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不在者投票

日曜日の七夕都知事選の不在者投票をしてきた。
長く生きてきてこれまで棄権したことは殆どないと思う。
長男を出産した時も病院で不在者投票をした。
普段それほど政治に関心がある訳でもないし、特定のどこかに所属していたり支持したりはしていない。
ただ、女性の参政権は長い歴史の中で先達者達が必死になって勝ち取ってきたものである。その事を考えると棄権するのはもったいないと思う。
何らかの意思表示をする。
黙っている事は「イエス」という事だから。
これでいいです、と言っていると同じ。

その事をわたしは高校生の頃知り合った大学生から教わった。
当時、学生運動はやや下火になりつつも継続していた。
わたしは「クラルテ」という大学生のグループと深夜放送で人気のあった北山修さんも参加した「反戦列車」に乗って8月6日のヒロシマを目指す1人の高校生だった。

広島の駅で機動隊とぶつかったのも、6日がひどい雨だった事も、京都から参加した男性と仲良くなった事も、遠い昔の話だけどハッキリと覚えている。

そういう高校生だったわたしもいつの間にかシニアと呼ばれる年齢になった。
不在者投票を終えて図書館に行き、予約本を受け取る。
椅子に座って水分摂取していたら、わたしよりもだいぶ年上と思われる婦人がやってきた。腰が曲がりシルバーカーを押している。
座ってカバンから取り出したのは何と携帯。
カパッと開き何かを見ている。
そしてもっとゆっくり座って休憩すればいいのに、シルバーカーを頼りに立ち上がった。
そこは児童書の棚の前。
つい、動きを見ていたら宮沢賢治の児童書を迷いなく1冊選びカウンターへと向かって行った。

わたしにもいろいろあって、今こうして市役所で投票して図書館にいる。
わたしよりもだいぶ年上だろう彼女にはどういう人生があったのだろうかと、ふと考えた夏の日の朝だった。

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