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おいしいトマトの作り方 (高糖度トマト) -続編-

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今回はおいしいトマトの作り方の続編になります。
「おいしい」というのは人それぞれ感じ方が違います。僕はトマトでは高糖度で甘みも酸味も強いガツンとくるタイプのものをおいしいと感じますが、私の家内は水っぽい優しい味のトマトがおいしいと感じるようです。

おいしいというのは人それぞれなので、ここでは「おいしい=高糖度=高品質」としてお話をしていきたいと思います。

今回はかなりメカニズム的な話になります。「ふむふむ、へぇ~・・」ぐらいの感覚でよんでもらっていいです。

高品質の野菜の栽培を実現する要因は複雑多岐に渡るため様々な意見があります。その中で養分の吸収のあり方にから見てみると、カリ(K)を重視したり、リン酸(P)を重視したりすることがありますが、共通しているのは窒素(N)の過剰吸収は高品質にはマイナスになるということです。

(キャベツの窒素施用と糖含量)

キャベツでも窒素の多施用は収量を多くはしますが、糖分含量は低下します。ところで高品質の野菜作りには古くから有機物の施用がいわれてきました。キャベツでも糖度が向上しています。しかし有機質肥料の施用と糖度のとの関係はマイナスの作用はありませんが、必ずしも高糖度化するとは限りません。

(有機質肥料と無機質肥料施用の露地トマトのビタミンCおよび全糖含量)

上のグラフはトマトについて調べたものであるが葉物と違って果菜類は有機質肥料を使ったからといって 直ちに糖度向上とはなっていません。高糖度化には複雑な仕組みがあるものと考えられます。

〇高糖度化の光の影響は?
養水分吸収とは別に高品質化の要因として光線量を重視する見方もあります。当然ながら同化作用は生活の中心であり、これらを左右する光線量は品質・糖度にも強い影響を及ぼすことが想像されます。

ところが上の表によると違った結果になっています。
遮光を強めるとビタミンC(C₆H₈O₆)は減少していますが、全糖度及び糖類の減少は意外に少ないです。トマトの甘みを中心にみた場合、その支配的な要因は古くから言われているように根からの水分制限のようです。

〇やっぱり養水分吸収の影響が大きい!
養分は水に溶けた状態で根から吸収されます。養水分の吸収の仕方は大きく2つの方法があります。
1つ蒸散による吸い上げ(受動的吸水)、もう一つは浸透圧による吸水です(能動的吸水)。後者を「根圧」いい 健全な土壌では植物はこれを利用して水を取り込むことができます。
植物の吸水量は蒸散による受動的吸水の方が、根圧による能動的吸水よりも圧倒的に多いです。

受動的吸水は植物の葉で蒸散した分だけ根から吸収するものですが、春先から夏季のように温度が高くなると蒸散量はドンドン多くなります。その蒸散量を補うため根からはドンドン吸水されます。ポイントとしては窒素(特に硝酸態窒素)は非常に水に溶けやすいので、水に溶け込んだ窒素も水の吸収に伴ってドンドン吸収されることになります。

窒素が植物体内に取り込まれると葉で作られた光合成産物である糖と反応をして、アミノ酸→タンパク質への変化し、植物の体を作っていきます。

ここがポイントで、光合成で作られた糖がアミノ酸・タンパク質へと変化してしまうため、植物体内の糖の含有量が減少してしまうことが起ります。

つまり窒素の過剰吸収が植物体内の糖を減らし、高品質(高糖度)を阻害しているということがわかります。

〇水ストレス栽培のポイント
水ストレス栽培のポイントとしては、与える水を減らすことで、植物体内に取り込まれる水(H2O)自体を減らし、果実の密度を凝縮するとともに、水と一緒の取り込まれる窒素の量を減らすことが大事であるといえます。

収量を増やすために窒素肥料をたくさん与えた状態で、水も多く与えると食味は悪くなりますので、窒素の施用は栽培目的に応じて適切に!

(※果菜類の高糖度化のメカニズムは諸説ありますので、あくまで参考までに!)


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