命拾いは突然に

32歳女、本厄真っ只中。会社がなくなったり離婚したり、とにかく色々ありすぎてもういっそのこと早送りで2020年になって本厄を抜け出したい...。なんて思っていたけれど、久しぶりにパンチのある出来事が起こりました。

端的に言うと、電車に轢かれて危うく死ぬところだった。

ざっくりの経緯はこんな感じ↓

さっき踏切で線路の溝に車輪挟まって動けなくなった車椅子のおじいちゃんを助けるというハイパー得の高いことしたので褒めて😇

いやーびっくりした
踏切降りて鳴り始めちゃうしおじいちゃん重くて車椅子動かんし

助けてくれたママさん&外国人のお兄さんありがとう😭

— みおり@おしゃれを仕事にするフリーランス (@MirainaruMe) November 5, 2019

夕方4時半ごろ、市役所に行く用事があったので慌てて家を出た。市役所までの道のりには駅があり、踏切がある。その日は休みだったのでスニーカーにデニムにリュックというラフな格好。帰宅時間前で人はまばらだった。いつも通り踏切を渡って、あぁこの時間なら十分間に合うかな、なんてひとりごちていたところ、

踏切の真ん中で、電動車椅子に乗ったおじいさんが立ち往生していた。

見ると線路の溝に車椅子の前車輪（かなり小さい）がはまって動かなくなってしまったらしい。おじいさんは無言で手元のレバーを動かしているけれど、車椅子は一向に動かない。

「あの、押しましょうか？」声をかけてみたけれど、おじいさんはフガフガ言ってて返事はない。あ、これもしかしたら入れ歯忘れてしゃべれないパターン？死んだじいちゃん思い出すわーなんて思いつつ。おじいさん後ろに回ってレバーハンドルをよいしょっと押し上げて

...あれ、持ち上がらない。めちゃくちゃ重い。無理無理無理！

びっくりした。老いたりとはいえ（失礼）成人男性だ。多分、5~60キロはあるだろう。ブレーキでもかけてんのか？と思うくらいにっちもさっちも動かない。

そうこうしてたら踏切が鳴り始めた。え、うそ、まじで？！

押したり引いたりしても、びくとも動かない。線路の反対側から40代くらいの女性が駆け寄ってきてくれた。でも、重い。なかなか動かない。
ついに踏切のバーが降りてきた。今度はそのバーを押し上げて、外国人の若者が走り寄ってきてくれた。多分近所のベトナム料理かインドカレーかどっちかの店員さんだ。

最後は3人がかりで車椅子を引っ張り上げ、なんとかバーの外へ出た。電車が轟音を立てて通り過ぎて行く。心臓がばくばく音を立てて気持ちが悪い。なぜか、当のおじいさんだけは電車を指差して笑顔を見せていた。相変わらずフガフガ言ってて何も聞き取れなかったけど。

電車が通り過ぎて、また踏切のバーが上がる。おじいさんはゆっくり車椅子をUターンさせて、再び踏切に入っていった。（記憶がないのだけど、気がついたら車椅子は進行方向と逆を向いていた）女性の姿はもう見えない。若者は軽く会釈をすると、そのままおじいさんの後を追って踏切を渡るのを見届けてくれた。

私は、そうだ市役所閉まっちゃう、と言い聞かせておじいさんに背中を向けて歩き出した。帰りにスーパーへ寄って夕食の材料を、と思っていたけれど頭が回らない。自炊は諦めて、出来合いの弁当を買って帰宅した。

気になって調べてみたら、やっぱり電動車椅子の踏切事故は多いみたい。ググったらyoutubeが出てきたけれど、この動画のように急なブレーキを切って車輪が横になってしまった訳ではない。前輪が小さすぎて段差を乗り越えられないようだった。素人目だけれど、設計ミスじゃないか?声を出して助けを求めようにも、彼には難しかっただろう。（入れ歯は大事だね！）

振り返ると、正味3〜5分くらい、あっという間の出来事だったと思う。でも、不思議なことに大事な部分の記憶が抜け落ちているのだ。どうやって車椅子を溝から引っ張り上げたのか、それは誰だったのか、全く記憶がない。
気づいた時には背中のリュックが踏切のバーに当たって、あ、抜けた、と感じた。そして誰かがそのバーを押し上げてくれ、私たちは踏切の外に出ることができた。

どうやら命拾いをしたらしい。

人を助けた、ということよりも、助けてもらった気持ちの方が圧倒的に強い。夜になってジワジワと、誰も助けてくれなかったら私も死んでいたかもしれない不安に駆られた。もし時間帯が違ったら、私一人だったかもしれない。そうしたら、非常ベルは鳴らせただろうか？車椅子のレバーから手を離すことはできたかな？いつものように大荷物を抱えて、ヒール靴を履いていても声をかけれただろうか？

それから、踏切のバーを押し上げて駆け寄ってくれた若者。降りてるバーをくぐって線路に入るなんて、私にはできなかったと思う。肝心なところの記憶は抜けているのに、彼が踏切に入ってきた瞬間だけは鮮明に、スローモーションで覚えている。バーをくぐるためにしゃがんだ瞬間、彼のポケットから青色のスマホが滑り落ちたところまで、妙にくっきり思い返すことができるのだ。

その日の夕焼けは、いつもより美しかった。

助けてくれてありがとう。

真っ先に駆け寄ってくれたメガネの3~40代くらいの女性と、勇敢な若者。前を通り過ぎるだけだったけど、今度お店に寄ってみよう。おじいさん、これからも長生きしてね。外出の時は入れ歯を入れた方がいいと思うよ！

誰も怪我をしなくて本当によかった。あー生きててよかった〜！！！！今日も飯がうまい！幸せなことですね。

それでは、また！