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ウィルスによる感染について問題発見の視点から考える(3)

(1)1. ウィルス(病原体)とは
(2)2. 感染源(ウィルス保有者)
(3)3. 感染媒体(感染経路)4. 被感染者
(4)5.どうする

3. 感染媒体(感染経路)

さて、ウィルスは生物ではなく、自分の意志で動くことはできない。従って、媒体を通じて移動する。その媒体は水であり、その水がまた空気中を浮遊したり、手やモノに付着したりすることにより移動する。

すなわち、ウィスルは発生源(感染源、感染者)から環境中に放出され、環境中に存在する間は極小さな物質と同じであり、その挙動を考えれば良い。

1)飛沫感染
咳、くしゃみ等を直接浴びることにより鼻・咽頭粘膜、 結膜などに付着することにより感染する。くしゃみは肺の空気4L を全て出す。37℃、相対湿度95%、水分120mg程度+飛沫で、その中にウィルスが200万個、咳は10万個を身体が排出しようとするとも言われている。飛沫の直径は 5μm 以上の大きい粒子が多く、ほとんどが水なので、大きくて重く、空気中には長く浮遊しないで地面に落下するので、2m離れると感染しないとされている。

ここで4μm 以下の飛沫は長時間浮遊するが、屋外では,2mまで到達する前に,60~100μmの大きな飛沫でさえ,乾燥して飛沫核になり,乾燥して感染力を失う。

しかし,湿気のある密室では空中に浮遊する飛沫(エアロゾル)中のウィルスは乾燥を免れるため,数分から30分程度,感染力を保持する。

2)空気感染(エアロゾル感染)
空気感染とは、医療の分野では飛沫の水分が蒸発して「飛沫核」となっても生き残るウィルスにより起こるものとされている。直径 4μm 以下の小さい粒子は軽いため空気中で気流に乗り、長時間浮遊する。それを吸い込み、直接気管支内、肺胞に入ることにより感染する。

今のところ、「空気感染」する伝染病は、結核、はしか(麻疹)、水ぼうそう(水痘)の3つしか発見されていない。ほとんどのウィルスは、前述の通り水分が蒸発することにより、感染力がなくなる。

ところが、空気感染しないからと安心できないのが、エアロゾル感染があるからである。エアロゾルは咳やくしゃみからも発生するが、1回に0.5Lの空気を排出する呼気の90%を占める1μm以下のエアロゾルも乾燥しないと感染力を有すると考えられており、空気感染と同じ挙動をする。ただ、ウィルスは細胞に入り込んでおり、しがみついているので、排出されるのは僅かでは想像する。

それでも、念の為、至近距離での会話を避け、密室は換気を良くして空気を入れかえると同時に湿度が高くなりすぎないようにすることが重要である。 

飛沫核と飛沫の違いについて下記サイトの模式図が分かりやすかった。ただ、模式図にあるように数10μmの飛沫中に1個の病原体が入っているわけではなく、ウィルスの様に直径0.1μmであれば、単純にその体積から計算すると数十万個存在することも可能である。

感染経路別病原体

3)接触感染
風邪で多いのが、ティッシュで鼻を噛む際に手がウィルスで汚染され、その手で色々なものを触ることにより起こる。他に飛沫が直接付着、しばらく飛んでから落下して付着、飛沫に触れた手等が触ることによりあらゆる場所が感染源となり、そこに触れた手が顔等に触れ、目や鼻、口に付着し、直接あるいは呼吸により体内に吸い込むことにより感染する。人は1時間に20回程顔に触れるとされている。

そう考えると、接触感染やエアロゾル感染による発症、あるいは重症化は考えにくいのではと想像する。

ウィルスが物体の表面で数日間感染力を維持するという実験結果が発表されているが、実際の環境をどの程度再現しているかは不明である。ウィルスは乾燥により感染力を失うことを考えると、少なくとも屋外では感染力を維持するとは考えにくい。

ただ、鼻水や糞便等、粘性のあるものを介して付着している場合は、表面が乾燥しているように見えても、中には水分が残っており、ウィルスが生存している可能性はある。特に、ウィルスは極めて小さいので、濡れているとか認識できるようなレベルではないのでやはり注意は必要である。

新型コロナウイルス(COVID-19、SARS-CoV-2)に類似で、2003年に流行した「重症急性呼吸器症候群(SARS) 」の接触感染として、症状が悪化した感染者の痰、嘔吐物などの排泄物が付着したトイレや部屋の床を清掃した器具で別室を清掃したことにより、その別室に宿泊していた宿泊客に感染が広がったことが知られている。

新型肺炎 <重症急性呼吸器症候群:SARS>

直接浴びる飛沫、密閉空間に浮遊しているエアロゾル、モノを触った手が主な感染媒体(感染経路)とされている。

4. 被感染者

被感染者は何らかの形で病原体ウィルスに曝される。その時、生物の生体防御機構が働き、免疫により異物を排除する、二重三重の防護壁がある。

図に生体防御機構による異物の排除の流れを示す。尚、排除に成功した場合は右へ、失敗したら下へ進む。

図 生体防御

図 生体防御機構による異物の排除
注)物理的化学的防御:皮膚や粘膜、涙、鼻水、唾液等による排除

ウィルスは皮膚や粘膜の上皮細胞から侵入を試みるが、生体は多重防御機構により、ウィルス等の異物を侵入させない働きをする。

呼吸すると、鼻呼吸の場合は、鼻毛や鼻水がウィルスの侵入を防ぐ。ここを通過したウィルスあるいは口呼吸により直接喉の奥へ侵入したウィルスは喉から肺への空気の通り道である気道にたどり着く。気道の壁には細かい毛(綿毛)が生えていて、表面は粘液(分泌物)で覆われているので、異物は分泌物に絡み取られ綿毛の動きによって喉の方へ運ばれ、食道に流されて胃の中で胃酸(強酸)により感染力を奪われ、腸を通過して排出される。量が多いときは痰として排出される。

ただ、侵入を許し、感染が成立して発症した後は、主に3つの流れがある。

1)宿主が寄生体(ウィルス)に勝った場合 → 宿主による病原体の排除。いわゆる治癒。

2)寄生体が宿主に勝った場合 → 宿主の死亡

3)宿主と寄生体の共存関係が維持される。感染は持続するが、症状が出現しない状態。いわゆる不顕性感染の状態である。感染は持続しているため潜伏感染とも呼ばれる。感染力があるのかは疑問。

生物には生体防御機構、免疫が備わっている。感染しても必ずしも発病するとは限らない、摂取するウィルス量をできるだけ少なくすることにより、自身の生体防御機構、免疫によりウィルスを排除できる可能性が高まる。その免疫を高めておくことが最も大事である。

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