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過ぎ去ってみたらイヤイヤ期

先日、「トイトレ終了」というnoteを書いた。

しかし、今になって振り返ってみると……

トイトレ終了以前に、イヤイヤ期も終了していたっぽい。

棒が大好き

イヤイヤ期。
第一次反抗期とか、魔の2歳児とも呼ばれる。
とにかく自己主張が強くなって、何でもかんでも文字通り「イヤ!イヤ!!」になる状態のことである。
一般的には、1歳後半から3歳ころまで続く。

むろん、成長過程としてはここを通ることはとても大事なのだそうだ。
イヤイヤ期がないと、親が怖くて自分の意見を出せないとか、自己主張が苦手とか、別の心配が出てくる。
だから、イヤイヤ期を通ったということは健全に成長していると言っていいはずだ。

先輩ママ(子どもは中学生)のいる美容院で「子どもがイヤイヤ期で……」とボヤいたら「おっ!順調ですねぇ^^」と言われてびっくりしたのだが、つまりそういうことだ。(瞬時にこの返しができるあたり、すごい先輩である。当時、イヤイヤ期真っ只中にいた私はそれどころじゃなかったが…)

振り返ってみれば、娘のイヤイヤ期は2歳直前に始まり、3歳になったかならないかあたりでぴたりと収まった。ちょうど1年ぐらい、今から2ヵ月前のことである。

しかし、そのときはまだ、イヤイヤ期が終わったとは気づいていなかった。
子どもの成長とは、ある日突然切り替わるようなものではなく、過ぎてみて初めて「そういえば最近◯◯じゃなくなったなぁ〜」と感じるものだからだ。

娘がイヤイヤ期を迎える前から、私はイヤイヤ期なるものをとてつもなく恐れていた。どうか来ないでほしい、来ても軽めで終わってほしい、と虚しい願いを心の中で唱えていた。
しかし、当然イヤイヤ期は来たし、内容も激しかった。よその子とは比べられないが、自分にとっては本当につらい1年であった。

1年。文字にすればたったの2文字。
しかしこの1年が、どれだけ長く感じたことだろう。

保育園にいる時間をのぞき、毎日一緒。ご飯もお風呂も寝るのも一緒。長く離れたのは、数ヶ月前に私が一泊二日で旅行したときが最長だ。
土日は朝から晩までみっちり遊び、こっちが具合が悪かろうが、仕事が詰まっていようが、娘の休みと機嫌と体調に合わせるしかない。
基本的に、どんなにキツくても、娘と離れることはできなかった。それが信じられないぐらいストレスの元になった。

動物園のトラ

第一に、保育園行きしぶり。
保育園は大好きで、保育園がイヤというわけではない。ただただ毎朝着替えをごね、準備をごね、車に乗りたがらず、イヤだイヤだと繰り返した。
優しく言っても、怒っても、今日保育園でどんな楽しいことがあるか述べても、先生やお友達が待ってると言っても、どんなおいしいおやつや給食が出るかを連ねても。
1時間遅れで行った日もあれば、1時間半もかかりついには保育園から電話がかかってきたこともある。

一番効果があったのは散歩だ。家の前を15分〜30分も三輪車で歩き、木の枝や木の実を拾って帰るとすんなり車に乗った。
おかげでそれまでより1時間早起きする癖がついた。私の運動にもなり、四季を感じられた点はよかったともいえる。
しかし、冬はこの手は使えなかったのでやはり参った。それに、娘がグズって準備が進まないと散歩の時間がなくなってしまうため、結局行きしぶられるパターンもよくあった。

第二に、お風呂しぶり。
お風呂が嫌いなわけではない、むしろ入ってしまえば喜んでいる。ただただ入るまでが長い。眠くなると機嫌が悪くなるし、寝るのが遅くなると翌朝なかなか起きないので、こちらはとにかく早く入ってほしいのだが、頑としてゆずらない。

本当にあの手この手を試した。新しいお風呂おもちゃを導入する、湯船でシュワシュワするバスボムを導入する、ばあばと入ろうと誘う(めちゃくちゃ嫌がる)、テレビを消して居間から誰もいなくなってわざと一人にする、しまじろうパペットで誘う、臭くなってお友達に嫌われちゃうよ!とか病気になっちゃうよ!と言ったりもした。

20分も30分も格闘して、最終的には「抱っこ〜」もしくは「おんぶ〜」でお風呂まで行くのだが、行ってからは脱がない。自分で脱ぐ!と言ってみたり、ママやって!と言ってみたり、やったらやったでキレられたり。
かといってママが先に入るとそれはそれで怒る。仕方ないので娘が脱ぐ気になるまで、脱衣所で正座しながら白目剥いて待ったことも数知れず。

やっと入ったら、今度は上がらない。永遠に遊んでいる。ママが先にあがって着替え終わってもまだ遊んでいる。上がったら上がったで、服を着ない。自分で着る!と言ってみたり、ママやって!と言ってみたり、やったらやったでキレられたりする。そう、脱ぐくだりと同じことをやっているのだ。
そんなわけで、お風呂に入るだけで1時間とか1時間半とかかかっていた。

これだけでももう気力が失せているのに、第三に、寝なかった。
これはイヤイヤ期が関係あるのかわからないが、3歳になる1ヵ月ぐらい前まで数ヶ月間続いた。
布団に行くのが早かろうが遅かろうが、昼に運動させて疲れさせようが、昼寝してようがしてまいが、とにかく、毎晩寝ない。正確には、寝付くまで毎日1時間かかっていた。
赤ちゃんの頃のようなガッツリの寝かしつけはいらないものの、添い寝してないと怒るので部屋は出られない。たまにトントンや抱っこを要求される。
子守唄を歌ったり、娘のお話を30分も40分もうんうんと聞いたり、なんならママのほうが先に寝落ちしてしまったりもよくあった。

ストレス度でいえば、保育園行きしぶりもお風呂しぶりももちろんキツかったが、毎日なにもできない時間を1時間とられるのが一番、本当〜につらかった。この1時間があればあれもこれもできるのにと毎日感じたし、自分の自由時間がどんどん削られるのもストレスだった。
寝てしまえば朝まで起きないし、寝顔は天使なのにと、何度一人でひそかに涙したことだろう。

ほかにも、ご飯は抱っこで食べさせなきゃ食べない、途中で遊び出す、日によって食べたり食べなかったりする、などもつらかった。
2歳になってもまだ抱っこで一口ずつスプーンで運んでやんなきゃなんないの?未だに離乳食と同じようなことやってんの??と時々虚しくなった。保育園や出先では余裕で一人で食べるくせに。
娘に食べさせていれば、自分はろくに食べられない。0歳児の頃、娘が昼寝してやっと自分の食事ができたり、娘が泣けば自分のご飯を中断して抱っこしに行ったり、娘が見ると欲しがるから隠れておやつを食べたりしたけど、一体いつになったら自分の食事をゆっくりとれるの?と絶望していた。

しかも食べさせるわりに、食べたり食べなかったりの差がすごく激しい。せっかく作ったものを残されるのは精神的につらかった。


娘作「町」

30代後半の今でこそ、私は若い頃よりは社交性はあるし、人前で普通に話すことができる。(もちろん、陽キャのようには到底振る舞えないが)
しかし、元々は本当に暗くて人見知りで、自分の感情を表に出せない人間だった。少なくとも20代後半まではそうだった。
だから、怒鳴ったりとか、誰かに対して感情をあらわにして怒ったりしたこともなかった。もちろん親に対してもだ。

そんな自分が。子どもができて、子どもに対してこんなに怒鳴るようになるなんて、想像もしていなかった。
家族や恋人や友達に対してなら、ぐっと飲み込んだりできたことが、子ども相手になると全然できなかった。産後のホルモンの変化とかあるんかな。

保育園になかなか行かないこと、お風呂になかなか入らないこと、布団に入ってもなかなか寝ないこと、出先でグズられること、そのたびにどれだけ怒鳴って、どれだけ泣いてきただろう。
それでいて「ママ、ママ」でベッタリなので、娘が起きている間は逃げ場もない。トイレにすらついてくる。

子どもができる前は、子どもにひどくキレる母親を信じられないと思って見ていた。でも、当事者になってみるとめちゃくちゃわかる。
言っても治るもんじゃないとわかっていても、どうにもならないとわかっていても、受けた理不尽を口に出してぶつけたくなる。いや、言わずにはいられないのだ。

イライラしたらとりあえず別の部屋に行き、渦巻く感情をどうにかやり過ごした。そして、自分ひとりの時間の中でストレスのはけ口を探し続けた。
それでもどうしても、いつだって笑顔で接する母親にはなれなかった。

別れた旦那、つまり娘にとってのパパと面会の日は、「あんたはいいよなぁ、どんなにグズられてもたった1日限りのことだもんね。たまにしか会えないから甘やかしまくって、だから当然娘にも好かれて。毎日私がどんだけ苦労してても関係ないもんね。帰ってから娘が泣いても、パパがさんざんおやつを与えたせいで夕ご飯全然食べなくても関係ないもんね」と心がやさぐれた。

娘のイヤイヤ期は、自己嫌悪の日々でもあった。
いいママになりたいけど、なれない。毎日毎日その繰り返し。

描き放題

3歳2ヵ月の今。

言えば着替えてくれるし、自分から片付けもするし、自分ひとりで座って食べるし、いつもごきげんで遊び喋り歌い、行こうと言えばすぐ保育園も行きお風呂も入り、布団に入れば15分か20分そこらで寝てくれる。一人遊びもすっかり上手になった。

めっっちゃくちゃにラクになった。
同時に、娘を「かわいい」と思う時間が圧倒的に増えた。

もともとかわいくなかったわけではないが、イヤイヤがひどすぎて見えなかったものが多かったのではないだろうか。
今は、それがくっきりと見えている気がする。

毎日、まるで新鮮なものを見るように「かわいいなぁ」と感じる。
そしておそらく、以前よりも、娘といるときの私も笑っている。

過ぎ去ってみれば、あれこそまさしくイヤイヤ期であったのだ。
イヤイヤ期を乗り越えたのは娘かもしれないが、私にとっても「乗り越えた感」がすごい。

どんなに恐れても、避けては通れなかった道。
そこを1年かかってやっとこ通り抜けて、暗いトンネルが終わったみたいに、憑き物がとれたみたいに、私が怒ることもなくなった。
……いや、なくはないが、30分の1くらいには減った。

すごくよく言えば、娘と一緒に、自分も成長しているのかもしれない。
娘が3歳、つまりママとしても3年生。
子育て3年目、まだまだ新米である。

これからも娘の成長過程でいろんな悩みが出るんだろうけど、願わくば、このようなイヤイヤ期はもう勘弁願いたいものだ。



*3歳娘との日々を綴っています。


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