【最新世論調査】損失補償・現金給付の評価は? マスク配布不評、ロックダウンの賛否は真っ二つ!
緊急事態宣言後の世論はどうなっているでしょうか? 最新の4社の世論調査をもとにして概観してみましょう。
・産経新聞 (4月11~12日実施)
・読売新聞 (4月11~12日実施)
・共同通信 (4月10~13日実施)
・NHK (4月10~12日実施)
⭐緊急事態宣言の評価
緊急事態宣言の評価は3社が聞いており、平均して75%ほどが肯定的な結果でした。政権に批判的な層の中にも、宣言しなければまずい状況になっていると考えている人がかなりいるとみられます。しかしそういう層は、政府が宣言した上で何をするかを注視しているでしょう。ですからこれが政権の評価に直結するとはいいがたく、今後、何をしていくのかが焦点となるはずです。
⭐緊急事態宣言のタイミング
宣言をしたタイミングについては、遅すぎと考えている層が8割ほどとなっています。政府はさらに宣言の範囲を全国に拡大する方針としましたが、こうした世論も考慮しているのでしょう。
⭐ロックダウン
今回、ロックダウンを聞いたのは産経だけでした。いい設問です。
しかしこの設問ではロックダウンを都市封鎖としている点と、「法改正」を問題にしている点に留意が必要です。
都市封鎖というと、人の出入りを強制的に止める、外部からも人を侵入させないという印象になりがちですが、ロックダウンは家にとどまって外に出ないということです。ともかくそういう状況を実現することが、人と人の接触を回避し、感染拡大を止めるために有効であるわけです。
ですから人の流れが一定水準を下回るまで休業要請の対象を拡大し、それとともに補償を行い、単に自粛と言うのではなく、外出しないで家にこもれる環境をつくってロックダウンを機能させることは現行の法でも実現の余地はあるはずです。
クラスター対策班の西浦氏は、人どうしの接触機会を8割減らすことを提唱していますが、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策のページによると、緊急事態宣言のでた4月7日を基準としたとき、4月12日(日曜日)は東京の主要駅では人の流れが8割減となっています(下図)。
日曜日に劇的に人の出入りが減っているデータからは、ゴールデンウイークを拡大し、毎日を日曜日にしてしまうことが有効な可能性が示唆されます。そのために必要なのは休業要請と補償であり、「8割減」という基準などとあわせて、専門家は検討の余地があるでしょう。
⭐アベノマスク
安倍首相が言い出したマスク2枚を配る方針は不評です。基本的に、たとえ愚策であったとしても、賛成が多いのであれば内閣支持率の上昇をもたらす可能性があります。しかしこの世論調査の結果は悪すぎるので、政権の立場で考えたとしても撤回したほうが良いと思われます。
では、国民は何を求めているのでしょうか。
⭐損失補償
休業にともなう損失の補償についてはNHKと共同通信が聞いています。いずれも肯定的な回答が8割前後となりました。
⭐現金給付
また、NHKの世論調査から現金給付の質問を見てみましょう。
ここでは30万円給付の評価が聞かれており、賛否が割れています。しかし質問文を見てみると、「落ち込んだ世帯などに限る」ことと「金額の大小」というように判断するポイントが複数あるため、回答者が質問をどのように解釈したのかが不明瞭となっています。
そこで他社の調査もあわせて見てみましょう。
まず上に示した読売では、「適切だ」は26%となっており、下の共同で「妥当だ」とした20.4%と一定の整合性が見られることがわかります。「不十分だ」としたのは58%で、「行き過ぎだ」が5%でした。
では何が「不十分」とみなされているのでしょうか? 共同通信を見ていきます。
共同通信の質問では、「妥当だ」に対して、妥当ではないからこうすべきだという意図の選択肢を「一律給付にすべきだ」「金額を増やすべきだ」と設定しています。
これだと妥当ではないから「対象をさらに絞るべきだ」「減額するべきだ」という意見は見えてきませんが、先の読売の世論調査で「行き過ぎだ」が5%にとどまることを考慮すれば、こうした意見は小さいことがうかがえます。
共同通信では一律給付を求める声が6割と大きいです。
政府の対応は右往左往していますが、4月16日の日経新聞では、減収世帯に限定した30万円給付や取りやめて、一律10万円給付の方針と報じられています。一律の給付は、本来であれば対象を絞るよりも敏速にできるメリットがあります。しかし、同日の日経新聞はまた「支給は早くて8月ごろとなる」とも書いており、今後の見通しはなお不明瞭な状況です。
⭐政府対応の評価
以上の結果を受けて、NHKの世論調査では2月から4月にかけ、政府対応を「大いに評価する」「ある程度評価する」と回答した層があわせて18ポイント減っています。また、「あまり評価しない」「全く評価しない」との回答は19ポイント増えています。
産経の世論調査ではより変化の幅が大きく、3月に「評価する」と回答していた層は、4月にはほぼ半分となっています。
⭐内閣支持率
内閣支持率は下落傾向にあります。政府対応の評価を見る限り、現在までの政府対応は内閣支持率の低下要因にあたっていると見ることができるでしょう。
この前、コロナ対応をめぐる海外と日本の圧倒的な違いという記事を書いた翌日に、The economistがトランプ大統領の支持率について同じような比較を行いました。そのグラフでも直近の安倍内閣の支持率はトランプ氏の下に位置しています。(なおThe economistのグラフはWHOがパンデミックを宣言してからの増減です)
⭐民意と政策の疎通
アメリカやヨーロッパでは、確認されている患者数、死者数ともに日本よりも多くなっています。こうした国々で、なぜ政府対応が評価され、首相や大統領の支持率が急上昇しているのかは、一見して疑問になるかもしれません。
しかし欧米ではきちんと定例会見が行われ、政治家と市民の情報共有がされています。自由な移動などの権利が制限されるとしたら、それがどんな理由や根拠をもとにして行われるのか、今後どうなる見通しになるのかということを、きちんとデータをもとにして共有しているのです。そして現に、データにもとづいて感染症の終息が見通されつつあります。
民意と政策の疎通は民主主義の基本にあるものです。そういったことが、まだまだ日本には欠けているように思えてなりません。
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