユーザーであるちゃんじろ氏の体験談は、ゲームに対してコミュニケーションが生み出す価値そのものともいえるだろう。今後もゲーム会社と協力しながら、このコミュニケーションの価値を活かした施策を展開していきたいという展望を描き、セミナーは幕を閉じた。

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