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一目で惚れた恋

会社の春の人事異動が発表され、異動してきた先輩が初めて私と同じ職場に出社して自己紹介の挨拶をした瞬間。

これが一目惚れかという典型的な恋に落ちた。

見るからに明るい性格、パッチリとした目、高身長で、仕事ができそうな大人な雰囲気に、若かった私は、初めての一目惚れと、自分の本当の好みを知った。

ビビッとくる出会いが初めてで、戸惑いもありながらも、社内恋愛特有の、身近で一緒に過ごす時間の多い環境に、恋愛感情は増していくばかり。話をする中で、共通する趣味があることを知り、共通の趣味の音楽ライブの話でさらに距離を縮めていきました。

一緒に働くようになって半年くらい経った時、会社の飲み会の2次会で少人数で話せることになって、酔った勢いで猛アタックして、一緒に飲んでいた他の先輩の後押しもあって、なんとなく付き合うことになりました。

次の日の私は、酔った勢いで行動した自分に後悔して、翌日に電話で今の思いを伝えました。

「昨日のことはなかったことにしてください!」

「なかったことにってどういうこと?」

「付き合う話はなかったことにしてほしいんです。」

「なんで?それはダメ。」

私の気持ちも相手の気持ちも中途半端な感じがして、ずるいなと思いましたが、言い返せなかった私は、付き合うことになった。


電話から少し経ったころ、お互いに興味のあるアーティストのライブに一緒にいくことになり。私は、私の地元で開催されている音楽フェスに、先輩は、彼の地元で開催されるアーティストのライブへ。同じ趣味だったはずなのに、感じ方も好きなところも違って、なんだか違うが重なっていくのを感じ始めました。

それ以降、プライベートで会うことはなくなり。何が原因でというわけでなく、お互いになにか違うかもという感覚になっていたと思います。


私はこの恋で、初めてどうしても手に入れたい恋を知りました。

でも、

重なり合えない思いが積るこの恋は、私を苦しめるばかりで、何も与えてくれず。

曖昧な状況を変えたいという思いが積っていく日々が数ヶ月過ぎました。


私はこのままの状況に区切りをつけたくて、先輩とご飯にいく約束をして、今感じていることを曖昧にせずに話して向き合うことにしました。

約束の場所にきた先輩は、私と同じことを分かっているような表情をしていました。仕事の話をしながら、場が馴染んだ頃に、今の状況に対して私が思っている気持ちを伝え、別れを伝えました。

「今の状況に区切りをつけたいので、別れたい。」

「そう思うなら、そうしたらいいよ。」

「あー、すっきりした。今日来てくれて、話してくれてありがとう。」

前向きな未来の話をして別れ、その数ヶ月後、先輩は別の営業所に異動となって、顔を合わせることもなくなり、一瞬の一目惚れの恋は、本当の終わりを迎えた。

先輩のいない職場で、私は、もう一目惚れの恋はこりごりだと思った。


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今振り返っても、若くて無茶で、盲目に恋をしていたなと思う。

付き合っていたの?というくらいに浅い関係。一緒にいた時間に愛情を感じた瞬間があったから、私にとっては1つの恋。そういう恋だった。