一線は超えないから深く眠りたい
仕事でいろんな人に出会うようになり、妙に馬が合う人に出会うことが増えた。
独身だったらなぁって、あたりまえのような感情を抱いて、気まぐれに訪れる恋は、唐突で感情を自制するのに少し時間がかかってしまう。
私は私の状況を察して、気遣って話をしてくれるタイプに弱い。
なんでわかるんだろって心が惹かれていくのが自分自身でも分かるほどに。
けれど。
それは私を理解してくれているわけじゃなくて、仕掛けられた甘い罠であることもよく分かっているつもりだ。完全なフリーじゃないかぎり。
迷うことなく回避してきたはずなのだけれど、仕事の価格交渉で
価格は俺への気持ちで決めてくれていいよ と冗談の会話に
え!それじゃあたくさんもらわないとですよ・・・と答えたとき。
電話越しに嬉しそうな雰囲気のあなたに恋愛感情を感じたのと同時に、 私は別の感情を抱いていた。
この展開はまずい。
今少し消えてしまった線にも、いつだって引き直せるところがある。
間違って薄くなってしまった線を消してしまわないように、
いつか抑えの効かない高揚を抱いてしまったときに
あなたにぶつけてしまわないように、
明日の私に線を引き直そうと強く言い聞かせながら、眠りにつく。