西口遊希

西口遊希

最近の記事

『検察側の罪人』

久々の投稿です。 読書感想も映画感想もFacebookのほうで続けております。noteの存在をなぜか失念していたのですが、また思い出したので。気が向くがままに行ったり来たり。 さて月曜日にAmazonで観た映画。 かなり面白かった。善悪が分かち難くその間隙を繋げるように辻褄を合せながらナイフの刃先を歩んでいる。それが詰まりは人の世なのではないかと私は思っている。だがそれを人々は認めたがらない。だから勧善懲悪を好んで白黒つけたがりこぞって正義を振りかざす。近年特にその傾向が強

    • 『免疫と「病」の科学』

      読了。 慢性炎症の仕組みはよーくわかった。 あの病気もこの病気もすべては炎症によるものということもよーくわかった。いや炎症というものの正体が分説されて、イメージも新たにそれなりに理解できたと思う。これまでは腫れて痛むというくらいにしか認識していなかったから。そして同時に、その最も最初にあるべき原因その因子がじつは不明であるということもわかってしまった! 炎症が起こり慢性化するためには、多くの過程、システムとして通過していかねばならない順序があり、各病理の発症に至るのはかなりの

      • 『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』

        なんといっても佐藤優さんの非常な低姿勢ぶりにコチラの頭が下がる思いでした。竹内久美子さんが全力で真っ直ぐに投げてくる槍を、佐藤さんは時に革盾で辛うじて防ぎつつ拡声器で説得を試み、時にベニヤ板に身代わりに受けさせて、時に既のところで白刃取りし、時にすらりと身を躱す。なんと柔軟で柔和なことか。こんな佐藤さんを初めて見(読み)ました、流石の宗教家です。おそらくは同じクリスチャンでもカソリック信者ではそうはいかないでしょう。プロテスタントしかも神学を極め古今東西の歴史と思想を学しあり

        • 『マチネの終わりに』

          文庫化されての購入です。 すぐに読み切れそうだったのですが途中難航し、読了に4日もかけてしまった。現代純文学者の書く恋愛小説というものを読んでおかねばと、最近の作家の恋愛小説はもうほぼ読まない中で、奮起して対峙しました。 果たして、非常によくできていた。流石です。 主人公ふたりの人物設定、その背景にある世界的な現状、テロが横行し内戦のさなかにある現場、死と隣り合わせの日常と心の傷、音楽という芸術のありよう、それを担う者の重責と葛藤、挫折、そして交錯する複数の愛。扱い掛けた思

        『検察側の罪人』

          『忘却のサチコ』

          Amazon prime で観ました! 女の子版孤独のグルメと言っていい。 ただ、井之頭五郎のそれよりもストーリー性はあります。結婚式当日に花婿に逃げられ心に傷を負った主人公サチコ。編集者としてバリバリ働きながらもアタマを離れない彼の面影。それを忘れていられるのは美味しいものを食している時だけ! かくしてサチコのグルメな日々が始まった。 そしてまた、生きるのに不器用なサチコちゃんは見るからにアスペルガー。真面目でまっすぐで手を抜くことを知らない。周囲の人たちはそんなサチコに

          『忘却のサチコ』

          『ブルゴーニュで会いましょう』

          ロードショーで観そびれてからもずっと気になっていた作品。それが Amazon prime に登場だよ、ひゃっほー! 邦題は「ブルゴーニュで会いましょう」。せっかく原題が素敵なのに、何故に?とちょっと思う。その原題「プルミエ・クリュ」はワイン醸造所が持つ一級畑のこと。もちろん格の名称の付け方は各地方によって違うのだけれど、ブルゴーニュではシャトーなどの醸造所での格付けに用いられる。実はその上にグラン・クリュというのがあって、それは特級畑のこと。誰でも知っているロマネ・コンティ

          『ブルゴーニュで会いましょう』

          『結婚できない男』

          Amazon primeにて散々ドラマジプシーした末にやっと全編楽しんで観ることができた作品。かなり前のドラマなのでスマホじゃなく二つ折りの携帯だったりして時代の移り変わりの速さも面白く感じました。 私が疲れているのか、最近はおどろおどろしい内容のドラマや登場人物に嫌なタイプの人がいたり妙にドキドキさせられたりするストーリー展開のものはアウト。観ていて疲れずニンマリするようなお話や登場人物で構成されているものでないと途中でダウンして最後まで観られません。このドラマの前にトラ

          『結婚できない男』

          『嫌われ松子の一生』

          アマゾンプライムで観ました。 運命に翻弄され波瀾の人生を送る主人公、松子。 チープな歌とダンス、切り抜かれたようにサイケな映像とともに昭和という時代を一気に駆け抜ける。映画全体がノスタルジックで不思議なムードに包まれて、松子の人生がそのまま昭和の盛衰に重なるような作りとなっている。過去と未来が往来することも松子の生き方の切なさを浮き彫りにするのに一役買っている、とても良くできた映像。その映像のお陰で、次々と松子の身に起こる壮絶で陰惨な出来事が松子の生来の明るさと実直さで軽々乗

          『嫌われ松子の一生』

          『転生したらスライムだった件』

          TVアニメのほうを一気観しました。 面白かった〜! アニメなので先ず絵柄や声や音楽など視聴的に合わないと観ません。そこをとりあえずクリアして、スライムか〜と思いつつも観始めたらば、そのスライムがなんともぷにぷにで可愛くてしかも感情移入も難なくできて驚きつつもクリアなりました。 転生モノはなんと私は初めてで、しかもスライムなのでバカにして観ていなかったところあります。今回は体調不良で読書する集中力がなく、さりとて眠り続けるほどのこともない状態の、時間の有効利用のために軽めのア

          『転生したらスライムだった件』

          『スティーブ・ジョブズ』全6巻

          先の「エリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」(山口周著)に幾度も名が出てきた。そして私は「スティーブ・ジョブズ」をヤマザキマリの漫画本で2年以上前にゲットしたままである。こりゃ読むチャンスだ。と読みだしたら止まらなくて一気読み、10連休様々だ。 そもそも何故この本を買ってあったのかが我ながら謎なのだった。別にアップルコンピュータにもジョブズにも特に興味はなかった。理由があるとすれば、ヤマザキマリさんのファンであること。そして1巻目の表紙のジョブズの絵に魅了されちゃったってこと

          『スティーブ・ジョブズ』全6巻

          『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

          経営学など縁遠い私が何故この本を読もうと思ったのか。それは副題「経営におけるアートとサイエンス」に興味を惹かれたから。息子の高校のクラスがアーツサイエンスと名付けられていて、どういう意図があっての名称なのかずっと気になっていた。クラスのコンセプトとしては、リーダーシップを担える人材を育てる、ようなことが示されているのだけれど、いまひとつピンと来なくて。門違いな内容ならばそれはそれで構わない、こんなことでもなければ経営学の本など読まないだろうし機会を活かす気持ちで読んでみた次第

          『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

          『炎上論』

          茂木さんの今現在伝えておきたいことをぎゅっとまとめました!な旬の1冊。 これからのコミュニケーションと生き方と副題されているように、ネット社会・ネット情報社会・AI化されゆく社会で取り残されず生き残っていくためには如何な心構えでいるべきか、が非常にわかりやすい言葉で提示されている。 特に面白かったのは養老孟司さんの仰るところのバカの壁を引用して(茂木さん的にプラスαして)書いてらっしゃる第二章。話せばわかるなどという幻想は捨てよう、壁は世代間や年齢差で生じるものではない、

          『炎上論』

          『されど愛しきお妻様』

          発達障害をそうと認識されることなく、生き辛いままに大人になった人はかなり多い。生き辛さはそこここで社会との軋轢を生み、当事者は自己否定を重ねながら二次障害に陥り、更に苦しく辛い立場に追い込まれてしまう。幸か不幸か社会適応への努力が実り、なんとか一般化がなったとしても、本来の自分を抑え込んでいるために多大なストレスを抱え込み、やはり二次障害を負い苦しみぬくことになるのだ。 この本は、そんな社会不適応から精神を病むことになる女性を妻とし、更には自らも脳梗塞を起こして高次脳機能障

          『されど愛しきお妻様』

          『十二人の死にたい子どもたち』

          疲れたときに軽く読める小説をとジャケ(&題名)買いしてあったもの。内容を全く知らずに選んだわけですが、軽いながらもなかなかのミステリーとなっていて面白かった。 ネットで募られた安楽死願望を持つ少年少女が、それを決行するため、とある場所に集う。主催者はサトシという14歳の少年。なんのつながりもない12人の少年少女たちは、サトシの出した膨大な心理テストに答えて合格し、ようやく死出の片道切符を手に入れた。ここに来れば速やかに安らかに、永遠の眠りにつける。 ところが思わぬアクシデ

          『十二人の死にたい子どもたち』

          『日本人のための軍事学』

          知っておくべきだろうと思い、義務感から読み始めた本書だが、本題に入るなり面白くなってしっかり読了。息子が軍事オタク寸前な高校生なので色々と話しながら読み進む。知らないことだらけ、ほぼ白紙の状態なのでいちいち目からウロコであった。 またこの本がまさに何も知らない人向けに、社会学者の橋爪氏が元自衛隊幕僚長である折木氏へ次々と鋭い質問を浴びせかけ、折木氏がかなり深いところまで回答する、質疑応答という形がとられていて大変読みやすい。その内容が実に具体的だ。軍とは何か、自衛隊とは何か

          『日本人のための軍事学』

          『老後の資金がありません』

          なんともストレートに恐ろしい題名ではないか。 お友達に勧めてもらって早速読んでみました。 小説だったのか!!! とまず驚く。情報得てから買おうか(笑) ともかく一気読みしました。 主人公は50代のサラリーマン家庭の主婦。 二人の子どもたちを大学まで出して、やっと教育費から脱却、貯蓄と夫の退職金、そして親の遺産で老後は余裕で暮らせるはずであった。ところが。 立派な土地と家を売り姑夫婦はゴージャスな有料老人ホームに入る。そして予想外の長寿であったふたりはどんどんと遺産となるは

          『老後の資金がありません』