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読書録:「2030年アパレルの未来」

書評ではなく、読んで得た知識を身につける、広げる、ことが目的なので、book summary にしてみました。

というところで、本の概要からおさらいしていたのですが、そんな中で以下の記事に出会ったので、リンクしておきます。

是非「愚直に実践したい」ので、今回も少しこれを意識してまとめていきます。ちなみに、これを読んだ私なりのbriefingも合わせて紹介しておきます。

読書の目的は、情報の取得でもなければ、知識の取得でもない。

読書の目的は、「思考を巡らすこと」です。そのために持つべき視点が5つ紹介されている - ①視野の広さ②視座の高さ③視点の角度④時の流れ⑤思考のプロセス

これを見るとひとつ思い浮かぶのが物理。宇宙原則。結局のところこの世は3次元だから、3次元以上の事象(正式にはプラス時の概念)が理解できていればそれはMECEであると言えるということだと思う。

まあ、3次元かどうかもそもそも議論の余地があるのだけれど…専門外なので割愛ということで(笑)

話を戻すと、視野の広さ(①)が横軸、高さ(②)が縦軸、視点(③)が軸上のプロット、プラス時間(④、⑤)というふうに私はまとめてみました。


さて、話が少し飛びましたが、本題に戻りたいと思います。Book summaryという意味では、こんな流れで今回はまとめたいなと思います:

・Overview
・New
・Findings
・Additional research

Book summaryっていう文言だとOverviewまでしか含めていないので、タイトルは要検討と今気づきましたが。

※書き始めると長くなりすぎてしまったため、今回はOverviewのみにしました笑
やはり、他のところに書いて推敲してから書かないととんでもなくまとまりの無い文章になってしまう。


Overview

大きく以下3つの構造になっています。

①As-Is:現状分析
②To-Be:将来像(※あるべき姿というよりも、不可避な将来像という感じ)
③今すべきこと

①現状分析

1-1 概要

早い話、PESTと3Cでまとめたいと思います。

Politics, Environment, Societyの視点で以下の点が挙げられます:
・国内人口減少及び少子高齢化
・家計圧迫に伴う支出減少
・南海トラフや首都直下型地震、大雨洪水などの自然災害発生が見込まれる
・インバウンド特需

家計圧迫に伴う支出減少の背景には、消費税増税、団塊世代の後期これ以下によて社会保障費が増加し、増税・年金受給開始年齢引き上げへというものがある。

また、Technologyの観点では以下が触れられており、アパレル産業に重大な影響を与える要因として、大きく取り上げられています。後ほどより具体的にご紹介します。

・デジタル化
・AIの活用

次に3Cの視点で以下の点が指摘されていました。

Customer:グローバルで見るとアパレル産業者成長産業であり、アメリカと中国が世界で最大のマーケット。人口の増加や新興国における中間層の拡大、グローバルSPAによるファションの浸透や富裕層の拡大が背景。

アメリカでは富裕層の拡大が市場を牽引。HENRY層、ミレニアル世代の存在。
中国では富裕層の拡大に加え、中間層の所得増加も成長のドライバーになっている。「高くてもいいものを買って長く使う」という消費トレンド。

日本のCustomerについて。アパレル市場を価格帯別に3つに分けると、「ラグジュアリー市場/トレンド市場/マスボリューム市場」に分けられ、日本は海外と比較して、トレンド市場が非常に大きいという特徴がある。その背景には、「フォロアー層」と呼ばれる、自らの価値観が希薄でトレンドに流されやすい中間層の存在がある。ところが、このフォロアー層が今、さまざまなグループに分かれ始めているという。というのも、海外ですでに存在している普遍的な消費者セグメントが、日本国内にも出現してきているからだ。(※消費者のグローバル化)

Competitor:Amazonの台頭、自動車産業では同じ環境下でも不況と叫ばれていない=グローバル化を成功させている

Company:(今回は産業に関する本のため、こちらの該当は無し。)

ではここから、本書で大きく取り上げられているデジタル化及びAIのまとめに行きたいと思います。

1−2 AIとファッション

本書で大きく取り上げられているAIの事例、考察は他の機会にまとめることにする。

②To-Be 不可避な将来像

まず初めに述べられているのが、オンラインとオフラインを融合したビジネスモデルになるということである。EC化率は2030年まで上昇を続け、ネットとリアルは完全に融合し、対立概念ではなくなる。その2030年までに起こるであろう1番大きな変化が「業態軸が意味をなさなくなり、新しい価値軸が重要になる」ことだ。

新しい価値軸とは?
①利便性追求
②ロングテール対応
③プライスリーダー
④カテゴリーキラー
⑤ライフスタイル提案
⑥エンターテイナー
⑦ローカル対応

なぜ業態軸が意味をなさなくなるのか。例えば今やコンビニは、ドラッグストアやディスカウントストア等、様々な業態と競合している。これからの時代、リテールを区分するのに意味のある軸は何か。それが「消費者に提供する価値」による区分である。その背景としては消費者の価値観の多様化、テクノロジーの進化、プラットフォーマーの強大化の3つが挙げられている。

さらに2030年の消費社会としては以下3つのキーワードが挙げられている。
ーパーソナライズ、サブスク型サービス、モノの消費量の減少
なお、2030年には、Z世代とミレニアル世代を足した割合が、生産人口の65%となる。

また、日本のデジタル化は2025年から加速化するという。
理由は2つーインフラが完成しきっていること、そして、デジタルを得意としない人口が多いことである。
既存の社会インフラの完成度が高いが故に、デジタルに移行せずとも不便が少なく、デジタル化を促進するインセンティブが働かない。
ただし、2025年を過ぎた辺りから、デジタルネイティブのミレニアル世代以下が生産人口のマジョリティとなる。また、日本固有の問題である高齢化と人手不足が重なり、一気にデジタル化を推し進めることになるだろう、ということだ。

③今すべきアクション

3−1:今後の市場
3−2:日本アパレル企業の勝機

3-1:今後の市場

最後に、結局何をすべきなのかということに話が及ぶ。そしてここで、アパレル市場を「トレンド」「ラグジュアリー」「マスボリューム」の3つに分けた考察が始まる。この3つの区分によって、顧客・プレーヤー・デジタル化の影響が、それぞれ異なるからだ。


トレンド市場:「縮小と二極化」ー グローバルと比較して「中間価格帯市場」=「トレンド市場」が大きかった日本も、トレンドの小粒化と短サイクル化が進むことで、「ラグジュアリー市場」と「マスボリューム市場」に二極化する。そしてこれら二極化した市場では当然、既にグローバル企業の存在感が増していることになる。

ラグジュアリー市場:「投資家からの熱視線」ー 単独ブランドの成長に限界が見えてきていること、浮き沈みが激しいブランド経営において、ポートフォリオ経営が手法として定着してきていること、世界的なカネの余りの中、投資ファンドの投資先がブランドに向いていること。これらの要因によって、ラグジュアリーブランドの買収とグループ化が進む。

マス市場:「グローバルSPAの躍進」ー 多くの企業にとって、グローバルSPAによる圧倒的コストパフォーマンスへの太刀打ちが難しいこと、デジタル化についていけない企業が続出すること。この2つの理由によって、マス市場ではグローバルSPAが躍進する。 

トレンド市場の活路としては、参入障壁の高さがキーワードとして挙げられている。中価格帯市場において、ニッチなブランドやショップにとってはチャンスが多くなっているということだ。

参入障壁の低さ
資金面:クラウドファンディング
販売・マーケティング:EC、SNS
生産面:デジタルサプライチェーン

つまり、トレンド市場では、才能あるデザイナーやディレクターのビジネスを支えるプラットフォーマーがますます必要とされる。

次に、国内アパレル企業が抱える構造的課題により、2030年のアパレル企業は半減することが述べられる。構造的課題とは、製造/販売の分断が起こっていることである。日本の生地は世界で高く評価されていることは、輸出額が物語っている。一方で、衣料品の輸出額が圧倒的に低い。大きな国内市場に甘えてガラパゴス化した結果、世界で評価されている高品質な産地や工場を持ちながら、それを付加価値の高い最終製品やブランドに変えられる企業やデザイナーがあまりにも少ないという現状になっている。

3−2:日本アパレル企業の勝機

これまでの現状を踏まえ、必要な施策は、
・縮小する国内市場ではなく、成長する海外市場に目を向けること
・海外で売れる純国産ブランドを育てること
と纏められている。このために目指すべきは、先ず、ラグジュアリー領域で戦えるブランドを増やすことである。

ラグジュアリーブランドは、「プレミアム」「アクセシブル」に分けられる中で、プレミアムラグジュアリーは日本にとってハードルが高いという。なぜなら、①経営層とクリエイティブの役割分担が曖昧②ブランドストーリーが弱いという2つのボトルネックが存在するからだ。
②に関して、そもそも日本古来のアパレルは和服であり、日本で欧米を真似たラグジュアリーを発してもストーリー性では勝機がないという点は、興味深い。

つまり、アクセシブルラグジュアリー=デザイナーズブランドを土俵とするのが現実的である。

そのための鍵が3つ紹介されている。
個人的には、ここが1番面白かった。(みんなそうかもしれない)
①日本らしさの付与
 単純なジャポニズムではなく、「ストリート(裏原文化)」「テクノロジー(ソニー・トヨタやエヴァンゲリオン・ドラえもんのイメージ)」「ジャパンブルー(貴重な天然素材による藍染)」「ジャパニーズ・ミニマル(ZEN・侘び寂び)」「アルチザン(職人気質)」といったキーワードが紹介されている。
②独自性の追求
 「パーソナルラグジュアリー」の考え方が提唱されている。個人の感性、価値観に深く響く個人の喜びに立脚したラグジュアリー消費を促すブランドのことだそうだ。
③ビジネス基盤の確立
 1・2を備えることは、才能あるデザイナーであれば時として無意識のうちに満たしていることがあるが、それだけでは成功できない、グローバルで勝っていけない要素として、このビジネス基盤の確立が挙げられている。

マスボリューム市場の可能性についても触れられている。ECとAIの発展により、国内の生産背景を利用してもなお、マスボリューム市場の価格帯にペイする仕組みを整えられる可能性が述べられている。ここでの成功の鍵は、デジタル・ファストファッションである。ただ、日本のアパレル企業がテクノロジーに疎く、業界内に良質なエンジニアが不足しているという課題が挙げられている。この解決及びデジタル・ファストファッションの実現のためには、エンジニアリソースを内製化し社内にノウハウを貯めていくことが必要だという。

最後に共通課題として挙げられているのが、「独自性の追求」である。日本人が苦手としがちな「独自性」をどこで作るのかということである。これは面白いと思った。アパレル、ファッションは一定独自性が求められる業界であるはずだ。つまり日本は前提としてアパレル業界、ファッション業界に対してディスアドバンテージがあるということなのか。しかし日本にも勝機はあり、実際に世界で認められている日本のブランドも多数あるので、一概に弱いとは言えないだろう。

また本書では川上・川下産業の勝機についても述べられているが、ここはぜひ深掘りしていきたいところなので、今回は割愛する...(書きすぎてしまった...しかも長すぎる...)

では特に2030年に向けて厳しいことが予想されるトレンド市場からマス市場の中堅アパレル企業は何をすればいいのか?に対する解も述べられている。そしてそれは、先ず人事制度を変え、デザイナーと販売員の処遇を改善することから始めるという。
本来デザイナー、特にクリエイティブディレクターは、結果責任は負うが、その分報酬も大きいプロフェッショナル職であるべきであるということ。これは、クリエイティブと経営の役割分担の論点にも含まれる点であろう。そして個性のないブランドの売り上げを支えている販売員に対してより報いるべきだということ。これらによって、大きな課題である人手不足をまず解消する必要があることが指摘されている。

そしてやはり、これまで述べられたアクションを実行していくこと、今後さらにグローバルに通用するデザイナーやブランドを生み出すために必要な改革として、①ファッション教育の強化と、②ビジネススキル教育の強化の変革が必要だという。まず①に関しては、国立大学におけるファッション教育の強化重要だという。国の最高峰である芸術大学にファッション専攻がないことは、その国におけるファッションの位置付けに関わってくるということが指摘されているのだ。②に関しては、グローバルで通用するかという観点を考えるとき、日本人に立ち塞がるプレゼン力の不足が指摘されている。展示会におけるバイヤーとの交渉、コレクションにおけるメディア発信力、ファッションコミュニティ内での振る舞いなどでの売り込む力である。

最後に、東京の魅力と可能性について話が及ぶ。これは確かにそうなのだ。東京は魅力的であり、常に観光客を惹きつける。洗練された街並みとインフラ、そして深く根付いた文化もある。これはファッションの発展の基盤、そして活性剤になるものである。つまりチャンスはある。合わせて、自然の豊かさや文化産業を支えるインフラも揃っている。これが揃う国はそうあるものではなく、文化・インフラは間違いなくアジアをリードしているという事実がある。これら、文化的コンテンツと技術力の高い生産背景を活かすも殺すも、今後10年が勝負になるのだという。

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