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【日経新聞をより深く】世界経済「失速」、2.7%成長 下振れ幅リーマン時超すIMF23年予測 欧州、ゼロに近づく~世界は恐慌と全面戦争か~

1.世界経済「失速」、2.7%成長 下振れ幅リーマン時超す

世界経済が失速するとの見方が強まっている。国際通貨基金(IMF)は11日改定の世界経済見通しで2023年の成長率見通しを下方修正し、米国と欧州、中国の経済を「失速」と表現した。インフレ抑制への世界的な利上げで、翌年度の予測としてはリーマン危機の当初よりも悲観的だ。世界はインフレへの懸念から、経済の落ち込みを警戒する局面に移る。

(出典:日経新聞2022年10月12日


(出典:日経新聞2022年10月12日)

IMFは23年の世界の実質成長率予測を2.7%と、前回7月から0.2ポイント下げた。この時期に公表する翌年の見通しで3%割れを見込むのは00年以降では初めて。この半年での下方修正の幅はリーマン危機時を上回る。新型コロナウイルス禍からの回復局面が暗転し、世界経済の3分の1が景気後退に陥ると見る。

先進国の成長率は0.3ポイント下げて1.1%とした。コロナ禍とリーマン危機の時期を除くと41年ぶりの低水準だ。特に厳しいのがユーロ圏で、23年は0.5%と0.7ポイント下げた。米国は22年が1.6%と0.7ポイントの下方修正になり、23年も1.0%へ減速する。中国は22年に3.2%とコロナ禍を除けば過去40年で最も低くなり、23年も4.4%にとどまる。

失速の見方の背景には急速な利上げがある。JPモルガン・チェース銀行が経済規模で加重平均して算出した世界の政策金利は3%を超え、リーマン危機が発生した08年以来の水準になった。

(出典:日経新聞2022年10月12日
(出典:IMF・世界経済の成長予測

世界経済の減速懸念が現実になりつつあります。IMFは前回に引き続き、世界経済の減速予想を発表しました。しかも、それはリーマンショックの時を超える景気悪化の予測です。IMFの発表のサマリーを見ておきましょう。

2.IMF世界経済見通し エグゼクティブサマリー

The global economy is experiencing a number of turbulent challenges. Inflation higher than seen in several decades, tightening financial conditions in most regions, Russia’s invasion of Ukraine, and the lingering COVID-19 pandemic all weigh heavily on the outlook.
世界経済は、多くの激動的な課題に直面しています。数十年ぶりの高水準のインフレ、多くの地域での金融引き締め、ロシアのウクライナ侵攻、長引くCOVID-19の大流行などが、今後の見通しに重くのしかかっています。

Normalization of monetary and fiscal policies that delivered unprecedented support during the pandemic is cooling demand as policymakers aim to lower inflation back to target. But a growing share of economies are in a growth slowdown or outright contraction.
パンデミック時に前例のない支援を行った金融・財政政策の正常化は、政策立案者がインフレ率を目標値まで引き下げることを目指し ているため、需要を冷え込ませています。しかし、成長率が減速している、あるいは明らかに縮小している国も増えています。

The global economy’s future health rests critically on the successful calibration of monetary policy, the course of the war in Ukraine, and the possibility of further pandemic-related supply-side disruptions, for example, in China.
世界経済の今後の健全性は、金融政策がうまく調整されるかどうか、ウクライナ戦争の行方、中国などでのパンデミックに関連した供給サイドの混乱がさらに生じる可能性などに決定的に依存しています。

Global growth is forecast to slow from 6.0 percent in 2021 to 3.2 percent in 2022 and 2.7 percent in 2023.
世界の成長率は2021年の6.0%から2022年には3.2%、2023年には2.7%に減速すると予測される。

This is the weakest growth profile since 2001 except for the global financial crisis and the acute phase of the COVID-19 pandemic and reflects significant slowdowns for the largest economies: a US GDP contraction in the first half of 2022, a euro area contraction in the second half of 2022, and prolonged COVID-19 outbreaks and lockdowns in China with a growing property sector crisis.
これは、世界金融危機とCOVID-19の流行急性期を除けば2001年以来最も弱い成長プロファイルであり、最大経済圏の著しい減速を反映している。2022年前半の米国のGDP収縮、2022年後半のユーロ圏収縮、不動産部門の危機が拡大している中国でのCOVID-19発生とロックダウンの長期化などである。

About a third of the world economy faces two consecutive quarters of negative growth.
世界経済の約3分の1は、2四半期連続でマイナス成長に直面しています。

Global inflation is forecast to rise from 4.7 percent in 2021 to 8.8 percent in 2022 but to decline to 6.5 percent in 2023 and to 4.1 percent by 2024.
世界のインフレ率は2021年の4.7%から2022年には8.8%に上昇するが、2023年には6.5%に低下し、2024年には4.1%になると予測される。

Upside inflation surprises have been most widespread among advanced economies, with greater variability in emerging market and developing economies.
インフレ率の上方へのサプライズは先進国で最も広く見られ、新興国や途上国での変動はより大きい。

Risks to the outlook remain unusually large and to the downside.
見通しに対するリスクは、依然として異常に大きく、下振れしています。

Monetary policy could miscalculate the right stance to reduce inflation.
金融政策は、インフレを抑えるための正しいスタンスを誤る可能性があります。

Policy paths in the largest economies could continue to diverge, leading to further US dollar appreciation and cross-border tensions.
最大経済国の政策方針は引き続き乖離し、さらなる米ドル高と国境を越えた緊張をもたらす可能性があります。

More energy and food price shocks might cause inflation to persist for longer.
エネルギーや食料価格のショックが大きくなると、インフレが長期化する可能性があります。

Global tightening in financing conditions could trigger widespread emerging market debt distress.
世界的な金融引き締めは、新興国債券市場の苦痛を引き起こす可能性がある。

Halting gas supplies by Russia could depress output in Europe.
ロシアによるガス供給停止は、欧州の生産量を低下させる可能性がある。

A resurgence of COVID-19 or new global health scares might further stunt growth.
COVID-19の再流行や新たな世界的な健康への恐怖は、さらに成長を阻害する可能性があります。

A worsening of China’s property sector crisis could spill over to the domestic banking sector and weigh heavily on the country’s growth, with negative cross-border effects.
中国の不動産セクターの危機が悪化すれば、国内の銀行セクターにも波及し、クロスボーダーの悪影響を受けながら、同国の成長に大きな打撃を与える可能性があります。

And geopolitical fragmentation could impede trade and capital flows, further hindering climate policy cooperation.
また、地政学的な分断は貿易や資本の流れを妨げ、気候政策協力の妨げになる可能性がある。

The balance of risks is tilted firmly to the downside, with about a 25 percent chance of one-year-ahead global growth falling below 2.0 percent—in the 10th percentile of global growth outturns since 1970.
1年先の世界経済成長率が2.0%を下回る確率は25%であり、1970年以降の世界経済成長率の10%に相当するため、リスクバランスは下方に大きく傾いている。

Warding off these risks starts with monetary policy staying the course to restore price stability.
これらのリスクを回避するためには、金融政策が物価安定のために軌道修正されることが必要です。

As demonstrated in Chapter 2, front-loaded and aggressive monetary tightening is critical to avoid inflation de-anchoring as a result of households and businesses basing their wage and price expectations on their recent inflation experience.
第2章で示したように、家計や企業が最近のインフレ経験を基に賃金や物価の期待を膨らませた結果、インフレが固定化されるのを避けるためには、前倒しで積極的な金融引き締めが重要である。

Fiscal policy’s priority is the protection of vulnerable groups through targeted near-term support to alleviate the burden of the cost-of-living crisis felt across the globe.
財政政策の優先順位は、全世界で起きている生活費危機の負担を軽減するために、短期的な支援に的を絞って弱者層を保護することです。

But its overall stance should remain sufficiently tight to keep monetary policy on target.
しかし、金融政策の目標を維持するために、全体的なスタンスは十分にタイトなままであるべきです。

Addressing growing government debt distress caused by lower growth and higher borrowing costs requires a meaningful improvement in debt resolution frameworks.
成長率の低下と借入コストの上昇によって拡大する政府債務の苦境に対処するためには、債務処理の枠組みを有意義に改善することが必要である。

With tightening financial conditions, macroprudential policies should remain on guard against systemic risks.
金融環境の引き締めに伴い、マクロプルーデンス政策はシステミックリスクに対する警戒を続けるべきである。

Intensifying structural reforms to improve productivity and economic capacity would ease supply constraints and in doing so support monetary policy in fighting inflation.
生産性と経済的能力を向上させるための構造改革を強化することは、供給制約を緩和し、そうすることでインフレ対策において金融政策を支援することになる。

Policies to fast-track the green energy transition will yield long-term payoffs for energy security and the costs of ongoing climate change.
グリーンエネルギーへの移行を早める政策は、エネルギー安全保障と継続的な気候変動のコストに長期的な見返りをもたらします。

As Chapter 3 shows, phasing in the right measures over the coming eight years will keep the macroeconomic costs manageable.
第3章が示すように、今後8年間で段階的に適切な対策を講じることで、マクロ経済的なコストは管理可能なレベルに保たれる。

And last, successful multilateral cooperation will prevent fragmentation that could reverse the gains in economic well-being from 30 years of economic integration.
そして最後に、多国間協力が成功すれば、30年にわたる経済統合によってもたらされた経済的福利を逆戻りさせるような分断を防ぐことができる。

3.分断回避はあり得るのか?

分断回避はあり得るのでしょうか。おそらく無理でしょう。

IMFの予測は下振れしております。これは、世界の景気は減速していくことはほぼ間違いないことを示しています。

英国は減税政策の発表から、国債も通貨も暴落して、年金基金が破綻の危機に瀕しましたが、その危機を脱したわけではありません。

依然としてポンドは対ドルに対して下落基調です。

(出典:TRADING ECONOMICS/ポンド-ドル為替レート

そして、国債の金利も急上昇して、一瞬下がるかに見えましたが、再び上昇基調です。

(出典:TRADING ECONOMICS/英国10年物国債利回り

この状況は英国が売られているということです。通貨も国債も大幅下落しており、未だ危機は続いています。イングランド銀行がどこまで支えられるのか。

この背景の根本には、英国の財政の脆弱さがあります。つまり、経常赤字国なのです。そのため、いざという時に、対応ができない。

インフレに苦しむ国民の人気をとるためにトラス政権が打ち出し減税政策。しかし、財政の裏付けのない減税政策に、ポンドも国債も売り浴びせられました。たまらず、イングランド銀行が介入したわけです。

およそ10%のインフレの英国は、インフレ対策のために金融引き締め、それによって苦しむ国民の人気取りには減税、しかし減税をすれば、通貨も国債も売られる。そのためにイングランド銀行が介入しますが、これは「金融緩和策」になりますので、インフレへのブレーキを思いっきり踏み込んで、急停止してしまったので、アクセルを思いっきり踏み込んでいる状況です。行先は「財政破綻」です。

英国は財政破綻の可能性はかなり高い。

しかし、対ロシアで強硬姿勢の英国は、ロシア産の安いエネルギー資源を拒否しているわけですから、インフレが収まることはありません。

英国はロシアに頭を下げて、エネルギーを譲ってもらうのが最も有効なインフレ対策のはずですが、それは難しい。

分断回避で、英国経済が救われることは無いでしょう。したがって、IMFの予測であっても楽観的であると思います。

また、イタリアも財政危機です。こちらは、保守政権の誕生でそもそもEUの方針に従うかどうかも怪しい。EU内での分断の可能性大です。

ドイツももはやなりふり構っておられない状況です。

さらには、米国とサウジアラビアをはじめとするOPECの関係も分断へと進んでいます。元々サウジアラビアは、米国との蜜月関係でここまで来た国です。それが、ロシア側についているのです。

サウジは、米国内で「サウジに対する武器売却の停止」「サウジからの米軍撤退」「OPEC諸国を違法は価格操作で訴える」(ウォールストリートジャーナル参照)の声が上がっているにも関わらず、「経済的利益のために減産が必要」との姿勢をとり続けています。中間選挙を控えるバイデン政権に協力する姿勢はありません。つまり、米国とOPEC諸国も分断です。

日本は・・・。世界の話題にあまり出てきません。出てきたのは、フィナンシャルタイムズのインタビューに答えが岸田氏のコメントぐらいでしょうか。

米国の属国と見られているのでしょうか、世界の話題に「JAPAN」はほとんど出てきません。出てくるのは、上記の金融政策が世界で唯一「大規模緩和継続の国」ということです。

いずれにしても、IMFのレポートの世界が協調すれば「他国間の協力が成功すれば」ということはありえなそうです。そう書かざるを得ないことは理解できますが、「幻想」と断言してもよさそうです。

世界の緊迫感が日本にはあまり伝わっていないように感じるのは私だけでしょうか。それが残念です。自分や自分の家族、会社、コミュニティなど自分の大切な人たちを守るためには「知る」ことがなければ、手を打てないと感じます。

「知る」ことの一助になれば。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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