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隣人

花が咲いていると雑草と分かっていても無下にできない気持ちになるのは何でなんだろう。
私がいつも止める駐車場のスペースの奥に、黄色いカタバミの花が咲いていた。
白い砂利の間から茎を真っ直ぐ上に伸ばして咲いていた。
軽自動車だから花を潰さない程度に停めてもきちんとスペースに収まるので、できるだけ潰さないようにいつも停めていた。
初めは調節が難しかったけど、次第に慣れてきて花を潰さない距離でスイスイと停められるようになった。
正直に言うと何回か潰したと思うけど、気がついたら「何か?」と言う顔をしてまた上を向いて咲いている。
そんな逞しい駐車場の花がちょっと好きだった。
別に水をあげるわけじゃないけど、何となく大事に思っていたその花が、GW明けには綺麗サッパリ抜かれてしまっていた。
綺麗な白い砂利だけがそこにあった。
何も気にせず車を停められるようになったので、それは便利だったけど。
管理人さんが綺麗にしてくれたんだなって思って、すごくありがたかったけど。
ちょっとだけ、寂しい気持ちになった。

それから数日が過ぎた朝、車を停めるために駐車場に入ると、小さいピンク色の点が視界に入った。
自分の駐車スペースに、ピンク色の小さな花が咲いている。
あれ?黄色じゃなかったっけ?
ご親類の方ですか?
車をそっと停めて、花に近づいた。
よく見ると花の周りにも草が生え始めている。
雑草だし、生えてない方が停めやすいのだけど、でも花を見ると嬉しくなってしまった。
まだ背が低く、細い茎に小さい花が咲いて風に揺れている。
多分ムラサキカタバミ。
黄色い子だけじゃなくてピンクの子も居たのか、と思った。
カタバミは根が深く一度生えてくると駆除が難しいらしい。
敷かれてもむしり取られてもまた「何か?」と言う顔をしてしれっと咲いてくるのだから、やっぱり逞しい。
ムラサキカタバミの花言葉は、心の輝きだって。
良いね。

水をやるわけでも、守ってやるわけでもないけど。
これからも隣人として、少しだけスペースは分けてやっても良いと思っている。