見出し画像

間近に迫る2024年問題は残業削減問題ではないとう話し|上限規制の関係と隠れた問題とは?

今回は間近に迫る2024年問題、それを理解する上で関係する法律、そしてニュースではあまり報じない隠れた?省かれた?隠れた問題について解説します。最初に労働時間に関する法律の基本、そして労働者に対する過剰な残業を規制した「時間外労働の上限規制」、最後に問題の背景について解説いたします。


労働時間に関する法律の基本

では、最初に労働時間に関する法律の基本についてお話しを致します。
労働時間は法律で1日の労働時間と1週間の労働時間について制限を設けています。

労働基準法 第32条では、使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
使用者は、一週間の各日(かくじつ)については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならないとしています。
この、第32条の通りに働くと、1日8時間勤務の会社の場合、5日間で週40時間になってしまいます。

更に休日については第35条で、毎週少なくとも一回の休日か四週間を通じ四日以上の休日を与えなければならないとも定めています。法律で定めた休日なので法定休日と言います。この35条に沿って、法律上の最低基準で休日を定めると週1回で良いのですが、1日8時間で労働時間を定めると1日分空いてしまいます。そのため、週休2日制として1日を法定休日、もう一日も休みとしています。このもう一つの休日のことを所定休日と言います。

時間外労働の上限規制

https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html

では、2024年を理解する上で重要な「時間外労働の上限規制」について解説いたします。先程、労働基準法 第32条で労働時間について法律の制限があるとお話しました。では、実際の会社はどうでしょうか?残業なしの会社も有りますが、多くは時間の多少の差はありますが残業、場合によっては休日出勤をしています。これは、法律違反なのでしょうか?

この、残業や休日出勤について定めたものが、労働基準法第36条です。この条文に定められている通りに労働者のグループと勤務先の間で協定を結び合意すれば、その範囲内で時間外労働と休日労働をしても良いとしています。この協定のことを36協定と言います。ただし、36協定を結んでも際限なく残業をさせられる訳ではなく1箇月について45時間、1年で360時間が限度となっております。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合には1箇月45時間、1年で360時間を超えて残業時間をさせることができます。この協定は36協定を締結して、更に特別条項を作成して追加で締結する必要が有ります。36協定の内容に特別な条項を追加する形で作成するので特別条項と呼ばれています。

この特別条項を締結すると年間の残業・休日労働の上限が720時間以内、1ヶ月の上限100時間以内など上限が更に増えます。

時間外労働の上限規制とは、会社側が労働者に対して際限なく残業・休日労働をさせることを法律により規制することを言います。

原則は36協定の範囲内である1ヶ月45時間、1年で360時間が時間外労働の上限です。特別条項は臨時的な特別の事情がなければ超えることができないことになっています。

2024年問題とは?

さて、先程まで解説していました時間外労働の上限規制を踏まえまして本題に入ります。上限規制は原則として、全ての労働者に適用されますが、一部の業種については適用が猶予されていました。

それが、社会的に重要で働き手も少ない建設業・運送業・医師です。この猶予期間は2024年3月31日に終了します。2024年4月1日からこれら除外されていた業種にも時間外労働の上限規制が適用されます。

建設業においては一般企業と同じ最大で年720時間、自動車運転業務が年960時間、医師についても年960時間以内という規制が入ります。ただし、医師については救急医療など特定の要件で勤務する医師の場合は年間1860時間以内となります。

2024年問題とは、時間外規制の適用が猶予されていた業種にも、労働時間の規制が入り、それに伴う社会的混乱を問題とするものです。

自動車運転業務においては配送トラックなどの物流業や通勤通学に利用するバス等の旅客運送業も対象になります。当然、ドライバー不足が懸念され物の流通時間も増えます。輸送コストも上がりますし、いつもコンビニやスーパーで見かける商品が手に入りにくくなるかもしれません。輸送コストは上がりますので増加分を最終的には商品やサービス代金に付加しなければならず、物価高に繋がります。

医業においても、医師が不足するため診察を受けたい時に受けられなくなるリスクも増えます。緊急医療など24時間体制を維持できる病院は減っていくと思われます。一般企業同様に医師を確保するための人件費・採用コスト増加が見込まれますので病院経営ができなくなり閉院という自体も想定されます。

建設業も影響は深刻です。道路、上下水道、河川や港湾施設といった、生活や生命に関連する社会インフラの老朽化が問題視されている中での規制になります。工事に投入できる人員が不足すればこういった老朽化したインフラ整備の遅れにも繋がります。

これらの業種は常に人手不足であることも加わり、従事している方々の残業で成り立っている業種です。更に生活インフラや健康・生命に関係する仕事でもあります。2024年に限らず長期的に生活基盤に関わる問題として影響が残りそうです。

2024年問題の隠れた問題とは?

2024年問題について見逃されているのが、これら業務についている方達の収入減です。現在の給与の仕組みでは、働いた時間が多いほど収入が多く得られるようになっています。この仕組みでは、例えば平均で2時間で完了する仕事を1時間で終わらせても給料は増えず、むしろ残業手当が減り、収入が減るという事になってしまいます。

つまり、これらの業種を経営する会社や組織とその取引先、医業の場合は診療報酬点数など公的制度自体を見直さなければ、単に一人あたりの業務時間が減るだけで、時間単価が上がるようなことにはなりません。これは働き方改革の目的の一つであった労働生産性を向上させることと相反することになり、本来の目的に沿うものとは思えません。

このような課題に対して、企業や労働者の収入に対して新しい考え方が必要ではないでしょうか?

労働者が一定の成果を達成した場合にボーナスや報酬を得られる成果型報酬の導入など効率的な仕事をすれば収入が増えるような評価方式に変えるべきですし、少子高齢化の中でマンパワーは減ることを前提に準備をするべきです。

また、政策面でも本来はこの時期ならば所得税の減税や社会保険料の軽減など可処分所得を増やすための経済的な支援が必要なはずです。

2024年問題を取り上げると、どうしても、建設業・運送業・医師といった個別の業種に関する問題として扱われがちですが、問題の本質は、社会的に必要とされながらも手取りが低い職業へのしわ寄せ解消ではないでしょうか?


メルマガ登録のご案内

みらい創研グループでは毎週月曜にメールマガジンを配信します。税や社会保険に関する情報・動画やSNSの更新情報・セミナーのご案内を配信します。

Youtubeチャンネル登録のご案内

経営や生活に役立つ税務・労務・法務・会社の資金繰りや個人の資産運用など専門的なテーマを分かりやすく解説します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?