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いいね!

 最近、知人のInstagramの投稿によく「いいね!」を押す。
 以前までは、心のなかで「いいね!」とは思っていても、特にそれが相手に伝わるようにはしていなかった。わたしが「いいね!」と感じたことは自分のなかに残るし、それでいいと思っていたのだ。


 それがなぜ変化したのかといえば、これはもう確実に、人からもらった影響である。
 ここ数年のあいだに出会った人たちがみんな、わたしの何気ない投稿にも気軽に「いいね!」を押してくれるのだ。
 ストーリーズの左端にぷかぷか浮かぶハートマークを見るたび、うれしくてたまらない気持ちになる。その赤いしるしを、何度も見返してはうっとりしたりもする。

 最初は出会って間もない人にでも、こんな簡単に「いいね!」を押していいのだな、と面食らう気持ちもあった。
 わたしにとって、誰かに好意を伝えることはとてもハードルの高いことだったし、人との距離のはかり方が大人になった今でもよくわからないからだ。

 しかし、そんなハードルをいともたやすく超えてきた彼らに影響されて、わたしの価値観もたやすく変容していった。
 「いいね!」を押したからといって自分のなにかが減るわけではないし、むしろ無限に手持ちがあるのならば、愛は振りまいても損はない。そう考えれば、悪くないかも、と思えたのだ。

 そのうち、まるで以前からそうしていたかのように、わたしも自然と人の投稿に「いいね!」を押すようになった。
 誰かの日常に向けて、投げキスを飛ばしながら歩くみたいにハートマークを贈ることは、とても心地がいい。
 わたしたちは、インターネットのなかで無償の愛を渡し合いながら、支え合って生きているのかもしれない。そんなことを思った。



 「人から影響を受けることは、人生の醍醐味だからね」という、映画の台詞が好きで、ことあるごとにその言葉があたまを過ぎる。

 過ぎるということは、日々のなかで「これはあの人からもらったものだ」と自覚する場面が多々あるからで、生きていくってこういうことだよな、とうれしくなったりする。

 大切な人たちと出会ったという証を、わたしはわたしのなかに残しながら生きていく。



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