1.日銀、誰がために国債を買う
もしも、日本の金利が上昇したら、日銀の抱える含み損は日銀の純資産を上回り実質債務超過になるのではないか、とは私も何度も指摘してきました。
しかし、一方で、国債を売却しない限りは、日銀の場合は含み損であり、損失を計上する必要はなく、満期で償還すれば良いのだから問題ないという意見もあります。
もし、実質債務超過となった際に、日本の金融財政政策の持続性に疑いの目が向けられることも十分に考えられます。そうなると、日本への投資は止まり、円安が加速する、国債価格が急落して、長期金利が急上昇するということも否定できません。
2.次の金融危機の懸念の一つが日銀の金融政策
日銀の「イールドカーブ・コントロール」政策のもと、指標となる10年債の金利をゼロに近づけるために、日銀は国債購入を続けています。市場は、それをいつまでも続けられないのではないか、最終的に黒田総裁の政策撤回させ、金利上昇を容認するのではないかという思惑が高まっています。
3.日銀の苦悩
上記は日銀のバランスシートです。パンデミック以降、急激に国債購入を増やし、金融緩和を促進したことが割ります。そして、2022年4月をピークに国債の保有残高を減らしていたのです。いわゆるステルステーパリング(隠れた量的緩和縮小)を行っていたと思われますが、2022年9月から再び資産購入額が増えています。
このステルステーパリングは、何度か起きているのですが、金利が上昇したことを受けての日銀の動きと思われます。
10年物国債金利の動きをみると、明らかに日銀が上限とする0.25%に達してる状況となっています。日銀は長期金利の上限を0.25%程度に抑える方針に沿って国債を無制限に買い入れています。米欧の利上げで日本の金利にも上昇圧力がかかり、日銀は大量購入を余儀なくされています。
10月の買い入れ額は12.5兆円と、6月に次ぐ過去2番目の大きさでした。10月末時点での日銀の保有比率は51.3%と過去最高を更新しています。
日銀の国債購入の動きをみると、何とか減らしたいという意図も見えます。しかし、世界の金利が上昇していく中、低金利を保つためには、どうしても国債購入が必要となり、保有比率は上昇していき、保有残高も増えていきます。
そして、保有残高が増えれば増えるほど、金利が上昇すれば、含み損が増えます。
果たして、日銀はこの悪循環のループをうまく抜け出して、金融正常化へ動けるのか。
極めて難しい舵取りをしなければならない日銀。黒田総裁の任期は2023年4月8日です。大きな節目を迎える日銀は今後、どのような金融政策を打ち出していくのか。世界は日銀の金融政策に注目しています。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】