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根を観察しよう ~観察のポイント~(農業)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今回は根の観察についての続きです。
植物にとって、葉は光を受けCO2を取り込み、光合成をする場所です。根は生育に必要な水と肥料の取り込む場所です。これらが作物栽培で葉と根が重要な理由です。
葉は温度や湿度、養水分などの環境管理により大きさや質が変化します。ですから、農業者は日々観察をしています。根も同様に変化していますが、残念ながら定期的に観察している方はまだまだ少ないようです。

地上部(葉・茎など)と地下部(根)は密接に関わっています。相互関係にあるので根の状態は地上部の生育に影響します。収量が減る前は根の量が減り、根が劣化しています。最低でも週1回は根を観察しましょう!

〇根の観察のポイント(根の位置)
根が培地(土壌)のどのあたりにあるかを観察します。上根か下根かの確認です。一番いいのは培地全体に広がっていることです。

上根になる原因は二つあります。1つめは培地が過湿のときです。特に夜間の水分量が多いと、根は酸素を求めて培地の上部に分布します。潅水の量と潅水終了時間を確認しましょう。2つ目は少量多頻度すぎる潅水です。1回あたりの潅水量が少なすぎると、水は下ではなく横に広がるため根は水を求めて下ではなく横に広がります。

下根になる原因も2つあります。1つ目は培地が乾燥しているときです。水分が少ないと根は水を求めて培地深くに入り込みます。培地の上部が乾燥していないか、目と手で確認してください。2つ目は多量少頻度すぎるかん水です。1回あたりの潅水量が多すぎると、水は横に広がらず下に流れます。根は水の流れと同じように奥深くまで入り下根になります。


〇根の観察のポイント(根の色、形状)

<色>
 一般的に健全な根とは、色が白くよく分岐し、多くの根毛があるものです。まず、根の色を見てください。真っ白な根が多くあるかを確認します。飴色のような濃い橙色の根は、傷んでいるか寿命を迎えています。培地が過湿だと根は酸欠となり、数日で飴色になってしまいます。もしくは光合成量が不足していると、新しい根が発生せず、白い根を見つけられません。

  根が飴色 → 過湿ではないか? 光合成が不足していないか?

<種類>
次に、根の種類を確認します。根は大きく分けて主根・側根・根毛の3種類に分けられます。
 ・主根 :メインルート
 ・側根 :養水分の吸収が盛ん。
 ・根毛 :根の先端にあり根の表面積を広げて吸収を高める。

主根は培地中の酸素量が少なくなると増え、側根は酸素量が十分あると増えます。根毛は数日単位で生え変わります。

太い主根は容易に観察できます。重要なのは、養水分の吸収が盛んな側根などの細かい根がどれだけあるかです。根毛の寿命は数日といわれています。根はよい環境をつくれば数日で増え、悪い環境をつくれば1日で減ってしまいます。
もうひとつ、根には気根があります。地上部の株元の茎に発生し、空気中に露出している根です。トマトでは培地の過湿により根が傷んでいるときに多く発生します。気根が発生したときは、培地の水分状況を目と手で確認しましょう。

〇根は環境の影響が出やすい
定期的に根を観察すると、環境変化に対する反応が地上部の葉や花よりも地下部の根のほうが早いことに気づきます。植物の生長は光合成で作られた「糖」が植物の各所に送られることによって行われますが、糖が送られるのは優先順位があります。

生育初期から着果前の開花期は、①根、②若い葉、③花の順で糖が分配されます。定植直後の管理が根張りに影響するのはそのためです。
収穫期は、①果実、②若い葉、③花および根の順で分配されます。着果負担が大きいと、生長点が細くなったり、花が弱り着果しなかったりするのはそのためです。また、根は糖の分配の優先順位が低いので、環境の変化に影響を受けやすくなります。たとえば、光合成が不十分だと、根は極端に減ってしまいます。

このように実は根は正しい環境制御ができているかどうかがいち早くわかるので、根をこまめに観察していると、生育状況の早期発見につながります。正しい栽培環境を作れているかどうかは根にしっかりと現れますので、根の観察をしっかりとしましょう。

【問い合わせ】
TEL 080-3396-5399
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