地方創生Miraiサロンとは、

今年度で、5年間の第1期「まちひとしごと創生総合戦略」が終了します。ここ1カ月くらい、各自治体を訪問し担当者にこれまでの取組についてお話を伺う中で、事業を広げすぎたことで焦点が定まらなかった、移住定住の取組成果が思うように上がらなかった、また、目立った取組ができず、当初の目標を達成することができなかったなどといった声が数多く聞かれました。本来、一人ひとりが生き生きと暮らし働くことのできる地域づくりを目指す一方で、KPI(主要業績評価指標)が先行し、本来向き合うべき人の営みに十分に目が向けられていなかったのではないかという印象を受けました。それは、自治体に限らず、大学が中心となり取り組んできたCOC+でも同様に、学卒者の地元定着という目標を意識するあまり、学生が自分の未来を主体的に選択することよりも、地元就職を優先してしまうようなことになっているのではないかと、この5年間自問自答してきました。

昨年度開催した「地方創生Miraiサロン」では、実際に山梨に移住した方をお招きして、移住するまでのプロセスやその中で直面した問題点などを伺うことで、今後の移住促進につながるヒントを探すことを目的としたトークイベントを行いました。当事者の声を直接聞くことで、数値目標ではなく、目の前にいる人の想いやその人生と向き合い、その中から何をすべきかをもう一度考える場を創ろうと考えたからです。

今年度のMiraiサロンでも、当事者にフォーカスをしたインタビューとディスカッションによるイベントをシリーズで開催することとしました。その第1回として、この7月まで東京有楽町の「山梨暮らし支援センター」で数多くの移住者の支援をしてこられた倉田 貴根さんをお招きします。山梨県甲斐市ご出身の倉田さんは、短大卒業後JAL国際線のキャビンアテンダントとして勤務した後に、マナー講座等の講師を経て、2013年から移住専門相談員としてご活躍されてきました。WEBにはない山梨の生情報を提供するとともに、それぞれの希望者にあわせたピンポイントでの人や組織を紹介することで、きめ細かな支援を行ってこられました。その高い能力や実績は、移住者のみならず、行政の方々にも広く知られるところかと思います。

通常のインタビューでは、倉田さんが実際にどんな支援を行ってきたのか、移住定住の促進には何が重要なのかといった経験談やノウハウを学び、次の取組に活かしていくことを目的とするかと思います。しかし今回は、それだけではなく、倉田さんご自身に焦点を当ててお話を伺ってみたいと考えています。支援とは、結局のところ、人と人との関係であり、その中でどれだけ相手に寄り添うことができるのかが大きなポイントではないかと考えています。実際の支援の中で、倉田さんが大切にされてきたことは一体何なのか、また、その支援を支えてきた倉田さんの想いとは何なのか、そして今、何を思うのかを共有・共感することで、これからの移住定住支援に本当に必要なことは何なのかを、新たな戦略づくりが進むこの時期に、改めて皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

文責:佐藤 文昭(山梨大学地域未来創造センター特任教授)

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