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役職定年は怖くないし、辛くもない

1 役職定年が怖い?

50歳を過ぎると「役職定年」が近づいてくるビジネスマンも多いかと思います。「デキる」自覚があるビジネスマンであればあるほど、役職定年はいつか必ず来るのに、つい見て見ぬふりをしてしまいます。

会社によっては、「人生の総棚卸し」と称して、50代前半になると数日間の悪夢の研修を準備し、社員に役職定年を意識させるところもあります。

その研修では、自分の短所などを同期たちから指摘されます。これ自己否定のプロセスであり、プライドの高い人にとっては耐え難い屈辱になります。こうして「自分はもはや賞味期限切れで必要ない人材」ということを思い知らされて、役職をはぎ取られていく心の準備が完了します。

そして、部下たちは自分からどんどん去っていき、「使えないオヤジ」「会社にしがみつく老害」となり、最後に厄介者扱いされるようになります。

なかには定年まで待たずに早期退職していくエリート意識の高い人もいます。しかし、早期退職してもほとんどの人は、今以上に満足する転職先はありません。

役職定年した人は、本当に会社に居場所はないのでしょうか。
会社でやりがいを見つけることはできないのでしょうか。

決してそんなことはありません。
役職定年後でも会社で生きがいを見つけるにはどうすればいいか、考えてみましょう。

2 役職定年の人が辿るステップ

役職定年するビジネスマンは、「拒絶」「絶望」「あきらめ」といったマイナス思考のステップを辿ります。

【拒絶】
会社が「自分を必要としない」現実を拒絶するのは、今までバリバリ活躍していたほどその反動は大きく、「能力は今までと同じなのに、年齢だけで切られるのに納得がいかない」「自分の存在感の低下は、プライドが許さない」と感じるのは当然です。

【絶望】
拒絶がしばらく続くと、モチベーションや生きがいも低下し、会社への信頼感も低下します。その結果、自分の存在感のなさに絶望していきます。

【あきらめ】
絶望の後は、「今、会社を辞めてもどこも雇ってくれない」といった思いから、定年まで肩身を狭くしてでも給与だけはもらって、会社人生を過ごそうと現実を受け入れ流ようになります。

このように役職定年者は、「拒絶」「絶望」「あきらめ」のマイナス思考になり、最終的には嫌々現実を受け入れていくようになります。

3 役職定年前の心の準備

役職定年者は、本当にお役目ごめんで厄介者なのでしょうか。

そんな切実な人生の悩みを解決するヒントが、2000年以上前の古代ギリシャ哲学の一冊の本にありました。今から約2000年前の紀元前44年にキケロが書いた『老年について』という本です。

キケロはこの本で「老人の惨めさ」について論じています。

その内容は、これから役職定年する人や既に役職定年した人たちにとって、きっと心の拠り所となる心強いアドバイスになると思います。

キケロの教えを理解すれば、少しは、「拒絶、絶望、あきらめ」のプロセスで抱く辛さも和らぐに違いありません。

キケロは、「老人のみじめさ」をこのように定義しました。

・老人はすることがない
・老人には体力がない
・老人には何も楽しみがない
・老人は死が近い

これらの「老人のみじめさ」に対して、キケロはこのように反論しました。

老人は何もすることがない⇒NO!!

老人は船の舵手のように、じっと座っていても大変重要な役目を果たす。老人には若者が持ち得ない考えや弁論術を持っている。

役職定年者は、若者たちが想定し得ない問題や課題を経験上見通すことができますね。それをわかりやすく教え示しましょう。

老人には体力がない⇒NO!!

老人若者と比べて体力がないかわりに、老人は各自の人間の深みと親しみやすさを磨けば、自分のまわりに若者が集まってくる。

常に人間的に尊敬できる人格者であれば、若者たちはリスペクトを持って教えを乞うようになります。若者に人生教訓を教え、社会人としての振る舞いを教えながら育て、導いてあげましょう。次世代へと続く智慧を教え伝えることが、役職定年者とっての幸福にも繋がります。

老人には何も楽しみがない⇒NO!!

身体の衰えは、むしろ有難いものである。老年期での楽しみは、肉体的欲望という苦しみからの開放される。

若者のように色恋酒には興味は無くなりますが、その分、読書したり旅に出たり見識を広める趣味をゆっくり堪能することができます。そこから学び得た見識で若者を見守りましょう。

老人は死が近い⇒NO!!

老人ならではの深い思慮に満ちた心境で、来たるべき死への精神的準備と覚悟が、地に足がついていない若者を安心させる。

自己主張と価値観が多様な社会では、饒舌よりも「深い沈黙」と「落ち着き」が求められます。若者のような一面的な即断はせず、沈黙して事態を見つめ、将来に可能性を残す選択を示してあげましょう。役職定年者は、将来への正しい方向を見定める舵手としての存在となり得ます。

以上のように、役職定年者は若者の手本となるべき存在になり得ます。
また普段はじっと見守る立場でも、いざと言う時に的確な判断をアドバイスできる危機管理担当の役目も担えます。

4 45歳から役職定年のシミュレーションをしよう

役職定年になって、いきなりキケロが言うような人間にはなれません。

45歳ごろからすこしずつ自分の言動を意識しつつ、心にゆとりを持つように心がけましょう。

そして役職定年を迎えるときは、若者から惜しまれるようにフェードアウトしてきたいものですね。


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