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ドルの価値って何が根拠なのか?

1971年までのドルは、一般的に「金本位制」の通貨といわれています。これは、正確な言葉ではありません。その内容は金兌換性です。FRB(連邦準備理事会)に自国の中央銀行がドルを提示すれば、1オンス(31.1グラム)の金を35ドルと引き換えに渡すというものでした。

金兌換のドルの購買力は、世界が条件をつけず認めてきた金の価値を裏付けにしていました。いわばペーパーゴールドともいわれる金ETF(金証券)と同じものが金兌換のドルでした。ただし、金とドルの交換は各国の中央銀行にしかできませんでした。通貨は有効な範囲を決めることができます。金と兌換が可能な通貨も金そのものではありません。

金は太古の昔から価値は変っていません。1973年以降のドルは金とドルの交換は停止されていますので、金の裏付けを離れた信用通貨です。金とドルの関係を見ると、1968年に1オンス35ドルだったものが、2023年11月15日現在、1オンス1962ドルとなっています。金価格は56倍上昇しています。

これは、つまり、ドルは金に対して1/56の価値になったということです。

(出典:TRADING ECONOMICS/金価格の推移)

こうしてみると、ドルは金に対して急激に弱くなっています。これは、信用通貨ドルの信認が下落している証拠ではないでしょうか。

なぜ、これほど価値が下がっている信用通貨のドルを何の疑いもなく「安心」と思えるのでしょうか。信用通貨は通貨発行量が増えれば1単位の価値が下がっていきます。

1971年の金ドル交換停止宣言(いわゆるニクソンショック)のあと、スミソニアン体制がスタートしました。そのスミソニアン体制もドル下落により、わずか2年で崩壊し、1973年からの変動相場制では、いくらでも増刷ができるため、金に対するドル価値は56分の1に下落しました。

それ自体では価値をもたない数字である単なる紙に数字が印刷されたものであるドルという紙幣に金で価値を裏付けたものが50年前までの金兌換制度でした。また、金は古来、価値が安定したマネーとして政府の法で強制されるからではなく、自然に世界が認めきました。

米国も建国から第二次世界大戦までゴールドバーを集めていました。1850年代にはゴールドラッシュがありました。欧州から見ると、米国は金と資源の新大陸だったのです。

金は昔から普遍的な価値を持つとされてきましたが、金を通貨とする制度には次の3つがあります。

①金本位制。金を通貨(金貨)とする制度をいいます。
②金兌換。金と交換できる紙幣(兌換通貨=金証券=金為替通貨)を通貨とする制度です。金兌換性では、一般に中央銀行がもつ金より多くの通貨が発行されます。
③金ペッグ制。金の価格を参照し、政府・中央銀行が通貨の価値を維持する制度です。

現在の信用通貨制度(不換紙幣、管理通貨、フィアットマネー/法貨幣)は、その国の国債の返済価値を担保にした制度です。

貨幣といった場合、これらすべてを含みます。現在の信用通貨は国債の返済信用を価値の源泉としていますが、その説明は日銀のサイトにもありません。世界の中央銀行も説明していません。

MMT(現代貨幣理論)にも信用通貨の価値の源泉、価値の根拠になる定義はありません。では、法が規定できない、政府や中央銀行も関与できない、そして担保もないビットコインが現在、高い価値を持って通貨として売買されているのはなぜでしょうか。

これにはもう少し掘り下げて考える必要がありそうです。

日本の預金の総額は、家計1,117兆円、企業344兆円の合計で1,461兆円あります。(2023年9月20日:日銀・資金循環表)預金は引き出せば現金になりますから、預金通貨といわれます。

(出典:日銀/資金循環表2023年第二四半期

東証の時価総額は、2023年10月末で829兆円あります。(日本取引所グループ・市場別時価総額)

この829兆円の株式は、市場で売却して換金できる資産です。株は売却すれば現金にはなるのですが、価格の変動が激しく、1年に15%から20%は変動します。そのため、通貨とは言われず、株式通貨という言葉は存在しません。

預金というのは、銀行に預けると書きますが、実際には銀行にお金を貸しています。そのため、預金は債権であり、通貨に変えることができる権利です。

株式も売却すれば通貨に変えることができる権利を持っていることであり、ビットコインも売却すれば通貨に変えることができるものです。

預金はインフレやデフレによって価値は変動します。期待インフレ率が高くなれば、その分価値が下がっていきます。日本では長くデフレが続きましたが、それは貨幣の価値が下がる現象でした。このように実は預金も価値は変動しています。

市場で売買されて価格が決まる株やビットコインは、実際に現金化するときにいくらになるか不明です。多くの人が売れば、株やビットコインは下がります。買う人が多ければ上がります。

私たちがマネーと考えている、現金(信用通貨)、預金、株式、ビットコインなどは、価値の根拠は次のようなものです。

①マネーは受け取った人が、その金額の商品への一般交換価値があると思うから価値がある。
②マネーは受け取った人も次に受け取った人も、その交換価値を認めると期待するから価値がある。

信用通貨に変換できるものをマネーと考えていますが、実は根拠はこういうことであり、オークションと何も変わりがありません。1973年からの変動相場制では、預金、株式、ビットコイン、あるいは一般商品まで価格を計る信用通貨そのものが、世界の外為オークションで決まっているのです。

オークションは欲しい人が増えれば価値は上がります。しかし、欲しい人が少なければ、価値は下がります。金兌換性であれば、発行さした国の信用が下がれば、金と交換することができますが、裏付けのない信用通貨は、ただ下がるだけです。

BRICSは2024年1月からは、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が加わり、世界のGDPの37%を占め、29.9%のG7を抜きます。さらに、加盟を希望している国もあり、その勢力は拡大しています。

これらの国々がドルを使い続けるか?信用し続けるか?基軸通貨と認め続けるか?

かなり疑問です。

今後も、世界の中でドルが一番人気ではあるでしょうが、これまでのように圧倒的な一番人気で他には対抗馬は全くない、という世界ではなくなるのではないでしょうか。

基軸通貨としてのドルの価値は、世界の情勢ともリンクしています。実質的には米国とロシア、NATOとロシアの代理戦争であるウクライナ戦争、そして、中東で勃発したイスラエルとハマスの戦争にもイスラエルの背後には米国があります。これらの戦争を世界は米国が正義の側にあるとは思っていません。日本ではいまだにロシアが悪とみなす向きが強いとは思いますが、前回のG20では、共同声明にはロシアを非難する内容は削除されました。世界は一方的にロシア悪とは見ていません。

代わりに、米国への見方が大きく変わってきています。

果たして、世界はドルを、米国を信用し続けるか?1973年以降の通貨制度は、価値があると思うから価値がある、次の人も価値があると思い続けるだろうと信じているから価値がある、こんな曖昧な価値に基づいた通貨です。

いや、ドルにはもう価値がない、と思う人が増えていくとき、ドルはどうなるのか。わずが、50年の歴史しか持っていない現在の通貨制度を永遠のものと思うのは、「勘違いである」、私はそう思います。

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