見出し画像

果実の成熟も温度で進む (農業)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。農作物の生長への温度の影響として、前回は葉の展開についてお話いたしました。今回は温度の影響として果実の発育も温度で進むことについてお話いたします。

トマトでは開花から果実が成熟して収穫するまでの期間は40~90日と幅があります。この日数は温度によって決まり、温度が高いと開花から収穫までの日数は短くなります。ある品種では、温度が17℃の場合には開花から収穫まで73日であるのに対して、26℃になるとその期間は48日に縮まります。積算温度と呼ばれ1日の平均気温の積算がこの品種の場合だと1248℃・日であるということを表しています。この積算温度という考え方は多くの施設園芸の農家で使われています。積算温度は大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトで違いますし、品種によっても違いがあります。

なお、重要なのは気温よりも果実の温度です。果実の温度は光条件が弱い場合には気温と等しいが、強い光の当たっている果実では気温より8~10℃くらい高くなることがあります。しかしながら、光の当たり具合は一様でなく果実温度もそれぞれ異なるので一般的には気温を目安にしています。

果実の発育日数に対して、温度以外の要素、例えば栽植密度や光強度、二酸化炭素(CO2)濃度、湿度、着果負担、植物体の齢および根圏環境などはごくわずかな影響しかなく、温度の影響により果実の成熟は進みます。

温度が高いと果実の成熟は促進し、開花から収穫までの日数は短くなる。しかし、果実の肥大生長(大きくなる)には温度の影響はほとんどありません。温度が高くて発育日数が短くなると、果実が肥大する日数も短く、十分に大きくなる前に赤く熟してしまいます。このため、温度が高いとトマトの果実は小さくなりがちです。反対に温度が低いと発育日数が長くなるので果実は大きくなることができます。着果数の影響がない条件では、トマトの果実が夏に小さく冬には大きくなるのはこのためです。
温度が高いと花房の展開も進み、着果数が増える。これも間接的に、高温による果実の小型化に関係しています。
まとめると
・温度が高いと早く成長するので果実は小さくなりがち
・温度が低いとゆっくり成長するので果実は大きくなりがち

ということです。

果実の大きさが温度によって変わるということは、温度調節によって果実の大きさを操作できることになります。果実を大きくしたい場合には平均気温を下げればよく、果実を小さくしたい場合には平均気温を上げれば小さくなります。

温度が果実の発育に与える影響(感受性)は、果実の成熟ステージによって異なります。温度感受性のもっとも高いのが、収穫直前の果実です。この時期の果実は、温度が少し高くなるだけで発育が進み、早く赤くなります。一方、温度が少し低くなるだけで発育はゆっくり進み、赤くなるのが遅れます。

反対に温度に対する感受性が低いのが、開花から収穫のちょうど中間時期あたりの果実です。この時期の果実では、温度が多少変わっても発育への影響は小さく、開花から収穫までの日数への影響も小さくなります。

果実の温度感受性の違いが、一時的に出荷量に影響を及ぼすことがあります。例えば、温度が高い日が続くとトマトの収量は一時的に増加することがあります。これは、収穫直前の果実が高温で早く成熟し、収穫時期が早まるためです。夏秋トマトなど、温度調節があまり利かない場合に生じます。高温で収穫が早まった果実がなくなれば、収量は減るので最終的な収量には違いはありません。この習性を利用することで、一時的に出荷時期を前後させることができます。温度設定を高くすることで収穫時期を早めて価格のよい時期に合わせたり、温度を低く設定して少しずつ出荷したりが可能であるということです。

【問い合わせ】
TEL 080-3396-5399
MAIL t.ogawa19720117@gmail.com

【関連記事】--------------------------------------------------------------------


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?