暑さ対策は植物の能力を使おう!(蒸散)
こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。植物は体温を周辺の空気の温度に合わせようとします。気温が高いと植物体の温度も上がり呼吸量が増えます。呼吸量が増えると光合成で作られた糖(C6H12O6)が多く消費され、果実や生長点で使える分が少なくなってしいます。強い日射は植物体温度をさらに上昇させます。
葉は蒸散によって温度を下げることができますが、強すぎる光を受けると葉温が上がり呼吸が増大し葉焼けの原因にもなります。
花は蒸散できないので強日射によって温度が上がると受粉しにくくなり、トマトでは不着果の原因となります。
果実も蒸散はできません。そして果実は水分が多いため 蓄熱しやすく果実温度は気温よりも高くなります。トマトでは 果実の高温は着色不良の原因となります。
植物の栽培において重要なのは気温ではなく植物体温度です。植物の各部位を実際に触ってみて植物体温度がどのような状態にあるかしっかりと把握しましょう。
高温対策が難しいのは単一の資材や機器では解決できないことです。複数の機器の組み合わせが必要です。もちろんお金を無尽蔵にかければ高温対策はできるでしょうけど、農業経営の観点から現実的に考えると、できるだけお金を掛けずにできることをやっていくことが大事です。 最近人気のある「遮熱材」、そして「換気」、加えて植物自体にしっかりと働いてもらう「蒸散」などで対策するのが良いと思います。
<遮熱材>
太陽からの光は約50%が光合成に利用できる光合成有効放射、 残りの45%がハウス内の温度を上げる赤外線で5%が紫外線です。
夏、光合成に必要な有効放射はハウス内に多く取り入れたいのですが、温度を上げる赤外線は減らしたいですよね。そこで大事なのが遮光ではなく遮熱です。つまり赤外線を取り込まないことですね。
遮熱の方法は様々ですが、効果が高い順に「ハウスの屋根に塗布する遮熱材」、「外被材に展張する遮光ネット」、「ハウス内部の遮光カーテン」です。
なかでも遮熱材で人気があるのがレディーヒートで赤外線をカットしてくれます。
遮光カーテンはハウスに一度入った光を反射するためハウス内部のカーテンの上部は熱くなってしまいます。また カーテンの上の骨材が熱を持ってしまいその熱がハウス内に留まってしまいます。
遮光ネットはネット自体が熱を持ち ハウス内から外へ熱が逃げる放射も防いでしまいます。
これらのデメリットがないのが遮熱材です。同じ遮光率でもハウス内の気温や植物体温度の下がり方が違います。
<換気>
遮熱材でハウスに入る熱を防いでもそれだけでは外気温よりも高くなってしまいます。そこでドンドン換気して外気を入れ続けることでハウス内の温度を外気温に近づけます。換気で一般的なのは天窓など換気窓を利用した自然換気です。しかし、現在のトマトやきゅうりのハウスでは病害虫対策で換気窓に目合いの細かい防虫ネットが設置されており、自然換気の効率がよくありません。
妻面に大きな換気扇を設置して強制換気をしているハウスもあります。しかし奥行きの長いハウスでは温度ムラが発生しやすく、天窓が開いた状態ではあまり効果がありません。
そこで換気には工夫が必要です。ハウス内空気の温度ムラができないようにダクトを利用します。暖房機のファンや強制換気などにダクトを取り付け、ダクトの端を縛り、途中で空気穴を数か所均等に開けることでハウス内部に均等に外気が入り込みますので、温度ムラを防ぐことができます。
換気による外気導入のポイントは1時間あたりの換気回数です。
最低でも1時間あたり3~4回は入れ替えたいところです。 換気回数はハウスの体積と循環扇や強制換気の送風量から求めることができます。
自分のハウスの体積を計算して必要な循環扇・強制換気を設置しましょう。
<蒸散>
換気をしっかりとして外気を取り込むことは高温対策だけではありません。空気を流動させることによって、葉面境界層を取り除くことで蒸散を促したり、外気のCO2を供給したりする効果があります。
換気により外気をしっかり取り込むことでハウス内の温度が下がると植物の活力が高まり蒸散量が増えます。植物の蒸散量が増えると気化熱によって葉温を下げるだけでなく、ハウス内の気温も下げることができます。そうなると植物の活力がさらに高まり蒸散が増えます。このような好循環が生まれればしめたものです。
植物の蒸散は空気中の水分を放出しますので、植物による細霧冷房(ミストシステム)と同じ効果が生まれます。
夏の暑熱対策は、まずお金を掛けずにできることからしっかりと行うようにしましょう。
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