【日経新聞をより深く】ドイツ、23年3月からガス価格に上限制 専門委が提案~どうなる欧州~
1.ドイツ、23年3月からガス価格に上限制
ドイツはエネルギー問題に苦境に立たされていますが、家計と産業を守るために、約28兆円の対策を打ち出してきました。
ロシアからの主な天然ガス供給のパイプライン、ノルドストリームからの供給が途絶え、代替措置を模索し続けている中での発表です。このままだと際限なく、ガス価格が上昇することへの対策と思われます。
しかし、ドイツ政府の財政は悪化します。今後、さらにドイツの金利は上昇するはずです。EUの財政の優等生であったドイツは財政的にも苦境に立たされます。
2.ドイツの現状
ドイツの10年物国債金利が上昇を続けています。
この原因は、インフレ率の高さにあります。
ECB(ヨーロッパ中央銀行)は政策金利を7月0.5%、8月0.5%、9月0.75%と引き上げ、現在は1.25%となっています。結果として、ドイツ経済は減速しています。
50を切ると不調となるPMI総合の指数は3カ月連続で50を切っています。しかも、だんだんと厳しくなっています。
エネルギー価格の上昇は止まらない、景気の悪化も止まらない。それはまさに典型的なスタグフレーションです。
しかし、問題はそれだけではなく、ドイツがエネルギー価格上昇に対する巨額の措置を講じることにイタリアやポーランドから批判が出ています。それは、ロシアからの安価な天然ガスが途絶え、原油の供給も減少すると、厳しいのはドイツだけではありません。
EU圏は各国厳しいのですが、財政的に実行可能なドイツが対策を講じてしまうと、EU内での格差が生じます。イタリアやポーランドは、ますます苦境に立たされます。
イタリアは財政危機がくすぶります。EU圏での格差によって、ドイツが多少なりとも落ち着くと、ドイツ国債は買われるでしょう。代わりに売られるのはイタリア国債。イタリアは財政破綻への道を一歩進むことになります。
3.ロシア報復攻撃
10月8日にクリミア半島とロシアを結ぶ「クリミア橋」で爆破テロがありました。ロシアのプーチン大統領は「今朝、ウクライナに対して大規模な攻撃を始めた」と表明しました。
また、米国はウクライナからの即時退避を勧告しています。ロイター通信によると、赤十字軍国際委員会(ICRC)は安全上の理由で、ウクライナでの活動を一時中断することも明らかになっています。
つまり、これはウクライナ全土への徹底的な攻撃が行われるということを意味しています。攻撃は国防省の提案などに基づき、エネルギーや軍、通信施設が目標と発表されています。ウクライナは無差別と主張すると思われますが、冷静に考えれば、ロシア側はエネルギーや通信施設、軍の施設を攻撃することで、ウクライナを機能不全に陥れることが第一の目標となるでしょう。
しかし、ウクライナはもはや、自国の資源で戦っているわけではなく、欧米の支援によって戦っているのですから、これは欧米とロシアの全面対決に移行したと考えるべきでしょう。
プーチン大統領も9月30日の演説の中で避難していたのは、西側、特に米国です。そして、その決意からすると、第三次世界大戦の可能性も高まったのではないでしょうか。
今後、EU圏がロシアとの関係改善を図らなければ、ロシアからのエネルギー供給が増加することは無いでしょう。
産油国で構成されるOPECプラスもロシア寄りであり、原油も減産となります。
ただし、この動きから世界景気の減退は確実でしょう。したがって、原油価格がどうなるかは微妙です。天然ガス価格は今後どうなるか。
ドイツ、さらにEU圏の今後の経済情勢は、ロシアの報復攻撃によって、さらに厳しい予測となるでしょう。特に原油と天然ガス価格の傾向によるといっても過言ではないでしょう。
EU圏は団結を保てるかどうか微妙になってきます。イタリアは保守政権であり、自国優先となると、フォン・デア・ライエンEU委員長の方針とは異なります。このまま、対ロシアに厳しい姿勢をEU委員長がとり続けることに頑固なままだと、EUそのものが崩壊しかねない状況となるでしょう。
いずれにしても、ドイツ、EU圏ともに、ロシアに対する厳しい姿勢、厳しい経済制裁によって、逆に苦境に陥っています。これにドイツやEU圏の人々は従っていくでしょうか。
民衆からウクライナ支援への疑問符が高まるのではないかと思っています。
未来創造パートナー 宮野宏樹
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