見出し画像

おいしいトマトの作り方!(高糖度トマト)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。農作物の栽培をされている方なら誰でも「おいしい」って言われたいですよね。自分が育てた農作物が「おいしい」って言われることはすごくうれしいし、よりおいしいものを作ってやろうと励みになります。そこで今回は甘いトマトの作り方についてお話したいと思います。

スーパーマーケットにはさまざまなトマトが並ぶようになりました。生鮮売り場に行くとトマトだけで大小、色とりどり数種類の特設コーナーが設けられていたりします。中でも高糖度や機能性のトマトの需要は年々高まっています。

「高糖度トマト」は、その名の通り、高い糖度が特徴のトマトで、フルーツ感覚で食べることができるので「フルーツトマト」と呼ばれたりしています。そりゃフルーツのように甘いトマトはみんな大好きですよね!

ただし、日本ではトマトを生で食べるのがふつうですが、世界ではトマトを加熱調理して食べるのが一般的ですので、甘いトマトが普及している日本は珍しい国なのです。ですから外国の方が日本で甘いトマトを食べるとビックリするようです。
そういったこともあり、日本では品種の開発だけでなく、甘くなるような栽培技術も発展してきました。

<高糖度トマトは高値で売れる!>
日本では'桃太郎'トマトに代表されるおいしいトマト品種の開発と栽培技術の確立により、トマトの生食文化が広がってきました。特に、フルーツトマトの名で知られる果実のような甘さの「高糖度トマト」は消費者に大人気で様々なブランドの高糖度トマトが生鮮コーナーに並んでいます。

「高糖度トマト」は、フルーツ感覚で食べられることから、高付加価値なトマトとして消費者に認知されるようになりました。消費者の多くは、食味がよいトマトを好み、量販店などは、消費者が好む「高糖度トマト」を売れ筋として捉えています。

「高糖度トマト」は通常のトマトに比べて高価格で販売されるため、以前から栽培技術に関する研究が行われてきました。トマトの生産者も、高価格の取引が期待できる点に着目し、「高糖度トマト」を栽培する生産者は独自のノウハウをもって栽培に取り組んできました。

しかし、「高糖度トマト」は生長スピードが早い夏秋栽培では難しく、安定供給するには栽培法や品種、施肥管理、作付体系、環境制御などの課題を総合的に解決していく必要があります。

最近は高糖度トマトも市場にあふれてきており、また特別な栽培をしなくてもそれなりの糖度がでる品種も開発されてきているので、以前のように高い価格で売れなくなってきています。


<甘みはトマトのおいしさの大きな要因>
一般に売られているトマトの糖度(Brix値)は通常4~5%程度です。トマトのおいしさは 甘み(糖)× 酸味(有機酸)× うまみ(グルタミン酸)のバランスですが、中でも糖はトマトのおいしさを左右する最も大きな要因の一つで糖が多いと甘みが増します!
甘いトマトは好きですよね。

一般的に栽培されているトマトに含まれる糖成分は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フラクトース)です。これらブドウ糖も果糖もどちらも光合成産物ですので、トマトの糖含量を高めるには、光合成をしっかりと行わせつつ、与える水を少なくすることにより、果実に流れ込む水分量が減少することから、果実が濃度の濃い、味がギュッと濃縮されたトマトになるわけです。
糖度がどのくらい以上から「高糖度トマト」と呼ぶかは正式には決まっていませんが、一般的には8%程度以上のトマトを「高糖度トマト」と呼ぶことが多いようです。

<高糖度トマトを生み出す栽培技術>
高糖度トマトのサイズはどれも小さいのが特徴です。それは与える水の量を少なくして、果実がギュッと凝縮された状態になるからです。多くの高糖度トマトは実は大玉トマトを利用して栽培しているものがほとんどですが、普通の大玉トマトと比べると明らかに小さいです。それだけギュッと絞られているということですね。

ただし、高糖度トマトは果実のサイズが小さくなるので、1つの樹からとれるkgベースでの収穫量はサイズが小さくなる分だけ減少します。
糖度を高めることと収穫高はトレードオフの関係にあるということができます。

(トマトの総収量と糖度との関係 (荒木原図))


<高濃度トマト栽培のポイント>

高糖度トマトづくりは、通常のトマトの栽培方法とは異なる栽培方法で行います。与える水の量を少なくする水ストレス栽培です。ほかにも液肥のEC値を高めて植物が水を吸いにくい環境にしてストレスを与える方法もあります。いずれにしても植物にとって水を吸いにくくしてストレスを与えるという意味では同じです。
本記事では与える水の量を少なくする水ストレス栽培をベースにお話をいたします。

●品種選び
高糖度のおいしいトマトを作るためにはまず品種選びが重要です。なぜならストレスをかけるとトマトは糖度が高まりおいしくなりますが、樹に負担がかかるため樹が弱ったり、病気になりやすくなったりしますし、また品種によってはストレスをかけることで、より効果的においしくなりやすい品種もあります。品種選びの条件としては以下の通りです。

・甘味の強い品種を選ぶ
・障害果が発生しにくい品種を選ぶ
・水ストレス栽培しても小さくなりすぎない品種を選ぶ

ことが大切です。

果実の大きさと糖度に相関関係が認められていますが、はじめて高糖度トマトに挑戦するのであれば、甘味が強い、障害果が発生しにくい、病気になりにくいといった条件の揃った「中玉トマト」や「ミニトマト」の品種を利用することをおすすめします。大玉トマトは水ストレスをかけると尻ぐされ果が発生したすいです。

おすすめの品種は、フルティカや千果などが挙げられます。特にフルティカはもともと優しい味わいなのですが、水ストレスをかけることで優しさに加えて深みのある味になりますので、僕はフルティカをイチオシです。また実が割れる率も少ないです。

●水分量に注意しよう
果実が大きくなる時期に、いかに水を少なくするかが高糖度トマトをつくるうえでのポイントです。ただし、枯れてしまっては意味がありませんから、慎重にデータの基づいて管理するほうが安全です。
土壌水分センサーなどを活用しましょう。例えば与える水の量を、土壌水分センサーの数値がpF2以上(※)になるように調整すると、桃太郎なら糖度7~8%以上の高糖度トマトが栽培できる可能性が高くなると言われています。もともと桃太郎より糖度の高い品種であるフルティカや千果であればもっと高い糖度が期待できます。

(土壌水分がトマトの果実品質、収量に及ぼす影響)

しかし、データだけでも十分ではなく、樹の状況を日々観察し茎の太さ、葉の大きさ、花の大きさ、葉の張り具合などを観察し、状況に応じて水分量を調整することが必要です。

なお、果実が育てば育つほど、水分ストレスによる効果が小さくなってしまうと言われているため、開花後できるだけ早く水の量を制御することがトマトの糖度を高めるポイントです。

※pF
pF とは、土壌の水分が毛管力によって引き付けられている強さの程度を表す 数値で、土壌の湿り具合を表す値でもある。 十分に水分を含んでいる土壌では、pF 値は低い。 逆に土壌が乾燥していると pF 値は高い。

●水はけのよい土壌を用意する
水の量を制御しても、水はけの悪い土壌では意味がありません。水がすぐに抜ける土壌を用意するのがポイントです。

●遮根シートで根域を制限
遮根シート(防根透水シート)を使って根域を制限するのもおすすめです。根がどこまで張っているかわからない状態では土壌水分もどこを測っていいかわからなくなると思います。遮根シートで根域を制限して適切に土壌水分状態を把握し、適切に水ストレスを与えましょう。

●雨よけをして水分を制御する
高糖度トマトをつくるために水ストレス栽培をするなら雨よけは必須です。家庭菜園の場合でも、雨の日はできるだけ雨がかからない軒下に置くなどしましょう。

●低段栽培がやりやすい
水ストレス栽培はトマトの樹に大きな負担をかけます。人間にとってはおいしくなってうれしいのですが、トマトの樹にとっては過酷な状態なのです。ですからどうしても樹は弱りやすくなり、樹が弱ると病気も出やすくなります。
そのようなことからよく行われている方法として、収穫を6段目まで程度で終える低段栽培です。トマトは環境制御がしっかり行われている環境だと20~30段まで収穫できますが、それを6段程度までにとどめ、6段目の収穫が終わると新しい株に植え替える年2回栽培などが行われていたりします。段数が進むにつれ、樹は弱ってきますし、味も維持するのが難しくなります。味が悪くなるとせっかくの「おいしいトマト」というブランドも潰れてしまいますので、味が維持できる6段程度にとどめる方法です。また、夏のシーズンはどうしても生長が早くなるので味が落ちやすくなるため、夏の時期を前作と後作の切り替えのタイミングにしてしまうという作型がよく行われています。

<濃い緑色のベースグリーンが出てきたら美味しいトマト!>
トマトのヘタ付近の濃い緑色を「ベースグリーン」といいます。通常、トマトは葉で光合成を行い栄養素を蓄えますが、水ストレス栽培など水分を十分に吸えない状態で栽培されたトマトは実自体でも光合成を行おうとし、このベースグリーンが現れます。

ベースグリーン

栽培期間中においしくなるトマトを見分ける方法は、赤く熟していくにつれてグリーンベースは見えにくくなりますが、ヘタ付近にベースグリーンが現れたトマトは、美味しいトマトになります。

また、実が赤くなり下の写真のように中心部から放射状に線が伸びた状態をスターマークといいます。このスターマークが出ていれば高糖度であることは間違いなし!

スターマーク

「おいしさ」は簡単にはできません。多くの時間と手間と観察力と、場合によってはコストもかかってきます。
しかし農作物を栽培しているとやっぱり「おいしさ」の追求はしたくなりますよね!


【問い合わせ】
TEL 080-3396-5399
MAIL t.ogawa19720117@gmail.com


【関連記事】--------------------------------------------------------------------


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?