2024年からの通貨と世界の動きを考える
【ウクライナと米軍の関係】
2000年代からのウクライナでは、親ロシア派の大統領が選挙で当選するたびに、CIAが親ロシア政権を倒して、米国の傀儡政権を作ることが繰り返されています。
2004年にはウクライナに親ロシアのヤヌコビッチ大統領が誕生しました。しかし、NATOの東方拡大(ロシアの分割を狙てっている)を目指す英米軍は、選挙をやり直させ、親米・反ロシアのユーシェンコを誕生させたのです。
西側のメディアはこれを「オレンジ革命」と呼び、ウクライナの民主化の革命となったとしていますが、画策したのはウクライナとロシアの資源の制圧を狙う英米でした。
ソ連崩壊の後、ポーランドやスロバキアはEUに加盟し、2007年にはルーマニアとブルガリアもEUに加盟し、NATO(米国とEUの軍事同盟)は当方に拡大していったのです。
倒された後、2014年の選挙で民主的に選ばれ復権していたヤヌコビッチ政権は「マイダン革命」によって崩壊させられました。マイダン革命は、当時のオバマ政権の副大統領のバイデンと、国務省のビクトリア・ヌーランドがウクライナ国民を扇動して起こした親ロ派政権のヤヌコビッチ政権打倒の運動でした。
マイダン革命の首謀者である米国務省のヌーランドが新しく樹立させようとした親米のウクライナ政権に関して、人事まで決めていた会話が録音されてリークされています。
ヌーランドが会話の中で列挙しているウクライナ政界の人物は「ボクシングの元ヘビー級世界チャンピオンであるクリチコやアルセニイ・ヤツェニュクなどで、彼女は「ヤツェニュク」を、「経済経験のある人物」として評価しています。後に発足した親米のポロシェンコ政権で、「ヤツェニュク」は首相に就任しています。
米国はこうした傀儡政権を作って、ウクライナを親米にし、対ロシアの前線としました。傀儡政権の誕生を米国のメディアは「民主革命」としていますが、それは誤りです。
親ロシアのヤヌコビッチを追放し、バイデンがウクライナに親米政権を作ったのは、ウクライナの資源利権を得るためでした。バイデンの息子のハンター・バイデンはウクライナのエネルギー大手ブリス社の取締役になっていたことが明らかになっています。バイデンは昔からはびこる賄賂と利権の政治家です。米政府が、ウクライナ支援金を提供することの条件が、息子の取締役だったからです。
【クリミア併合とその背景】
その後、ロシアのプーチン大統領は、米国のウクライナ干渉に対して、クリミアへの武力侵攻を起しました。ウクライナ東部以上にロシア人の住民が多いクリミアは、住民投票でロシアとの併合を選択したのです。
ロシアは、米国の傀儡のポロシェンコ政権(ヤツェニュク首相)を非合法な政権として非難していました。この時、ウクライナの東部のドネツク・ルガンスクの二州で、テロ的な住民の殺戮を行っていたからです。
2022年のウクライナ戦争は、プーチン大統領が米国傀儡であるゼレンスキーのウクライナをNATO軍に加盟させないことが目的でした。
NATO軍は核ミサイルを持ち、ロシアを1989年のソ連崩壊の時のように、小国家に解体する目的を持っているからです。目標を狙ったミサイルの配備はすでに戦争です。コンピューターのボタン1つで発射ができるからです。これは、20世紀初頭の古典的な戦争(第二次世界大戦まで)には、無かったことです。目標をピンポイントで狙う自己誘導型ミサイルを使う現代の戦争は、ITと情報戦を含むものです。
以上が、2022年2月からのウクライナ戦争の前にあった事実です。まとめれば、ウクライナ軍は、国際金融資本とペンタゴンの対ロシアの代理戦争を実行しています。
国際金融資本の目的はウクライナとロシアの資源の支配です。これは古典的な植民地戦略です。
G7の一員として西側メディアの米国が正義というプロパガンダ情報しかない日本政府と国民は戦争が始まって2年が経とうしている今もウクライナ戦争の実態を理解できていないのが実情です。
日本の海外情報は西側のメディアにほぼ100%依存しています。この点は、ロシア側に正当性を見出しているBRICS10カ国、グローバルサウスとの違いです。
【ウクライナ戦争はいつまで続くのか】
ロシア側のウクライナ戦争の目的は、ウクライナを中立国にして、EUと、対ロシアの軍事同盟であるNATOへの加盟を許さないことです。
米国側のウクライナ戦争支援の最終手目的は、ロシアのソ連崩壊の後の時のように小国家に分断し、1990年代のエリツィンの時代のように、ウォール街の金融資本(特に政商のゴールドマンサックス)がロシアの資源の生産と流通を支配することです。
現在、ロシア軍は、首都のキエフを誘導ミサイルで攻撃しています。兵器・銃弾・兵士が枯渇したウクライナ軍は満足な対抗ができず、ゼレンスキー大統領が「正義の」ウクライナ支援を求めて世界を巡っているだけです。
プーチン大統領の目的は西欧と米国の東方拡大を止め、多極化世界を実現することでしょう。
2024年は政治の年です。ロシアでは3月が大統領選です。ウクライナ戦争でも国民のプーチン支持は高まり、支持率は80%と言います。プーチンが再選するのは間違いないでしょう。
11月は米国の大統領選挙です。国民のバイデン大統領への人気は民主党内でも高くはありません。他方で、トランプ元大統領の支持はバイデンを上回っています。このままいけば、トランプが大統領に復帰する可能性が高い状況です。しかし、民主党はどのような手を使っても阻止の姿勢は崩しておらず、何が起きるかはわかりません。
もし、トランプ再選となれば、「ウクライナ戦争は24時間以内に終わらせる」といっているだけに、すぐに終わるのかもしれません。そうなれば、11月にはウクライナ戦争は停戦となるでしょう。ゼレンスキーは追放されます。米国議会は追加のウクライナ支援予算を通せていません。そのため、バイデン大統領は日本のマネー支援を持ち出してきます。
ウクライナ戦争は11月までにウクライナが力尽きて終わるかもしれません。長くても11月にトランプ再選で停戦が行われるという可能性が高いと予想します。
【ドル切り下げの懸念】
トランプ復活で懸念されるのは、持論でもある「ドル切り下げ」です。米国のドル建ての対外負債30兆ドル(4230兆円)と、経常収支の赤字の原因は、5%の高金利によるドル高にあるとしているからです。
ドルを1/2に切り下げれば、米国のドル建て債務は、負債の価値が1/2に低下します。一方で、米国の対外資産は現地の通貨建てなので、ドルの1/2への切り下げでドルに対しては2倍に価値が高まります。
例えば、米銀とファンド(ノンバンク)は、約800兆円の、時価総額の日本株の30%(240兆円)を持っています。1/2のドル安(=2倍の円高)になると、日本株は240兆円のままであっても、1/2に下がったドルから見れば、2倍の円資産になるのです。
以下の主体別株式所有を見てください。日本の金融機関とほぼ同程度外国人が所有しているのが現在です。
日本株は円建てです。1985年のプラザ合意のように、トランプがドルを1/2に切り下げると、為替の錯覚でもある円高効果によって、米ドルから見た日本株は円では同じ金額であっても2倍に増えたかのように為替利益が出ます。米国が持つ円の短期国債(150兆円)の為替価値も2倍に上がります。
米国はドル切り下げにより、一挙に現在とは真逆の対外純債権国になります。
一方、対外純資産国になる米国に反して、対外純債務国に転落するのが、ドル建てが80%の対外資産を1500兆円、円建ての対外債務(海外からの日本投資)1027兆円を持つ日本です。
対外資産1500兆円の80%がドル建てとすると、1200兆円となります。ドルが1/2に切り下がると、円での対外資産は1200兆円×50%=600兆円となり半減します。円建ての対外資産は1,027兆円のままです。結果、日本は対外純債務国に転落します。
トランプによるドル切り下げが大統領に復帰する2025年か、2026年か、2027年かはわかりません。ただ、トランプの支持層でもあるMAGA(MAKE AMERICA GREAT AGAIN)の政策は米国の復権であり、それは米国製造業の復権です。
米国が経常収支の赤字を減らして、貿易を黒字転換させるには、国際相場価格が高まり必需の資源と食糧の高騰と輸出の増加、米国製造業の輸出増が必要です。
いずれも「ドル安」が条件です。トランプがドル切り下げを実行するのは、グローバルな経済の自然な流れです。問題はタイミングだけです。
この流れの予測から考えられる対策としては、政府、銀行、企業、そして個人はトランプがドル切り下げを実行する前に、ドル対外資産とドル証券を売却して、利益を確定しておくことです。
しかし、今、日本では新NISAのスタートと共に米国株、債券買いを煽っており、政府とメディアは逆のことを言っています。ここで上げたのは予想であり、断言できることではありませんが、ドル資産に対するリスクとしてはかなり可能性の高い話です。ドル資産のリスクに全く入っていないのは問題です。
世界最大のファンドのブラック・ロック(運用残高は約1290兆円、22年12月末時点)のCEOローレンス・フィンクは日本を訪問し、岸田首相も国賓級として遇して迎賓館でもてなしたのです。
ドル債券、ドル株を買うようにと日本に営業に来たローレンス・フィンクをどんな理由があって岸田首相と外務省は迎賓館でもてなしたのでしょうか。一体、何がどうなったら、こうなるのか。フィンクは日本に「円マネー乞い」に来たのです。現政権はどこまで米国に従属すればよいのでしょうか。
小泉内閣・竹中平蔵が推進した郵政民営化(2007年)の時の記憶が甦ってきます。焚きつけた米国の目的は300兆円はあった郵政の資産でした。郵貯が持つ円国債を売って、代わりにドル国債と米国株を買わせることでした。
米国は日本の預金マネーを米国のために利用しようとし(当時のフィナンシャルタイムズ)、300兆円を米国へ振り向けたのです。小泉首相、竹中大臣は米国に乗ったのです。
今回、ドル株、ドル債券買いを世帯に促すものが新NISAです。政府と官僚は「日米合同委員会」を通じて、米国に従属しています。
政府事業の民営化は米国グローバリズムと、新自由主義のイデオロギーです。NISAを見ても、日本の政府と政治家は「日本を売り渡す結果」になる、新自由主義のイデオロギーに支配されています。
【ウクライナ停戦とペトロダラーの終焉】
プーチン大統領再選、トランプ大統領復帰で、ウクライナは停戦となるでしょう。それは、ペトロダラーシステムの終わりでもあります。BRICSと産油国が原油をドル以外の通貨で売ることに合意しているからです。
現在の米ドルは世界貿易(300兆ドル)の60%で使われています。いわば60%の基軸通貨です。ドル以外の通貨が原油決済で使われるようになると、ドルの使用量は下がりますから、ドルは30%程度のシェアを持つ基軸通貨になっていくでしょう。BRICS+産油国+グローバルサウスのGDPの合計はG7より大きくなってくるからです。
BRICSの共通通貨もデジタル通貨として登場してくるかもしれません。これはBRICSデジタル通貨が基軸通貨になるという意味ではなく、通貨の多極化が起こるということです。
貿易通貨は凡そ次のような割合になるのではないでしょうか。
①ドル 30% G7、西側
②BRICS共通通貨 30%
③ユーロ 10% ユーロ圏
④その他通貨 30%
これは現在の世界の貿易用の外貨準備(15兆ドル:2130兆円)のうち、約8兆ドル(1136兆円)のドルが売られることです。当然ながら、「売り」が「買い」より増える通貨は下がります。このドルの下落が2024年、2025年、2026年にかけて順次起きてくるでしょう。これにトランプ大統領復帰でどこかのタイミングでドル切り下げがあれば、ドルの基軸通貨の終焉がそこで完了します。あくまで推測ですが。
金はドルの反通貨です。ドルのレートが下がると、ドル売り、金買いが増えて、金価格は上がっていくでしょう。1980年のイラン革命の時の金価格の高騰が近いイメージになるのではないでしょうか。(1オンス200ドルが750ドルに上昇)
ロシアの外貨準備3000億ドルの米銀による凍結は、イランのイスラム革命の時のイランの外貨準備を米国が凍結したことと全く同じです。この時の中東の産油国は「買いが準備のドル預金100%は危険だ」として、米国が懲罰として差し押さえができない金の購入に走りました。その結果が、200ドルだった金価格が短期間に750ドルへの上昇でした。
今回はBRICS、グローバルサウスのドル外貨準備の売り、金買いがあります。ただし、これを短期で行うと、購入する際の金価格が急上昇していしまい、十分な量が買えません。1980年の経験からBRICS、グローバルサウスの国々は1年に1000トン程度(時価で20兆円、金生産量の1/4)の金を購入して少しずつ上げていくはずです。供給量が少ない金を買う時は「少しずつ購入を増やす」必要があります。
2024年、2025年、2026年は世界が多極化していくと同時に、通貨も多極化することになるでしょう。
私たちもしっかりと世界を見ておく必要があります。
自分が関心があることを多くの人にもシェアすることで、より広く世の中を動きを知っていただきたいと思い、執筆しております。もし、よろしければ、サポートお願いします!サポートしていただいたものは、より記事の質を上げるために使わせていただきますm(__)m