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【日経新聞から学ぶ】EU、債務削減を柔軟に--ルール改革というけれど、ルール維持が無理なのだ--

1.EU、債務削減を柔軟に

欧州連合(EU)は10日、プラハで開いた財務相会合で財政ルールの改革を討議した。高インフレを背景に景気後退リスクが高まるなか、今後も歳出圧力が強まるのは確実だ。財政難の南欧諸国を念頭に、債務削減に向けた財政健全化計画を柔軟に決められるようにする案が出ている。

会合後に記者会見した欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長は「加盟国間の債務の水準を考慮すると、一律に対応するアプローチはありえない」と述べ、加盟国により多くの裁量を与える考えを示した。欧州委は10月にも改革案を提示する。

出典:2022年9月11日日経新聞

2.EU財政ルールとは(参照:EUにおける財政ガバナンス加藤浩氏)


EUの財政ガバナンスの体系の要点は次のようなものです。
①基本的なルールと措置等
(1)基礎となる赤字ルール及び債務残高ルール
一般政府の財政赤字が対GDP比で3%、一般政府の債務残高が対GDP比で60%を越えないこととする基準があります。この基準値を超えているかどうか、超えていた場合はその比率が減少し基準値に近づいているかどうか等を、欧州委員会が監視します。

(2)予防的措置と是正的措置
1997年の欧州理事会決議と2つの規則に基づく「安定・成長協定」(StabilityandGrowthPact)と称される枠組みが形成され、予防的措置と是正的措置の2つの柱が立てられています。

ⅰ)予防的措置―中期予算目標に沿った財政運営―
各加盟国は、上述の基準値から乖離した過剰財政赤字(excessivedeficit)の発生を防止するために、各国の事情に応じた中期予算目標(MediumTermBudgetaryObjective)を定めます。中期予算目標から明らかに乖離した場合、EU理事会(CounciloftheEuropeanUnion)が、効果的な措置を講ずべき旨を加盟国に勧告します。中期予算目標においては、財政赤字削減ペースを判断する基準として、構造的財政収支の赤字の上限を対GDP比で0.5%までとします。
また、歳出の伸び率は中期的な潜在成長率に基づく歳入の伸び率を超えないという支出ルールが設定されています。

ⅱ是正的措置―基準値逸脱時の発動―
加盟国が財政赤字又は債務残高において、上述の基準値を超えて過剰財政赤字の状況にあるとEU理事会に判断された場合、加盟国に当該状況を是正させるための勧告や制裁を含む措置である「過剰財政赤字是正手続」(Excessive Deficit Procedure)が実施されます。
ただし、財政赤字と債務残高に係る上述の基準に反すれば直ちにこの手続が開始されるわけではなく、財政赤字や債務残高が継続的にあるいは満足のいくペースで基準値に近づいている場合等においては、手続を開始しないという例外規定が置かれています。

⑶予算枠組みの要件
各加盟国の予算枠組みの透明性の確保のために、最低限必要とされる国内法上の措置を規定する、前述の予算枠組み要件指令が発出されています。

3.ルールを柔軟にするというよりも、そもそも達成は無理なのだ


EUの財政ルールは、すでに達成は不可能と思われます。2020年のフランスの財政赤字は8.9%、2021年が6.5%です。公的債務の対GDP比は2021年が112.9%となっています。

EUの優等生のはずのドイツも2020年以降はGDP比3~4%の赤字、債務の対GDP比は70.21%。

以下、EU加盟国の債務残高の対GDP比を見てみましょう。

EU加盟国の債務残高の対GDP比

こうしてみると、EU財政のルールを守るというのは現実的ではなさそうです。インフレ率の上昇が続いており、EUは政策金利を引き上げました。金利の上昇は国債価格の下落を引き起こします。イタリア国債は売られており、再び債務危機の懸念が高まっています。

ヨーロッパはエネルギー危機、干ばつ、インフレ、そして財政問題と難問山積です。ヨーロッパの衰退が本格化するのではないでしょうか。

歴史は欧米が主導してきた時代から、「欧」が抜け落ち、「米」も一強というわけにはいかなくなり、多極化する世界にすでになっている気がします。

未来創造パートナー 宮野宏樹


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宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the world
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