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金利上昇に脆弱な日本

円高が進行しました。2023年11月22日の本記事執筆時は148円台。

(出典:TRADING ECONOMICS/ドルー円為替相場)

とはいえ、これを円高が進んだと書く状況が、いかに日本の円安が進んだかを表すものですが。

日銀の2023年10月31日発表の「経済・物価情勢の展望」ではコアCPIは2.8%に引き上げられています。

(出典:日銀・「経済・物価情勢の展望」

引き上げたとはいえ、2025年度には急速に下がる予想をしています。これほど簡単に下がるでしょうか。長期金利が1%以上に上がっていかないように、低い物価予想を出し続けているのが日銀ではないかと思えます。

もし、日本が利上げをすれば、困るのは米国です。日本が金利を上げれば、日米の金利差で買われてきた米国債は、日本の銀行からの買いが減り、売りも出てきます。その結果、円高/ドル安となり、海外からの資金流入が必要な米国が困るわけです。

日銀が低金利でいてくれることは、誰よりも米国に恩恵があり、円安の目的の一つは、米国に資金を供給することだと思われます。

世界の債務残高は307兆ドル(4京6050兆円)もあるので、わずかな金利の変化で利払いが増加します。

1%の金利上昇が世界の負債を持つ側の利払いを400兆円増やします。0.5%の金利上昇でも重大な理由はここにあります。

日本の金利は、日銀が1200兆円ある既発国債の価格を下げないため、イールドカーブ・コントロール(YCC)の方法を取って長期金利を抑える金融抑圧をしてきました。

しかし、日銀はさすがに3%超の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の(コアコア・インフレ)の上昇の長期化を見て、2023年10月31日に開いた金融政策決定会合で、長期金利を抑え込む政策「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の柔軟化を決めました。長期金利が1%を超えるのも容認すると変化しました。

(出典:TRADING ECONOMICS/日本の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の(コアコア・インフレ)上昇率)
(財務省:イールドカーブ/金利情報より筆者作成)

イールドカーブとは、低い金利と高い金利を期間で横に並べたグラフです。中央銀行は一般に短期金利にしか介入しません。長期金利に上限目標をつけ、長期国債の売買に介入するときをイールドカーブ・コントロールといいます。

日銀が本来なら関与しない長期国債を買うイールドカーブ・コントロールを実行している目的は、長期金利を上げないことにあります。

【金利と国債価格の関係】
<金利の上昇と国債価格の下落>
日本では政府の負債である国債が1200兆円と巨額です。1ポイントの金利上昇で7%(83兆円)も既発国債の価格が下がります。国債価格が下落すれば、53.2%の国債を持つ日銀、10.8%の銀行、19.15%の(特に長期債が多い)生損保、7.3%の政府系金融機関(公的年金、年金基金)、7.3%の外銀は損失を抱えることになります。

長期金利が1%に上がると、日銀が44.7兆円、国内銀行が9兆円、外銀6.1兆円もの含み損になり、銀行間の貸し借りの重大な問題に発展します。

日本の長期国債の平均満期はおよそ8年と思われます。2022年までの平均金利が0.1%付近の国債金利が1%に上がった場合、国債の価格は以下のように下がります。

1200兆円×[(1+0.01)^8÷(1+0.01)^8]=1117兆円  (^は乗)
1200兆円-1117兆円=83兆円・・・7%下落

もし、金利が2%に上昇すると168兆円(14%)下がって銀行の全自己資本が失われ、銀行B/Sは債務超過となっていきます。

日銀が金利を放置すれば、4%台のコアコア・インフレに対応するように、市場金利は2%に上昇していくでしょう。

2024年のどこかの時点で長期金利が2%に上がっていくと、168兆円の含み損が既発の日本国債1200兆円をもつ金融機関に発生します。市場だけでは4%のインフレに対応できず、売られる国債価格は下がって金利は上がろうとしていきます。日銀が国債買い支えという、利下げ介入(市場が売る価格より高い価格で買うこと)を続けない限り、政府財政は破産します。

日本は政府が大量の国債を発行し、日銀が異次元金融緩和によって、大量の国債を保有することで、低金利を実現してきました。しかし、「やりすぎ」となってしまい、金利上昇に非常に脆弱な体質となってしまっているのです。

円安はインフレ要因です。世界で起きている紛争もインフレ要因です。そして、資源国が多いBRICS、グローバルサウスが経済発展してきており、資源の自国消費も増えていき、先進国に安く大量に売らなければならないということもなくなってきます。

平成の時代のようにデフレに逆戻りというのは考えにくいと私は思います。つまり、インフレが継続するということは、金利が上昇するということであり、少なくともこれまでのような金利0%という時代は終わりました。

過去を振り返ってみると、2000年以前は長期金利は2%を超えており、2%の金利、或いはそれ以上の金利というには、あり得ることです。

日本政府も、日銀も、金利上昇に非常に脆弱です。

円高傾向といわれていますが、それでもまだ円安です。金利も1%に近づいているとはいえ、まだ低金利です。コアコア・インフレ率がこのまま推移すれば、やはり金利は上昇傾向にあるでしょう。

金利上昇に脆弱な日本政府と日銀。そして、米国も欧州も、金利上昇には脆弱です。コロナ以降、極度に膨らんだ世界の負債高は、インフレをもたらし、そして、結果として金利上昇を引き起こしました。

金利上昇がもたらす副作用が本格化するのが2024年ではないでしょうか。

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