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『十二人の死にたい子どもたち』

疲れたときに軽く読める小説をとジャケ(&題名)買いしてあったもの。内容を全く知らずに選んだわけですが、軽いながらもなかなかのミステリーとなっていて面白かった。

ネットで募られた安楽死願望を持つ少年少女が、それを決行するため、とある場所に集う。主催者はサトシという14歳の少年。なんのつながりもない12人の少年少女たちは、サトシの出した膨大な心理テストに答えて合格し、ようやく死出の片道切符を手に入れた。ここに来れば速やかに安らかに、永遠の眠りにつける。

ところが思わぬアクシデントが起こった。
それが果たして、集い合ったのちは静かに死ぬだけとされていた彼らに、互いに対話し議論しなくてはならない状況を与えることになる。さらにそれぞれの死にたい理由を話すことにも発展をする。

12人の子どもたちの、死を思う理由はそれぞれだ。
は?そんなことで?!と呆気に取られる場面もあれば、さもあらんと同感できるほどの痛みを打ち明ける子もいる。作者は、些細な理由を自死に繋げる子どもたちの脆さと危うさ、そして一方では大人のエゴイズムによって深く傷つけられる子どもたちが、大人が思う以上に多く世の中に生じ続けているのだということを伝えようとしているように思える。

生死の狭間にある彼らの数時間を、ともに過ごしたような読後感。問題作というほどではないが、問題としなくてはならないような事柄が多々含まれているのも確か。さらりと読んで、あとで事あるごとに思い起こすような、不思議な1冊だった。

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