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【日経新聞をより深く】ドイツ、23年3月からガス価格に上限制 専門委が提案~どうなる欧州~

1.ドイツ、23年3月からガス価格に上限制

エネルギー問題に関するドイツの専門家委員会は10日、高騰するガス価格の抑制に向けた具体案をまとめた。12月に国民の負担軽減へ一時金を出し、2023年3月からガス価格に上限を設ける措置が柱だ。ショルツ政権は最大2000億ユーロ(約28兆円)規模の総合対策を表明済みで、実現すればうち900億ユーロ相当を投じることになる。

同委員会はドイツ政府の任命で立ち上がった独立組織で、大学教授などの有識者のほかエネルギー企業やシンクタンクのメンバーで構成する。ウクライナ危機に伴う資源価格の高騰で企業や家計の負担が増すなか、具体的な対策づくりを要請されていた。

委員会がまとめた中間報告書によると、負担軽減策は2段階で構成する。まず12月に一時金を支給することで、ガス価格の上限制を導入するまでのつなぎ措置として利用者の負担を直接和らげる。金額にして1カ月分以上のガス代が免除される可能性がある。

そのうえで、ガス価格の上限制は23年3月から24年4月まで導入する案を示した。具体的には、ガス価格を1キロワット時あたり原則12セントに抑えることで利用者の負担増を防ぐ。補助対象は過去の利用実績に照らしてガス消費量の8割となる見込みだ。産業用ガスは7セントに引き下げ、先行して23年1月から導入する案も盛り込んだ。

中間報告書の分析によると、新規顧客のガス料金は1キロワット時あたり平均で28セントに高騰している。1年前から4倍程度に値上がりしており、今冬にかけて家計や企業の光熱費がさらに膨らむ懸念も出ていた。

実際にはガスの使用量やエネルギー会社との契約によるものの、委員会の提案が実現すればガス代は大幅に下がる見通しだ。独紙ハンデルスブラットが比較サイトのベリボックスのデータから試算したところ、4人家族の場合で年間1366ユーロ(約19万円)程度の負担削減につながる可能性がある。

ガス価格の高騰を巡っては、ショルツ政権が9月下旬に最大2000億ユーロ規模の総合対策を表明していた。今回の提案が実現すれば、およそ900億ユーロが企業や家計の負担軽減に投じられる見通しだ。委員会は中間報告を経て、10月末までに作業結果をまとめる。

(出典:日経新聞2022年10月11日

ドイツはエネルギー問題に苦境に立たされていますが、家計と産業を守るために、約28兆円の対策を打ち出してきました。

ロシアからの主な天然ガス供給のパイプライン、ノルドストリームからの供給が途絶え、代替措置を模索し続けている中での発表です。このままだと際限なく、ガス価格が上昇することへの対策と思われます。

しかし、ドイツ政府の財政は悪化します。今後、さらにドイツの金利は上昇するはずです。EUの財政の優等生であったドイツは財政的にも苦境に立たされます。

2.ドイツの現状

ドイツの10年物国債金利が上昇を続けています。

(出典:TRADING ECONOMICS/ドイツ10年物国債金利推移

この原因は、インフレ率の高さにあります。

(出典:TRADING ECONOMICS/ドイツ・インフレ率


(出典:TRADING ECONOMICS/EU圏政策金利

ECB(ヨーロッパ中央銀行)は政策金利を7月0.5%、8月0.5%、9月0.75%と引き上げ、現在は1.25%となっています。結果として、ドイツ経済は減速しています。


(出典:TRADING ECONOMICS/ドイツPMI総合

50を切ると不調となるPMI総合の指数は3カ月連続で50を切っています。しかも、だんだんと厳しくなっています。

エネルギー価格の上昇は止まらない、景気の悪化も止まらない。それはまさに典型的なスタグフレーションです。

しかし、問題はそれだけではなく、ドイツがエネルギー価格上昇に対する巨額の措置を講じることにイタリアやポーランドから批判が出ています。それは、ロシアからの安価な天然ガスが途絶え、原油の供給も減少すると、厳しいのはドイツだけではありません。

EU圏は各国厳しいのですが、財政的に実行可能なドイツが対策を講じてしまうと、EU内での格差が生じます。イタリアやポーランドは、ますます苦境に立たされます。

イタリアは財政危機がくすぶります。EU圏での格差によって、ドイツが多少なりとも落ち着くと、ドイツ国債は買われるでしょう。代わりに売られるのはイタリア国債。イタリアは財政破綻への道を一歩進むことになります。

3.ロシア報復攻撃

10月8日にクリミア半島とロシアを結ぶ「クリミア橋」で爆破テロがありました。ロシアのプーチン大統領は「今朝、ウクライナに対して大規模な攻撃を始めた」と表明しました。

また、米国はウクライナからの即時退避を勧告しています。ロイター通信によると、赤十字軍国際委員会(ICRC)は安全上の理由で、ウクライナでの活動を一時中断することも明らかになっています。

つまり、これはウクライナ全土への徹底的な攻撃が行われるということを意味しています。攻撃は国防省の提案などに基づき、エネルギーや軍、通信施設が目標と発表されています。ウクライナは無差別と主張すると思われますが、冷静に考えれば、ロシア側はエネルギーや通信施設、軍の施設を攻撃することで、ウクライナを機能不全に陥れることが第一の目標となるでしょう。

しかし、ウクライナはもはや、自国の資源で戦っているわけではなく、欧米の支援によって戦っているのですから、これは欧米とロシアの全面対決に移行したと考えるべきでしょう。

プーチン大統領も9月30日の演説の中で避難していたのは、西側、特に米国です。そして、その決意からすると、第三次世界大戦の可能性も高まったのではないでしょうか。

今後、EU圏がロシアとの関係改善を図らなければ、ロシアからのエネルギー供給が増加することは無いでしょう。

産油国で構成されるOPECプラスもロシア寄りであり、原油も減産となります。

ただし、この動きから世界景気の減退は確実でしょう。したがって、原油価格がどうなるかは微妙です。天然ガス価格は今後どうなるか。

ドイツ、さらにEU圏の今後の経済情勢は、ロシアの報復攻撃によって、さらに厳しい予測となるでしょう。特に原油と天然ガス価格の傾向によるといっても過言ではないでしょう。

EU圏は団結を保てるかどうか微妙になってきます。イタリアは保守政権であり、自国優先となると、フォン・デア・ライエンEU委員長の方針とは異なります。このまま、対ロシアに厳しい姿勢をEU委員長がとり続けることに頑固なままだと、EUそのものが崩壊しかねない状況となるでしょう。

いずれにしても、ドイツ、EU圏ともに、ロシアに対する厳しい姿勢、厳しい経済制裁によって、逆に苦境に陥っています。これにドイツやEU圏の人々は従っていくでしょうか。

民衆からウクライナ支援への疑問符が高まるのではないかと思っています。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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