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【戦争について考える絵本】「たったひとりの戦い」

戦国の時代、隣り合った赤の国と青の国の戦争も長い間続いていた。
青の国の王子ファビアンは戦争の決着をつけるため、王子同士の一騎打ちに出かけたが、相手をたおせず、父王の怒りをかい、追放の身となった。
国を追われたファビアンが戦争をおわらせるためにひとりでおこした戦いとは…。

「たった一人の戦い」カバーより

高学年の読み聞かせにいいなと思った絵本です。
今年はロシア・ウクライナの戦争のニュースをずっと目にしているので、戦争や平和について触れた絵本を読む機会がなんとなく増えています。

赤と国と青の国は長い間戦争をしていて、もうどうしたこの戦争が始まったのかだれも覚えていない、というところからこのお話は始まります。
『え、じゃあ戦争やめればいいじゃん』
第三者目線でみると普通にそう思うのですが、男たちは当たり前のように毎朝戦場に向かい、夜には死人やけが人とともに帰ってきます。
現実世界とは違うかもしれませんが、戦争というのは一度始まってしまうと、なかなかやめられなくなってしまう側面があるのかな、と1ページ目を読むだけで考えさせられます。

ただ、主人公である青の国のファビアン王子は戦争などどうでもいいと考えていました。赤の国とうまく戦うことができず、王からは追放されるのですが、戦争が続く二つの国の様子をみて、なんとかしなければと思い、ある行動をとります。

少しネタバレになってしまいますが、このお話では戦争を終わらせるために、ファビアン王子は赤と青の国とはまったく関係ない「黄色の国」を利用します。そして、武力を使うことなく赤と青の国を協力させることに成功します。「黄色の国」の王は、勝手に利用されてしまったのにも関わらずファビアン王子の話を聞いてくれ、「王子はとてもかしこくて、頭が切れる子だ」とほめてくれます。

最初に読んだのは2~3年前で、そのときは現実世界とリンクさせて考えることはなかったのですが、今読むと全然違った見え方になりました。今回は物語とはわかっていても、「現実世界ではこんなに単純に戦争が収まるわけがない、、」と思ってしまう一方、希望的観測ですが「戦争をしている国の中に一人でも戦争をやめたいと思う優秀な政治家がいて、それに協力してくれる中立国がいればなんとか戦争を終わらせられないかな」とも思い。。

もちろん、戦争が始まらないことが一番なんですけどね。
戦争を仕掛ける国、仕掛けられたときにそれに応じてしまう国、その戦争を応援する国が存在することで、戦争がはじまり、続いてしまっていて、まだ終わりそうもない現在、この絵本を読むと自分の国のことではなくても「黄色の国」の人間として考えさせられます。

難しいことは書かれていないので、低学年でも読むことはできます。(少し長いので、集団での読み聞かせだと集中力は持たないかもしれませんが)
また、色鮮やかな赤、青、黄色の絵もとても見やすいです。

残念ながら、現在書店では取り扱いがなく、図書館で借りるか、中古でしか手に入らないようです。



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