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【最新世論調査】コロナ対応をめぐる海外と日本の圧倒的な違い

 新型コロナウイルス感染症を前にした、外国とは異なる日本固有の世論の動きが少しずつ見えるようになっています。

⭐外国の世論

 現在、新型コロナウイルス感染症が深刻な各国では、与党や政権の支持率は急上昇を見せています。

🔸ドイツ(アンゲラ・メルケル首相)【出典

メルケル

 ドイツでは、メルケル首相の支持率(緑)が伸び、80%に達しました。また、ここには掲示しませんが、メルケル氏が党首を務める与党のCDU/CSUの勢いも増しており、感染症への対応が国民に支持されていることが明らかとなっています。


🔸イギリス(ボリス・ジョンソン首相)【出典

ボリス

 自身も感染し、闘病の末に退院したボリス・ジョンソン氏の支持率(水色)は、コロナ前と比べて15ポイント伸びています。


🔸イタリア(ジュゼッペ・コンテ首相)【出典

コンテ

 イタリアの感染症の拡大は深刻です。しかし、そのなかでコンテ首相の支持率は27ポイント伸びています。


🔸カナダ(政府)【出典

カナダ

 カナダでも、「政府は正しい方へ向かっているか? 間違った方へ向かっているか?」という、政府の方向性への賛否を問う調査では、「正しい方向」との回答が跳ね上がっています。


🔸ニューヨーク(アンドリュ・クオモ知事)【出典

クオモ

 ニューヨークは最悪と言っていいほどの感染がおきています。一見して、そのような状況をもたらした知事は厳しく評価されるように思われます。しかしながら感染者数や死者数は、地理的・社会的な様々な条件にもよるものです。データにもとづいて戦略を立て、定量的な情報から終息をも見通しつつある現状の対応は見事といえるでしょう。

「終息することは約束できない、だけど次のことは約束しよう。私は真実を伝える。科学やデータに基づいた判断をする。ニューヨークの皆さんはそうした扱いを受ける権利がある」こう語るクオモ氏を、ニューヨークの市民は極めて高く評価しているのが現実です。

 ここに掲載しなかったフランス、オランダ、オーストリア、アイルランド、デンマーク、フィンランド、ポルトガル、ノルウェーでも類似の傾向です。こうした国々では、様々な権利(たとえば移動など)の制限をともなうコロナへの対応について、国民との意思疎通がなされ、政府は合理的な対応を目指して動いています。


⭐日本の世論

 日本でも新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、4月7日に緊急事態宣言が出されました。それを受けて、先週末は下記の4社が世論調査を実施しています。いま日本の世論はどうなっているでしょうか。

・NHK(4月10~12日実施)
・読売新聞(4月11~12日実施)
・共同通信(4月10~13日実施)
・産経新聞・FNN(4月11~12日実施)

🔸内閣支持率・不支持率
20200414内閣

 内閣支持率には、A社は高めに出す、B社は低めに出すといった各社に固有の傾向がありますが、みらい選挙プロジェクトではそうした固有の偏りを打ち消す補正をおこない、平均を出しています。そのため、各社が発表した生の数字とはずれがありますが、平均の結果は最も正確です。

 内閣支持率(赤線)が下落していることに注目してください。現在の内閣支持率は過去1年間で最低の水準になっています。

🔸政党支持率

政党1

 また政党支持率では、与党第一党である自民党(深緑)と野党第一党の立憲民主党(水色)の支持率が下落し、無党派層(灰色)の増加が明瞭です。下に、支持率10%未満を拡大したものを示します。

政党2

 海外の多くの国で起きているのは、首相や大統領の支持率の上昇です。それにともなって、与党の支持率が上がり、野党の支持率が下がる傾向も見られます。緊急時には国のリーダーが報道に多く露出するため、これは自然な傾向と言えるでしょう。

 しかし日本では、内閣支持率、与党第一党の支持率、野党第一党の支持率がすべて下落傾向となっており、支持政党を持たない無党派層が増加しているのです。


⭐日本の世論・個別の設問

 各社世論調査の時事的な質問からは、緊急事態宣言を出したことは評価するが、遅すぎたこと。全世帯にマスク2枚を配る方針の評価が低いことなどが読み取れます。

 また、下の記事ですでに休業補償について書いてきましたが、共同通信の調査ではこのことについても質問されています。

 🔹 今回の感染症への政府対応について①
 🔹 今回の感染症への政府対応について②

共同4月

 結果は「国が補償すべきだ」が82.0%と多数を占め、「国が補償する必要はない」は12.4%でした。

 4月13日の時事通信では、安倍首相は「『休業に対して補償を行っている国は世界に例がない』と述べ、否定的な考えを示した」と報じられています。

 しかしアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、オーストリア、韓国、ニュージーランドなどの各国は休業にともなう減益を補償しているとの反論がすでにあげられています。また、海外の事情にかかわらず、圧倒的多数の自国民が望むのであれば、その政策は検討されてしかるべきでしょう。

 こうしたなか、産経新聞・FNNが先月から同一の質問文で聞いてる新型コロナウイルスへの政府対応は、「評価する」が大きく減る結果となりました。

産経3-4月

 Gallupが実施した世論調査でも「自国政府は新型コロナウイルスにうまく対応していると思うか」という質問が行われており、日本では「とても思う」「思う」との肯定的な回答をした人の割合が23%で、調査の行われた29か国のうち28位となっています。

 これについては「国民性の違いといった要素もあるのでは」という見方もありますが、産経新聞・FNN世論調査をあわせて見ると、政府対応の評価はほぼ半減していることがうかがえます。

 また、日本の感染者はアメリカやヨーロッパの多くの国よりも少ないのに、なぜ評価されないのかという主張もありますが、現に指数関数的に増えている以上、状況は短期間で変化します。感染を止めるためには、そうした現状に対処するよりほかにないのです。

 すでにヨーロッパ諸国の結果からはロックダウンの効果が極めて大きいことが明らかとなっており、そういった措置を行わないできたスウェーデンも、感染拡大を前にして政府が方針の変更の検討を始めました。

 ロックダウンを行えば感染は終息する見通しが十分にあります。ニュージーランドでは3月26日、陽性者363人の時点でロックダウンを行いましたが、現在は感染を封じ込めつつあり、ロックダウンの解除も検討されています。

 地理的・社会的な様々な条件によって左右される面もありますが、

①損失の補償を伴うロックダウンをし、貯蓄のない人・収入がなくなる人の生活を支えるとともに具体的に人の流れを止め

②感染を抑え込んでいる間に検査・隔離・医療の体制の強化を行い

③ロックダウン解除後の感染の再拡大に備える

 ということは十分に検討されてしかるべきものであるはずです。

 しかし現状の日本では、緊急事態宣言は合理的対応というよりも、自粛を迫る社会的な圧力を強化するものとして機能している面が強く、政治が有効な対策をとらないまま、陽性者が急速に増加する状況となっています。


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