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私の頭のなかの雑音②

結論から言うと、私についた診断は「脳過敏症候群」というものだった。

「脳過敏症候群」というのは、名前の通り、脳が興奮状態に陥り過敏になって、様々な辛い症状を抱える病気です。主な症状としては、しつこい頭痛、頭の中で雑音が鳴り響くような頑固な耳鳴り、フラフラしためまい、不安感、抑うつ状態、不眠、などです。命が危ない、ということにはなりませんが、四六時中悩まされるので、生活していく上で、大きな障害になる病気です。(TBSラジオ 森本毅郎スタンバイ! 原因不明の頭痛、耳鳴り、めまい・・・脳過敏症候群を知っていますか?より)

めまいはなかったものの、これはまさに私の症状そのものだ。
診断を受けたのは、頭痛外来。耳鳴りが主な症状だったから、まさか頭痛外来で診てもらえるなんて思いもしなかった。

しかも私に病院を紹介してくれたのは、眼鏡屋さんだったのだ。

救いの手は意外なところから・・・

日に日に雑音が大きくなり、原稿を書くことはおろか、メールを返すことすらもできなくなっていた8月半ば過ぎのこと。メールをくれていた眼鏡屋さんに返信が遅れたお詫びと、現在の状況についての話をすると、

「それは、光過敏が関係しているかもしれない」

との、意外な指摘が。耳鳴りの原因は耳、もしくは自律神経や精神的なものなのではないかと思っていた私は、最初意外過ぎて話が理解できなかった。ただ、前回の記事にも書いたとおり、屋内でも眩しさを感じるほど光には過敏になっていたので、すぐにその眼鏡屋さんへ行き、まずはブルーのカラーレンズで眼鏡を新調した。

なぜブルーかといえば、いろいろ試したなかで一番心が落ち着く感じがしたから。家の中で使うことも考えて、カラー濃度は25%にした。

本当はそれを使いつつ様子を見ようかと思ったのだけど、1分1秒でも早く雑音から解放されたかったので、すぐさま教えてもらった病院の検査と診察を予約。MRIの結果は異常無く、脳波検査の結果により脳過敏症候群との診断がついた。なんでも、脳が興奮状態にあることが頭鳴をはじめ様々な症状を引き起こしているとのこと。治療はこれからだけれど、診断がついただけで救われるような気持ちになったのを覚えている。

脳が光などの刺激に過敏に反応

脳過敏症候群の詳細については、最後に紹介している記事を見ていただくとして。簡単に説明すると、私の脳はそもそも過敏で、光や音などの刺激に過剰に反応してしまうとのこと。その興奮がこれまで片頭痛の原因となっていたのだけど、その片頭痛をきちんと治療せず、市販の頭痛薬で対応=脳の過敏状態を放置していたことが、脳過敏症候群を引き起こしたのだと。

驚いたことに、投薬を始めた初日の夜から久しぶりに連続4時間以上眠ることができ、翌日から少しずつ食欲も復活。安堵感もあったのだろう。自分の症状に合った薬を飲めることが、こんなに嬉しいなんて。頭の雑音は相変わらず続いていたけれど、眠れる&食べられるだけで次第に元気を取り戻していった。10月には展示会取材もできるようになり、11月には、ほぼこれまで通り執筆仕事もできるようになった。

発症から診断がつくまで約1か月。長く感じられたけど、適切な病院に辿り着けただけでも、かなり幸運なほうなのだと思う。その点については、感謝の気持ちでいっぱいだ。

色付き眼鏡と、ともにある生活

さて。すべてはもう過去のことであるように書いたけれど、じつは頭の雑音は今も2~3日に1度鳴り続けている。でも、夏と大きく違うのは、それでも普通に生活ができているということだ。音量も、少しずつ小さくなっているように思う。以前はセミが頭のなかにいたとするなら、今は二重サッシ窓越しに聞こえるぐらいかな。音のある生活に、もうすっかり慣れた。

もちろん、聞こえないに越したことはないけれど、今もライターの仕事を続けられているだけで充分幸せだ。だって、一度はこの仕事を諦めかけたわけだから。

今も光には過敏で、カラーレンズを入れた眼鏡が欠かせない。いや、”欠かせない”、はちょっと大げさかな。調子が悪いときは必須で、調子が良いときでも、やっぱりあると安心。最近はこの色付き眼鏡に合わせて髪型やメイクを考えるのが楽しい。

私の人生、つくづく眼鏡に救われているなぁと思う。

そして、色付き眼鏡を常用することになって、気が付いたことも。以前"職場における女性の眼鏡への偏見”について記事を書いたことがあるけれど、色付き眼鏡となれば、偏見はそれ以上だろう。でも、世の中にはファッション以外の理由でサングラスが必要な人も少なくないのだ。それを多くの人に知ってほしい。これは、今後の取材テーマのひとつにしたいと思っている。

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最後に。ここに記したことは私個人の体験や感じたことであり、脳過敏症候群すべての人に当てはまるものではありません。私は軽度だと言われたので、もっともっと大変な思いをしている人は多いはずです。それゆえ記事にするのも悩んだのだけれど、今後の取材活動にも関係してくることなので、前提として一度この話をしておかないと次に進めないと思い、ここに簡単にまとめた次第です。

耳鳴りや頭鳴は、痛みを伴うものではないし、見た目でわかることではないので、その苦しみは周囲に理解されにくいでしょう。ひたすら自分の頭のなかの雑音と向き合わなくてはならないから、孤独を感じている人もいるかもしれない。でも、もし私が体験を語ることで、少しでもこの病気を知ってもらうきっかけになれば幸いです。

【参考サイト】
頭痛からめまいや耳鳴りに―脳過敏症候群(時事メディカル)
【参考文献】
清水俊彦『脳は悲鳴を上げている 』(講談社+α新書)


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