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ファン同士で友達になるのって難しい?

≪前回の記事はこちら≫


椿のファンになって初めてのお茶会はあっという間に終わった。
前の贔屓のときには知らなかったことを、ヅカ友を通じて知れたことが唯一の収穫だ。
椿の様子に関しては正直あまり覚えていない。


お茶会というのは後日ファンクラブ内でDVDが発売される。実際はそれを買えば十分振り返ることができるのでそんなに心配することはない。

当日遠くにしか見えなかった贔屓が超至近距離で撮影されている。少し高めのお値段設定だけれども、行けなかった人にとってはお値段以上の価値があるものだ。


ヅカ友の澪と璃子とはそのあとお茶をするため外に出たが、もう深夜に近い宝塚はどこも既に閉まっている。
「コンビニでなにか買っていこう」と澪と璃子が提案し、2人が泊まる部屋で酒盛りが始まった。
私は尼崎まで帰らなければならないので早々に退散したが、2人は深夜まで相当盛り上がっていたらしい。




翌日は朝の入待ちから始まった。
私は尼崎のホテルからどのくらいで到着するのか感覚がわからなかったので、相当早くから出発してしまった。

宝塚駅に電車が到着して時計を見ると、集合開始の時間までまだ一時間以上ある。
とりあえず花の道に行ってみよう。なんとかなるはず。

こんなに朝早くに花の道に来たのは初めてだった。
まだファンらしき人の往来はまったくない。
ただ花の道入口にあるロッテリアだけはウェルカムといわんばかりに開いていた。

(よかった)

どこも空いていなかったらどうしようかと思っていたが、ここで時間をつぶそう。私はホットコーヒーを頼んで席に座った。



集合開始時間の少し前に店を出た。
楽屋口まで行くともうすでに入待ちのスタンバイ組がいる。

早い、宝塚のファンってほんと早い。
私はのんびりロッテリアで時間をつぶしていたことをちょっと後悔した。


するとすぐ澪と璃子がやってきた。

「今日は真美ちゃんと佳代さんもいるよ」

澪がそう言うと、お友達の2人を紹介してくれた。


真美ちゃんと佳代さんは少し年齢が離れた2人だった。
椿のファンクラブに入ってそれぞれ違う時期にお友達になったらしい。
聞くと2人ともファン歴はそこそこ長かった。私よりかなり先輩だ。


「あ、よろしくお願いします」というと
「こちらこそー!」と明るく答えてくれた。

やはり関西組はみんな打ち解けるのが早い。私はなんとなく関西組のことが好きになってきている。いい意味でアットホーム、居心地が良かった。


みんな揃ったところで入り待ちの列に並んだ。
女性が5人も揃うとみごとににぎやかだ。各々が話したいことを話すので、左右で違う話をしていることなんかザラだ。いつもなら長く感じる待ち時間もあっという間に過ぎていった。



それにしてもヅカ友というのは不思議だ。
大人になると友達なんて簡単に作ることが難しいものだ。
たとえば職場の同僚などは、いくら同年代であっても友達とは到底言い難い。
何らかの場で知り合ったとしても、うわべだけの付き合いになることは当たり前。LINEを交換しても最初の挨拶でそれっきり。また会おうね、の”また”が来ることはない。

ただヅカ友は違う。まるで同じ釜の飯を食った友のように距離感が近い。
たとえお互いの年齢が自分と離れていようと、共通の贔屓を好きになった仲間として受け入れることができる。
これが「タカラヅカのファン」や「組ファン」ではそこまでの気持ちになれない。

タカラヅカというマイナーな世界で、沢山のジェンヌさんからたった一人の同じ贔屓を見つけて好きになる。そのマイナーさとコアなファンとして活動する熱心さ。そこに共感して友情の熱を感じ合うのだ。


公演が始まると毎週のように顔を合わせることになるのも大きな理由だ。
否が応でも「また」が来る。
また会おうね、の”また”は贔屓を応援している限りやってくるのだ。
何度も顔を合わせているとそのうち贔屓に会いに行く楽しみと友達に会う楽しみが同時にやってくるようになる。
ここまで仲良くなれるヅカ友ができたらファン生活はとっても充実したものになるだろう。


ただ、この友情が作用するには2つの絶対的法則がある。
女性の友情を侮ってはいけない。何かを誤ると途端にその関係性は崩れていくのだ。

その2つの絶対的法則とは


1.お互いがその会の中で同じくらいの位置にいること

2.もしくは、自分のほうが相手より少しでも優位にいること


この2つがあるかぎり、その友情は保たれることになる。
つまり逆を返せば、自分の立場が下になったと思った時点でその仲は終了する可能性が高い。

この法則を超えて、ずっと友情を築いていける関係になれるのはごくわずかだ。お互いがどんな位置であろうとも友達であるのならば真の友情を築けたことになる。
この関係性になれるのはごくわずかだったとしても決して0ではない。もしこんな友達ができたら一生大事にするべきだろう。


私自身、まだこのことに気づいていなかった。
この時点では。


なぜなら新参者の私は、この時点でみんなの中で一番の下位ランク。みんな新参者の私には何でも教えてくれた。
私はぬるま湯のようなこの環境でしばらくの間楽しむこととなる。










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